2021.10.18 UP
生産者:越後ファーム株式会社
産地:新潟県東蒲原郡阿賀町
栽培品種:こしひかり・新之助・いのちの壱・ミルキークイーン
越後ファーム株式会社は、伊勢丹新宿店のお米ショップ〈お米場 田心〉を運営しており、、米の生産者(※農業生産法人)でもあります。
新潟県だと魚沼地区が全国的に有名な地域ですが、越後ファームの田んぼがある「奥阿賀」も魚沼地区に負けない美味しいお米が生産される地域です。山間地特有の寒暖差を活かし、生活排水が一切はいらない清水を使用し、農薬・化学肥料を基準の半分以下に抑え、収穫量よりも質にこだわり、手間隙かけて丁寧に生産したお米は甘みが口の中に広がる後引く美味しさです。自分達で栽培し、自分達で出荷をし、目の届く範囲のお米をお届けします。
越後ファームの田んぼ。山間部の田んぼならではの風景
越後ファームが生産したお米は商品名「雪蔵今摺米」で展開をしています。雪蔵今摺米はベーシックな「コシヒカリ」から、食感や甘さの異なる3品種、粘りが強くてもっちりした食感の「ミルキークイーン」、粒がしっかりとして食べごたえのある「新之助」、コシヒカリの約1.5倍の粒の大きさがある「いのちの壱」を揃えています。その時々によって品種を変えて雪蔵今摺米を食べ比べたり、詰め合わせにしてギフトとしての利用をしていただいたりも可能です。
また、奥阿賀地区は人口1万人、人口の半分が65歳以上の高齢者、農業従事者の平均年齢が70歳です。平野部が少ないので効率的な作業が難しく、手間暇をかけて栽培しなければならない為、後継者不足が深刻です。奥阿賀地区の米作りが衰退しないように、越後ファームは地元のベテラン生産者に教えてもらいながら若手農業従事者の育成をし、次世代に美味しいお米を繋げていきます。
地元生産者に指導を受けながら米作りをしています。
生産者:上和田有機米生産組合
産地:山形県高畠町和田地区
栽培品種:有機栽培 つや姫
『つや姫』は山形県が10年の歳月をかけて開発した品種です。近年問題となっている温暖化現象に早くから対応し、高温耐性が高く食味のよいのが特長。1986年に有機米生産組合を作って『つや姫』の栽培を決意したのが上和田有機米生産組合です。県の取り組みとして『県認定生産者』のみが栽培できるというのも、我々ののモチベーションを上げました。
上和田有機米生産組合の皆さん
私たちは、山形県内でも有機農業で有名な里高畠町の東南部、和田地区でお米づくりをしています。田んぼには、奥羽山脈の清流が注ぎ込みます。有機栽培の米作りで重要なのが、土作りです。土に欠かせないミネラルは土壌分析に基づいて、天然鉱物のミネラル肥料や卵の殻由来のカルシウム肥料などを施肥しますが、動物性の肥料は一切使いません。元来の土地に合わせた圃場作りを心がけています。
農薬に頼らないため、稲の周囲に生える雑草類の抑制は大変な作業です。
手作業による除草作業の様子
稲の必要な栄養成分を周囲の植物が吸い取ってしまうため、取り除く作業が重要なのですが、人力以外では除草ができないので、大変手間がかかります。しかし、このひと手間ひと手間が味を大きく左右します。土も、人も、稲にも優しい安全な方法で、毎日、毎日、愛情込めるのが一番重要です。
葉を計測し、稲穂の栄養状態を管理している。
生産者:魚沼ゆうき
産地:新潟県十日町
栽培品種:(天日干し)有機栽培 こしひかり
我々が子供の頃には、まだ『こしひかり』は誕生していませんでした。はじめて『こしひかり』を食べたときの感動は、今でも忘れられません。その感動を毎年味わいたい、そしてお客様にも美味しいを感じてほしい。その思いから『こしひかり』を作り続けています。
魚沼ゆうきを率いる代表の山岸勝さん
米作りは、種にするお米「種籾(たねもみ)」を採取することからスタートします。現在種籾づくりは専業化しており、種籾農家から購入して米作りをするのが一般的ですが、私達は自家採種にこだわり、秋の稲刈りの際に、できの良い種籾を毎年採取しています。
肥料も自家製で自分たちの田んぼに合うものを作り上げています。近隣の蕎麦屋などから余った食品を譲り受け、発酵させて完熟堆肥にします。また、使用する肥料は必要最小限量を心がけています。肥料のやりすぎも環境負荷の要因となるからです。
そして、植えるときに大切にしていることが稲穂の株と株の間を十分に空けることです。
そうすると稲1本1本がのびのび育ち、光合成しやすく粒一つ一つに栄養が行きわたります。過保護に育てず、自立を促すことで立派に育っていくと考えています。
収穫したお米は、天日干しします。またの名を「はさかけ」「ハザ掛け」「稲架かけ」などといって、「ハサ」と呼ばれる棚に稲わらごとかけて、天日で乾燥させます。現在は8時間程度で完了する機械乾燥が主流です。天日乾燥の場合、天候に左右され、おおよそ二週間程度の時間がかかります。ゆっくりと時間をかけて適正な水分量になることで旨味が凝縮し、割れにくいお米になります。干している間に稲わらの養分が米粒に移動するので、甘味や旨味も強くなると言われています。これが、私たちが天日干しを大切にする理由です。
ハザ掛けして天日干し中のお米。太陽の光と自然の風でゆっくり乾燥させる。
以上、三生産者のお米作りの話をお届けしました。新米のフレッシュで独特な甘味や芳香性を楽しめる期間は、ごくわずかの間とも言われます。そして、ここからが〈お米場 田心〉の保管・精米の出番です。
お米の収穫は、基本的には年に一度です。鮮度重視の日本では、一般的に新米が味わいのトップで、そこから徐々に食味が落ちていくと考えられています。〈お米場 田心〉でも、夏ごろになるとお米が美味しくなくなる、という声をお客様から頂いていました。
この課題をお米の保管方法を変えることで解決しようとしたのが、天然の「雪蔵」での雪冷熱を生かした保管方法です。
新潟の天然の雪を雪蔵に貯蔵します。
約600tの雪が貯蔵されています。
雪蔵今摺米は、玄米の前段階の籾の状態で保管します。その他全国のお米は玄米で保管します。お米を休眠状態にして、劣化や酸化が進まない環境が雪蔵なのです。そして〈お米場 田心〉の量り売り商品は、玄米の状態で出荷をし、店頭では、お客様の要望に合わせた分搗き米や白米の精米を行います。こうして、お米の劣化を極力防ぐことができます。
上から籾の状態、玄米、精米
越後ファームの創業者である近正 宏光さんは、「数年の実験を繰り返し、現在の方法にたどり着きました。保管に自信がついた今、ますます美味しいお米作りのことをだけを考えられるようになった」と語ります。この雪蔵での保管は、今回ご紹介した山形県の『つや姫』や新潟『有機栽培こしひかり』をはじめ、〈お米場 田心〉のお米全てに行われています。新米シーズン終了後も、自信を持って鮮度を維持したお米をお届けできるのです。
Text : ISETAN FOOD INDEX 編集部
[お米場 田心より]
弊社は創業当初から、生産者として美味しさの追求、雪蔵保管などを用いて通年通し変わらぬ美味しいお米のご提供を行っております。
全国各地の生産者が『田んぼに心を込めて』作り上げたお米を取り揃え特徴やストーリーを聞いて・見て・楽しめる『生産者とお客様を繋げる場』をご提供します。お米の新たな価値創造をし、これからの農産業と子供たちに美味しいお米を繋げていきます。