2022.07.26 UP
樹齢二千年とも言われる大楠が生い茂る子安の杜、福岡県は宇美八幡宮の中にある工房で一つ一つ手作りされる<季のせ>の和菓子。「季節をお菓子にのせる=ときをのせる」という想いが<季のせ>の屋号には込められています。
「宇美八幡宮は安産、育児の信仰が篤く、安産祈願を終えた妊婦が“お産の鎮め”として此処の石を預かって持ち帰り、目出度くご出産の暁には、別の新しい石にお子様の名前等を記して健やかなる成長を願い、安産御礼(初宮詣)の御祈願にてお祓いの後に、預かった石と一緒お納めするのが慣しとなっています。そこから生まれた、石を模した「うみもなか」や、その命が百年、千年、万年と繋がっていきますようにと願いを込めた「百千万十」宇美八幡宮にちなんだ「80000大福」など土地ならではの和菓子があります。」
今月の<季のせ>の季節菓子は羊羹。鮮やかな色合いから新しい羊羹の世界をお楽しみください。
「マンゴー、アップル、アプリコット、パイナップル、レモン、オレンジ、クランベリーの7種類のドライフルーツをモヒートリキュールでさっぱり仕上げた夏の羊羹です。口の中いっぱいに弾ける果実感を、ぜひご賞味ください。
冷蔵庫で冷やすと、より一層美味しく召し上がれます。
羊羹と言えば熱いお茶。というイメージを持たれがちですが、冷茶はもちろん、冷えたシャンパンなど夏に美味しいさっぱりした飲み物と合わせて楽しめる羊羹に仕上げました。オレンジで夏の太陽を表しています」
一棹:2,204円
販売期間:7月27日(水)~8月2日(火)
誰もが耳にしたことのある和菓子の王道「羊羹」ですが、その始まりは名前の表す通り、羊の羹(あつもの)=スープだったのです。鎌倉〜室町時代、禅僧が中国から持ち帰った点心の食文化として48種類もの羹が伝わったと言われます。「羊羹」も「猪羹」「白魚羹」「芋羹」などのうちの一つとして伝わりましたが、肉食を禁じられていた禅僧は小豆や小麦、葛などを混ぜて、羊の汁物に色や形を似せて作ったということです。
織田信長や豊臣秀吉、徳川家康などの饗応の献立にも使われ、法事の料理、または茶会の菓子としても用いられたりしました。当時は「蒸し羊羹」の形に近いものであったと考えられますが、江戸時代以降、甘味を増したものが作られるようになり、さらに寒天が発見されると、今、私たちが「羊羹」と思う「煉り羊羹」が生まれます。
歴史の中でこんなにも変化の大きな食べ物も珍しいかもしれません。さらにこれから新しい世界へ広がっていく和菓子の中で、どんなものが生まれていくのか、楽しみですね。
Text : Yukako Yasuda