「今日はお肉をやめる」という選択肢をもつ~〈メゾン・ランドゥメンヌ〉代表・石川芳美さんに聞いた フランスの最新ヴィーガン事情

2021.1.2 UP

「ベジタリアン」、「ヴィーガン」、菜食主義でも時々肉や魚も食べる柔軟な「フレキシタリアン」…。世界にはさまざまな食の選択肢が広がっているなか、フランスでは若年層や都市部のパリを中心に、ここ5年で大きく意識が変わってきているそうです。系列店を含めフランスに21店舗、日本に4店舗を構える〈メゾン・ランドゥメンヌ〉代表・石川芳美さんに、パリの最新ヴィーガン・オーガニック事情について伺いました。

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「パリ中心部のレストランで、お肉やお魚を頼む場合は、少し肩身の狭い思いをするほど」。

こう語る石川さんは、「私の周りには食に携わる人が多いということもありますが」と付け足すも、日本人の意識とは圧倒的な差があることを感じているといいます。

 

「お肉を食べることに抵抗を感じる人たちは年々増えてきていて、ヴィーガンやベジタリアンまではなれないけれど、『今日はお肉を食べるのをやめよう』という選択をする“フレキシタリアン”が多くなっています」

 

実際に、フランスの生活環境に関する調査研究を行う「CREDOC」による2021年3月の『ベジタリアン・ヴィーガン市場に関する調査(英国、フランス、ドイツ)』によれば、フランス人の50%が、肉の消費量を減らした、と回答したという、フレキシタリアン増加を表す結果も。

参考資料はこちら

 

「CO2排出量、ひいては地球温暖化について、ヨーロッパでは政府主導で取り組む国が多く、フランスではヴィーガンを推奨する団体や環境保護を目的とした組織がたくさんあります。私たちも企業として研修を受けたり、子どもたちも学校で、持続可能な社会を作るために今どうしていくべきか話しあったりするなど、問題提起される場所が日本に比べて圧倒的に多いからでしょうか。もちろん、フランス国内でも都市部に集中して意識の高い人が増えてきているという感覚なので、地方はまだまだな部分もありますが、特に『自分たちの未来に関わってくる問題』と捉えている子どもたちは多いですね。若い世代の意識が高まっているのは事実です」

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実業家でありパン職人の石川芳美さん。同じく実業家兼パティシエでもある夫のロドルフ・ランドゥメンヌ氏とともに、2007年パリで〈メゾン・ランドゥメンヌ〉をスタート。現在はパリを中心に、100%植物性由来の素材のみで作るパンとパティスリーのお店〈ランド・アンド・モンキーズ〉も展開。動物性脂肪や卵、牛乳、クリーム、バター等の乳製品、はちみつを一切使用せず、パリの美食家たちを虜にしている。

 

フランスの年間 のCO2排出量は、一人あたり約4.62 トン(2018年)。(Data Commonsより)

このまま排出を続けていると、2050年の気温は平均で約5度上がると危惧されています。このCO2排出量を住居や交通、食品などカテゴリーごとに見ると、約1.2トン以上が、肉・魚・乳製品の飼料や燃料などに起因することがわかっています。

 

「自分たちが食べているものが直接CO2を排出しているという意識は持ちづらいかもしれませんが、単純に乳製品や肉・魚をやめるだけでも、CO2年間排出量の約1.2トンを減らせるという計算なんです。全部排除することは難しくても、適宜選択するというフレキシタリアンになれば、また、一人ではなく世界中に広がっていけば、当然CO2排出量は減っていくんですよね」

また、〈メゾン・ランドゥメンヌ〉では、自社がどのくらいの炭素を排出しているかを定期的に専門機関によって計測してもらっているそうです。

「廃棄物をゼロにできるよう、野菜などから出る端材をコンポスト(微生物の働きを活用して堆肥化)する業者に回収してもらったり、プラスチックの梱包材などを使っている業者にはできるだけ『紙袋にしてくだされば購入します』など、必要なアクションを取ることもあります」

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自社工場では、食材の端材を業者回収のうえコンポスト(堆肥)にしたり、リサイクルできない梱包材は使わないなど、廃棄物ゼロを目指す。

 

さらに、パートナーのロドルフ・ランドゥメンヌが立ち上げたフランスのスタートアップ企業と、100%植物性の代替卵「YUMGO(ユンゴ)」を共同開発。ジャガイモのプロテインなどのプラントベースで作った卵液(卵白・卵黄ともに)代替品「YUMGO」は、フランスでは「TROHÉES de I’Alimentation végétale」の2021年で優秀なヴィーガン商品に贈られる賞を受賞。これを用いたヴィーガン向けのブリオッシュパンなども販売されています。

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パートナーのロドルフ・ランドゥメンヌ氏が立ち上げたフランスのスタートアップ企業と共同研究・開発した、100%植物性代用卵「YUMGO」。

「地球温暖化は他国のこと、と見過ごすことは決してできなくなりますし、日本でも近い将来、さらなる意識の高まり、選択の広がりが訪れると信じています。SDGsや環境に配慮した商品開発、フードロスを減らす、プラスチック排除などは、グループの理念として進めていることでもあるんです。〈メゾン・ランドゥメンヌ〉伊勢丹新宿店では、ヴィーガンのラインナップは常時展開しています。パンだけでなくヴィノワズリーやパティスリー、デリ、ドリンクまですべてのカテゴリーにヴィーガン商品を展開し、『昨日はお肉を食べたけれど、今日はヴィーガン』とお客さまに選んでいただけるよう選択肢を広げていきたいですね」

伊勢丹新宿店限定で販売される、ヴィーガンパンをご紹介

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ムーンブレッド(日本製/約直径9cm/1個)443円【伊勢丹新宿店限定】

伊勢丹新宿店本館地下1階 デリ エ ブーランジュリー

米粉ベースの生地に、カカオやアーモンド、チョコチップを加えた、おやつや朝食にぴったりのパン。ヴィーガン&グルテンフリーで、表面はさっくり、噛むほどにもっちり食感を味わえる。

※販売期間:1月5日(水)~3月31日(木)

 

 

 

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サンブレッド(日本製/約直径9cm/1個)443円

伊勢丹新宿店本館地下1階 デリ エ ブーランジュリー

米粉ベースの生地にトウモロコシの粉を練り込み、ドライフルーツをたっぷり加えた、モチモチ食感のパン。食べ応えもあり、パリを中心に展開する姉妹店〈ランド・アンド・モンキーズ〉では一日平均40個も売れている人気商品。

※販売期間:1月5日(水)~3月31日(木)

 

 

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ファーニッポン(胡桃と栗)(日本製/約直径12cm/1個)2,376円(ハーフ1,242円、1/4サイズ626円)

伊勢丹新宿店本館地下1階 デリ エ ブーランジュリー

フランスの伝統的な焼き菓子「ファーブルトン」を、米粉と100%植物ベースの代用卵「YUMGO」で仕上げ、グルテンフリー、ヴィーガンに。砕いた栗とクルミを敷き、食感もアクセント。

※販売期間:1月5日(水)~3月31日(木)

 

 

 

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バー エナジティック(日本製/長さ約12cm/1個)454円

伊勢丹新宿店本館地下1階 デリ エ ブーランジュリー

そば粉と米粉をミックスして使用。クランベリーとかぼちゃの種。周りっとカリッと、中はモチとふわっと、そば粉の香り、クランベリーで甘酸っぱさ。

※販売期間:3月1日(火)~3月31日(木)

 

 

*クレジット

取材・文:藤井存希(FOODIE編集部)

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