2022.5.13 UP
「実は、サンドイッチをやってみませんか?という提案は、伊勢丹新宿店さんからでした。伊勢丹新宿店は、私たち家族が大好きなショッピングの場所。ここでお店ができるのならば、どうするべきなのか?その意味を考えるところからお店作りがスタートしました」。
2022年3月9日にオープン。サンドイッチのフィリングは定番と季節商品で約10種類ほど。すべて伊勢丹新宿店オリジナル商品。品川の工房で毎日手作りをしています。
そう説明してくれたのは、〈はせがわ〉そして〈obi-sand by はせがわ〉で商品開発全般を務める長谷川文菜(あやな)さん。「食ぱん」事業は、食をテーマに海外向けに事業を起こしたいという文菜さんに、文菜さんの妹の真子(まこ)さんが意気投合したことからスタート。その後真子さんは、大学在学時から販売面からサポートを行なっています。
姉の長谷川文菜さん(左)と妹の真子さん(右)。4歳違いの仲良し姉妹は食経験も共にしてきた。長谷川家の家族共通の軸は“食”。
「私たち家族は食べることが大好き。高校生の時に2人ともアメリカへ留学したのですが、食事が美味しくなくて(笑)日本の食のレベルの高さを実感し、日本の良い食文化を海外に輸出したいという夢を妹と語り合うようになりました。これは!と思ったのが日本の食パンでした。ところが、いざという時にコロナ禍となり、国内販売からスタートすることに。今も、日本の食文化を外に知っていただきたいという気持ちがベースにあります」と話すのは姉の文菜さんです。
「伊勢丹さんの歴史から調べました。ルーツは呉服店で、伊勢型紙という伝統文様に行き当たりました。伊勢丹新宿店という場でお店を営むのならば、伊勢丹の歴史へのリスペクトも表現したい。それでobi-sandとしました。日本の伝統の帯の重ねとサンドイッチの断面がデザイン的にどこか似ているのもありますが、ロゴデザインは、伊勢型紙の実際にある文様からインスピレーションを受けています」。
伊勢型紙の文様とサンドイッチに共通項を見出してできたデザイン。フィリングでは和の風味やアクセントを大切にしている。
〈はせがわ〉を代表する「食ぱん」/「欣幸」(きんこう)は、オリジナル小麦粉を使用し、柔らかさと歯応えを両立させた食感に大きな特色があります。「『欣幸』は、サンドイッチとしても食べやすい食感で、パンの甘味とフィリングの塩味でコントラストが生まれます。「食ぱん」専門店なので、パンの味も一緒に感じていただくサンドイッチにしたい。そして、洋風なテイストであっても、どこかに日本らしさを効かせた味を目指しています」(文菜さん)
フィリングは全て、工房で一から手作りしています。工房を訪れた時は「たっぷり根菜のベジタブルサンド」のきんぴらをフライパンで炒めているところでした。
「野菜類は、八百屋さんから届く新鮮なもの切るところから行います。肉は塊肉で仕入れて、自分たちでトリミング、捌くところからで全て手作業です。外食用に加工された食材も試食しましたが、自分たちの舌が満足できませんでした。フィリングの内容は、一つ一つ、家族とスタッフで話し合って決めています。私が一度試作して皆で試食して、改良を重ねます」(文菜さん)。
現在伊勢丹新宿店で一番人気の「国産あじフィレフライと柴漬け入りタルタルのサンド」のタルタルソースは、「お母様直伝のレシピです」。長谷川家では昔から人気の味で、今回採用になったのだそうです。
国産あじフィレフライと柴漬け入りタルタルのサンド(1個)864円 【伊勢丹新宿店限定】
ふっくらと手揚げしたあじフライと柴漬け入りのタルタルソース。柴漬けのパリパリした食感も楽しく「欣幸」のほんのりした甘味が塩味や酸味、旨味と優しく調和する。パン粉もパルメザンチーズとバジルを入れたオリジナル。凝りに凝っている。
また、スイーツ系サンドイッチにも色々工夫が凝らされています。見た目からインパクトあるのが「自家製カスタードのブリュレ・サンド」です。
自家製カスタードのブリュレ・サンド(1個)648円【伊勢丹新宿店限定】
何度も試作を繰り返し、「欣幸」のしっとりとした柔らかさに合う食感のカスタードクリームが完成。パン生地の甘みと喧嘩しない甘さのカスタードクリームがたっぷり入っています。外側はクリームブリュレ風にキャラメリゼ。スイーツの手土産にもなりそうです。
どのフィリングもご馳走感が溢れて、色彩も美しく華やかですが、ベースに家族の食卓やレストランに行った思い出などが潜んでいると思うと、ほっこり温かい気持ちになります。サンドイッチを並べてみると、そこが素敵な家族食堂のようにも見えてきます。
現時点での全てのラインナップをご紹介します。
※原材料の入荷状況により、予告なく販売を中止させていただく場合がございます。予めご了承ください。
北海道産ずわい蟹と石垣島産島唐辛子のクラブケーキサンド(1個)2,160円【伊勢丹新宿店限定】
クラブケーキはアメリカの東海岸で生まれた蟹肉ハンバーグのような料理。パン粉をつけて揚げてバンズで挟むのも現地で人気。こちらも自家製クラブケーキをさっくりコロッケ風に揚げてパンに挟む。トップにもずわい蟹の身がのって、ダイレクトに蟹の味わいが口中に広がる。石垣島産島唐辛子の和の特製ソースがピリッと味を引きしめる。
沖縄県産キビまる豚のあられ揚げ和風味噌カツサンド(1個)1,485円【伊勢丹新宿店限定】
長谷川家は名古屋出身。名古屋といえば味噌カツだ。「普通の豚肉は香りが苦手なのですが、キビまる豚は脂身の香りもよく、身質もしっとりとして唯一好きな豚肉です」(文菜さん)サトウキビで育ったブランド豚「キビまる豚」をあられ揚げしたカリカリした食感が楽しく、赤味噌ベースの甘辛ソースの豚カツと繊細にカットされたキャベツはボリュームたっぷり。しかし後味は非常にスッキリしている。
たっぷり根菜のベジタブルサンド(1個)648円【伊勢丹新宿店限定】
自家製で丁寧に炒め揚げたきんぴらは、ごまもたっぷり入った甘辛味。酢漬けにしたビーツ、美容健康野菜として人気のケールも一緒にたっぷり入っている。野菜だけでも満足感ある味わいを目指したこのサンドは、長谷川姉妹の密かな一推し。
フォアグラのテリーヌサンド(1個)2,160円【伊勢丹新宿店限定】
パンは「欣幸」でなく「白いちじくと胡桃の食ぱん」を使用。フォアグラとの相性が抜群に良い、このパンありきで生まれたと言って良いフィリングは、東京・三田のイタリア料理店<effe>のオーナーシェフ福田智一さんによるフォアグラ。良質な油脂で旨味のフォアグラ・いちじく・胡桃は黄金の組み合わせ。食事の前菜としても楽しめる。
最後に食パンのお話を。〈はせがわ〉の看板商品「欣幸」の特長は、なんといっても独自に挽いたオリジナル小麦粉「はせがわブレンド」の使用です。小麦粉は日本酒の大吟醸のように、独自の研磨方法で小麦を削り、中心の芯の部分だけを使用しています。
オリジナルで製粉にこだわった小麦粉。
柔らかく繊細で滑らかな口当たりと、小麦品種由来の弾力や歯応えが両立する食パン。「微細に粉砕した小麦粉は、通常の水で混ぜるとダマになりやすいため、素材への浸透性の高いパイウォーターを使用します。この粉と水があって、初めて生まれた食ぱん。日本の製粉技術はとても高いので、将来的には〈はせがわ〉オリジナルの小麦粉も海外に販売していきたいと考えています」。(文菜さん)
長谷川さん姉妹の大きく広がる夢の話は、パンやサンドイッチを食べる私たちも元気にしてくれます。
■「食ぱん」とその他商品
欣幸(きんこう)2斤 951円 ハーフ 513円
オリジナル小麦粉「はせがわ」をベースに、カルピス生クリーム、蜂蜜を練り込んだ。フワフワなだけでなく、噛みごたえを重視し、上品な甘味や旨味が噛むとじわじわ広がる。
旨極(1斤)810円
北海道産小麦「美瑛のちから」をメインに2種類の北海道産小麦のブレンド。小麦の芳醇な香りを生かした食ぱん。湯種製法を使い、もっちりとした食感。
餡茶(1斤)1,458円 ハーフ756円【伊勢丹新宿店限定】
オリジナル小麦粉〈はせがわ〉に、愛知・西尾産の抹茶をふんだんに練り込んだ食ぱん。断面の美しいうずまきは、餡子を手作業で薄く伸ばした後に1本1本巻き、可能になった。
メープルラスク(左)1袋 324円 プレーンラスク(右)1袋324円
低温で12時間かけてゆっくり火を入れたサクサクで軽い食感のラスク。メープルラスクは、メープルシロップがたくさん入ったリッチな味。プレーンは、パンの香りと香ばしいバター風味のシンプルな味。
Text:FOOD INDEX編集部
Photo : Yu Nakaniwa