「しんじゅQualityみつばちプロジェクト」×「伊勢丹新宿店」 <MIEL ISETAN SHINJUKU>レポート第2回
新宿の伊勢丹ビル屋上でミツバチを育てる取り組みをレポートする第二回。
前回は、伊勢丹新宿店と新宿区障害者福祉事業所等ネットワーク「しんじゅQuality」によるプロジェクト「都市養蜂」について、プロジェクトが生まれたきっかけや、ミツバチの生態、養蜂など基本を学びました。今回は、伊勢丹のビル屋上へお引越しするためのセイヨウミツバチたちをお迎えに、茨城県へ。巣箱の詳しい構造から、都会へやってきたミツバチたちの様子まで、リポートします!
茨城県東茨城郡にある「滝下養蜂園」の養蜂場。これらの巣箱から5箱が新宿へお引越し。
早朝7時、伊勢丹新宿店と新宿区障害者福祉事業所等ネットワークの「しんじゅQuality」を推進するメンバーとともに、新宿を出発して約2時間。茨城県に到着後は、養蜂用防護服に身を包みます。ハチは黒いものに寄ってくる習性があるため、洋服はできるだけ白や明るいカラーのものを着用。また、ニットなど目の粗い素材の服を着ていると蜂が足を引っ掛けて興奮してしまうため、厚手のナイロンやウィンドブレーカーなどツルッとした素材が好ましいとのこと。アルコールが入った香りなどにも反応してしまうため、香水はもちろん、虫除けも厳禁です!準備を万端にして、いざ茨城県へ出発。
養蜂場へ向かうと、ズラリと並ぶ60箱ほどの巣箱とともに、ミツバチを分けてくださる北海道余市郡仁木町「滝下養蜂園」の瀧下洋介さんの姿が。瀧下さんは、寒さの厳しい北海道から越冬のため、この時期は500〜600箱のミツバチを茨城県や静岡県など関東付近へ運んで育てているそう。このうち新宿の伊勢丹ビル屋上で育てる5箱を分けてくださった、いわば“育ての親”です。
巣箱をそっと開けて、なかの構造を説明してくださる「滝下養蜂園」の瀧下洋介さん。
巣箱のなかには、5、6枚の「巣礎(すそ)」と呼ばれる板が並び、表と裏に蜂がびっしり! 瀧下さんによると、巣箱の巣礎の表裏には約2000匹、一箱にざっと1万匹くらいが生息しているといいます。
「採蜜にはおよそ4~5万匹は必要とされていますが、健康な女王蜂であれば3月頃から毎日約2000匹ずつ産卵するため、順調にいけば5月には一回めの採蜜が行えます」
前回お話ししたように、巣箱が手狭になると分峰が起こりやすくなるため、小まめに内検し、巣箱のなかのミツバチたちが増えるごとに巣礎を一枚ずつ増やして、箱の中がいっぱいになったら上に箱を2段、3段と重ねていき、「継箱」を行います。目標の4~5万匹になる手前で、女王蜂サイズだけが上へ通れないよう網目の細かい「隔王板」を継箱との間に差し込んで仕切ることで、上の箱に蜜が貯まっていくという仕組みなのだそう。
巣箱は巣礎が9枚入るタイプ。一番端は餌を入れるため、実質8枚の巣礎に蜂がたまったら、継箱をしていく。
「滝下養蜂園」瀧下さんに、養蜂のノウハウをお伺いする、今回のプロジェクトのメンバー。
ミツバチのお出迎えに向かったのは、伊勢丹新宿店のメンバーと、「公益財団法人 新宿区勤労者・仕事支援センター」の伊藤局長や田村 栄さん、この企画の発起人であり「社会福祉法人東京ムツミ会ファロ」管理者である徳堂泰作さんや、養蜂アドバイザーの中里仲司さん、「社会福祉法人 新宿区障害者福祉協会」専務理事の今井康之さんなど総勢約15名。
瀧下さんから養蜂のポイントなどを伺ったところで、2台のバンに巣箱を乗せて、いざ新宿へ。
ここで、ミツバチたちを安心・安全にお引越しさせるため、注意するのが、車中の温度。ミツバチたちは熱で弱ってしまうため、外気温が低くとも、車中はクーラーや窓を開けるなどして風通しを良くします。人間にとっては寒いくらいですが、ミツバチの生態を聞いてすっかりその健気さに魅了されていた私たちは、「ミツバチのためなら」と風も寒さもなんのその。
無事、新宿の伊勢丹ビルに到着しました。
大都会・新宿の伊勢丹ビルの8階・屋上に、5箱の巣箱が設置されました。
ビル屋上まで運び、初めて巣箱を開けると、少し興奮した様子のミツバチたちがクルクルと飛び回ります。その元気な様子にお引越しメンバーはひと安心。
行動範囲が周囲2〜3kmと言われるミツバチたちにとって、季節ごとにさまざまな花を咲かせる新宿御苑や花園神社とも近い伊勢丹ビルは、きっと居心地のいい住まいとなるはずです。
5月の採蜜まであと少し。次回のレポートもお楽しみに!
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写真 福田喜一
取材・文 藤井存希(FOODIE編集部)