震災乗り越え、復興を願う「海の男酒」

2022.3.9 UP

伊勢丹新宿店では、粋の座・和酒プロモーションコーナーにて3月9日(水)~3月15日(火)に東日本大震災で被害に遭いながらも奇跡的に酒造りを再開した〈鈴木酒造〉をご紹介いたします。酒米には岡山県産の雄町を使用し、お米を磨いた爽やかな香りと真吟米によるクリアな飲み口と上質な余韻が特徴の「磐城壽 純米大吟醸 大漁祝」を特別に3月9日より先行販売いたします。

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歴史・名前の由来

鈴木酒造店の酒造りの歴史は江戸・天保年間の1840年ごろ、相馬藩から濁酒製造が許され福島県浪江町請戸から始まりました。廻船問屋を営むかたわら酒造りを始めたことから、酒蔵が海のすぐ近くという立地のため、漁港に集まる漁師たちのお酒として親しまれてきました。

浪江町の請戸漁港に集まる漁師たちは、互いの漁の具合を「酒になったが?」と尋ね合います。「酒になる」とは、その日の水揚げが一定額を超えると、漁恊が大漁祝いとして「磐城壽」の一升瓶を船主に贈っていたことを意味するのです。「今日は酒になった」「酒にならねえな」。これが地元漁師たちのあいさつでした。

漁師の仕事は「板子1枚下は地獄(船底の板の下の海に落ちれば簡単には生還できないとの意味)」とのことわざがあるほど、命の危険と常に隣り合わせです。そのため、漁師は縁起を担ぎ、めでたい言葉を好み、喜びを述べ合うという意味の「壽ぐ(ことほぐ)」。そこから、〈鈴木酒造店〉の代表銘柄「磐城壽」が生まれました。「海の男酒」、船の進水式や安波祭には欠かせない「地域の祝い酒」として愛されています。

 

 

大震災が起こるまで

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〈鈴木酒造店〉蔵元・杜氏、鈴木大介氏

 

 

 

先代社長の長男として生まれ、先代の酒造りへの情熱に触れ、自らも高品質の酒を造ろうという熱意を持ち酒造りを行っている。

 

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2011年3月11日。

その日は今季の酒造りもいよいよ最終日という「甑倒し(こしきだおし)」の日。

作業を早めに切り上げようとしていた頃、経験のない地鳴りが響きました。蔵の外へ飛び出すと本格的に揺れ始め、鈴木大介さんは消防団に所属していたことから町民の避難誘導にあたっていたが、誘導の途中で振り向くと高さ約15m大津波が押し寄せていました。

高台に逃れた鈴木さんは、真っ黒に変わり果てた古里の姿をぼうぜんと眺め酒蔵はもうないだろうと思いました。

程なくして、家族や従業員の全員の無事を確認できましたが、多くの人が行方不明となったまま夜を迎えました。消防団の捜索は翌朝からとなりましたが、数キロ先の東京電力福島第一原発が不安定となり、半径10キロ圏内に避難指示が発令されて捜索もできなくなってしまいました。

 

震災から1か月後、県警や自衛隊による捜索が再開し、多くの遺体が見つかりました。その中には、酒蔵を育ててもらっていた酒米の契約農家の一家の遺体もありました。家族ぐるみの付き合いだったのに、救うことができなかった。今でも大きな悔いが残りますが、この無念が酒造り再開への原動力となりました。

復興までの道のり 浪江~長井

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山形県米沢市にて一家で避難生活を続けていた2011年4月1日、一筋の光明を見いだす知らせが鈴木さんに届きました。福島県の試験場に研究のため預けていた山廃の酒母が残っているという連絡でした。

山廃のような生酛酒母は酒蔵の微生物環境を色濃く反映するため、酒母から酵母を分離選抜することができれば歴史の味を継承することができる可能性があるのです。

 

4月20日試験場にて作業にあたり、無事に分離選抜することに成功しました。早速、その酵母を使い同県の〈國権酒造〉の酒蔵の設備を借りて2000本限定でお酒造りを行い販売すると、避難所に散り散りになった浪江の方々が購入に来てくれてたくさんのエールを原動力により再び酒造りを行う決意を強めます。

 

タイミングよく、山形県の酒蔵を引き継がないかという打診がありいよいよ太平洋に面した温暖な浪江から雪深い長井へ鈴木さんは移ります。

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新天地長井からの復興スタート

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酒造りに大きく関わる水も浪江は硬水、長井は超軟水と異なり、酒質の変化への不安もありつつも長井市で新体制をスタートさせました。長井での酒造りは地域とのコミュニケーションから始まる。長井市にあるレインボープランという事業があり、家庭ごみから出る安全な堆肥で農作物を作る。これを通して避難者と長井の人々との新しい絆が生まれました。長井には、福島からの避難者が600人ほどいた。

2012年の春に最上川河川敷の農家で、市民によるコメの栽培が始まり、避難者から私たちの栽培したお米でお酒を造ってほしいと依頼がありました。このお米は、山形県の食用米「さわのはな」という扱いの難しさから姿を消していたお米で「甦る」が完成します。

長井との地域とのつながりを大切にしながら、2017年冬浪江の水でお酒の仕込みを再開。コメは、浪江産コシヒカリそして水は、浪江町の上水道の原水(地下水)を使用した、「ランドマーク=道標」が完成した。

 

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ついに浪江に蔵が完成。ただいま。

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震災から10年。2021年浪江での酒造りがしたいという思いが伝わり、待望の「道の駅に併設した浪江蔵」が3月20日オープン。記念醸造酒として長井蔵で仕込んだもろみを使い、浪江の蔵で醸造した「ただいま」

をリリース。つづいて同年「故郷ふたつ」という貴醸酒が生まれました。「海」は長井で造った純米酒を浪江で。「山」は浪江で造った純米吟醸を長井で。それぞれ再仕込みをして完成させました。

 

私たちのお酒が浪江にとって真の祝い酒となる時こそようやく復興したといえる気がします。そしてそんな地元の思いを込めて浪江初の純米大吟醸「大漁祝」が完成しました。

 

震災当時、小学二年生だった長男が大学でお酒の道に進むといっているそうです。

長井の蔵には、震災前の未開封の「磐城壽」があります。手元に自分のところの酒がないだろうからと知り合いの酒販店が送ってきてくれたもの。酒造りをすることになったときは、この磐城壽で、息子と一杯酌み交わしたい。「これが浪江で造っていた、うちの酒だ」と伝えたい。それが鈴木さんの願いです。

会期:3月9日(水)~3月15日(火)

会場:粋の座・和酒プロモーション〈鈴木酒造〉

 

販売商品:福島県浪江蔵・山形県長井蔵で醸される日本酒、17アイテム

(磐城壽純米酒、土耕ん醸、ランドマーク、磐城壽あかがね、一生幸福 大吟醸など)

 

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〈招福楼〉春の八寸(1パック)1,620円

「大漁祝い」に合わせるお惣菜として海の具材と一つ一つ丁寧に味付けをした「春の八寸」。

米の旨味に上品な味付けの春の素材がベストマッチ。

ぐい呑みもついていて、お酒も注ぐことができ「磐城壽」を飲みながらお愉しみください。

 

 

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