2021.9.3 UP
日本各地の特産品開発が盛んです。地鶏に銘柄豚に伝統野菜など様々な地域の特産品がありますが、レモングラスは明らかにユニークな特産品ではないでしょうか。武雄市のレモングラスは、開発当初、市庁舎内にレモングラス課があることで話題になりました。市に当初の話を伺ったところ、発案者は市長の樋渡啓介氏であり「武雄市は、2006年の1市2町の合併で誕生。新たな市の特産品作りが課題でしたが、なかなか良い案がでませんでした。そんな時に東京で飲んだレモングラスティーが美味しかったのでレモングラスはどうか?」と市長自ら提案されたそうなのです。中山間地の多い武雄市の農地では、田畑の猪による獣害が深刻で、耕作放棄地も増えていました。猪はレモングラスの香りを嫌うという情報も助けとなり、武雄市はレモングラス栽培に向けて邁進しました。
栽培開始から2年後、自然豊かな環境で栽培される有機栽培のレモングラスが、伊勢丹新宿店のバイヤーの目に止まります。伊勢丹新宿店の紅茶専門店〈ナヴァラサ〉の協力も得て、2011年に初の武雄レモングラスフェアが伊勢丹新宿店で行われることになりました。
フェアの開始当初から、レモングラスそのもののプレゼンテーションも話題に。多くの人が足をとめ、レモングラス談義が花開きました。
誕生のきっかけとなったとなったレモングラスティーは、〈ナヴァラサ〉のオリジナルティーとして開発され、収穫したレモングラスそのものも店頭にやってきました。原形のレモングラスを見る機会はなかなかないと思いますが、稲のように長くスレンダーな葉のレモングラスは、店頭で大きなインパクトを発揮。武雄市長のユニークな口上「猪の嫌いなレモングラスはいかがですか?」「棚田で作ったお米が美味しいなら、棚田で作ったレモングラスはもっと美味しいです!」もローカルな風を新宿に運び、名物フェアとなっていきました。
レモングラスの収穫の様子。背丈の高いレモングラスの収穫は、非常に大変な仕事です。
レモングラスの特色は、まずは爽やかなレモンのような香り。この香りには、心身をリラックスさせてくれる働きがあると言われています。そして、料理にもこの香りは欠かせません。タイ料理のトムヤムクンの香りと聞いて、あの!と思う方も多いでしょうが、エスニック料理には欠かせない香りです。また、料理だけではなく、アロマオイルや化粧品としても活用されています。
〈武雄レモングラス〉を伊勢丹新宿店とともに広めてきた〈ナヴァラサ〉も、このレモングラスの魅力の虜になった一員。「色、香りともにとても印象的でした。お湯を注いだ瞬間に柑橘系の爽やかな香りがふわっと広がり、飲んだ後もしばらく香りの余韻が続き、心地よいのです。これが気分をリラックスさせ、心身のリフレッシュに繋がるのだと思います。黄色の色味も透明感があり大変美しい」と語ります。
最初はストレートで。アレンジとしては、蜂蜜を加える。また甘みをつけてアイスティーにした後に、レモンを絞るのも〈ナヴァラサ〉のおすすめです。
武雄市では、レモングラスの品質を保ちながら地元農家の協力も得て生産量を増やし、年間を通じて供給できることが当面の目標です。レモングラスの茎や葉を料理に使えることも、もっと知ってほしいことの一つです。2019年の「武雄フレッシュレモングラスフェア」では、〈朝岡スパイス〉とのコラボレーションで五香ブーケ(スパイス)と〈武雄レモングラス〉のしゃぶしゃぶを提案しました。今年は、9月8日から始まるオンリーMIの企画商品として、〈武雄レモングラス〉新宿産蜂蜜 〈MIEL ISETAN SHINJUKU〉のボトルドリンクも誕生。今後も組み合わせにより、レモングラスの新たな発見がありそうです。はるばる武雄市の山間から確実に固定ファンを増やしていったこと、そして、元を辿れば武雄市長がレモングラスの香りを覚えていたことが特産品のきっかけとなったことも考えれば、やはりレモングラスの香りには、人の心を捉え、記憶に残る特別な何かがあるのではと思ってしまいます。この香りが、多くの人々の癒しや活力となりますよう、今年もレモングラスフェアでお待ちしております。
〈ナヴァラサ〉の武雄レモングラス(ドライ)はこちら↓
Text: FOOD INDEX 編集部