2022.9.25 UP
2022年8月31日に出来立てを提供する店内厨房もそのままにリフレッシュオープンした<仙太郎>。今回のオープンでまず目に飛び込んでくるのが“身土不二”の文字。地下鉄改札口(Gate J)から伊勢丹新宿店に入店し、和菓子ゾーンを歩いていると正面にこの文字が迫ってきます。
仙太郎は京都寺町仏光寺に本店を構える和菓子店。初代は田中仙太郎氏。<仙太郎>は、創業時に初代が自身の名を屋号に定めたといいます。京都の和菓子といえば、茶席で供される芸術品のような練り切りなど、上生菓子の有名店も多いですが、日常的に食される朝生菓子も実力店揃い。団子や饅頭、おはぎなど、作り立て、出来立てのその日のうちが美味しいのが朝生菓子です。出来立てで食べるからこそ本来の真価を発揮する菓子。数ある菓子店の中で、圧倒的な朝生菓子の支持を、それも長きにわたり証明してきたのが<仙太郎>です。
仙太郎京都本店
<仙太郎>といえばやはりおはぎ。コロンとした手づくりのおはぎがショーケースに並ぶ姿は、華やかさはないけれど、素通りできないインパクトに満ちています。見るからに食欲を刺激されるのは、一つ一つの素材の持つ力の輝きなのではないでしょうか。
おはぎ 粒(1個)195円
身土不二とは、「身」と「土」は二つにあらず。つまり、生まれた土地と人は切り離せない関係にあるという意味とされていますが、仙太郎の“身土不二”とは「生まれ育った風土が育んだ素材が一番体になじみやすく、すなわち美味しい」という解釈であり、この言葉を大切にしているのだそうです。
「体になじみやすく」が「美味しい」であるというのは、非常に独自性のある深いメッセージです。また、ある種の境地でもあると思います。言うのは簡単ですが、これが単なるスローガンでなく、本気で真摯に実践しているのが<仙太郎>。ファンであれば、主要食材の生産現場に<仙太郎>が自ら関わっているのはよく知るところでしょう。
<仙太郎>が言う身土の「土」は、丹波、近江、大和そして但馬といったエリア。特に小豆は仙太郎丹波神吉農場で、オリジナルの原種を育成栽培しています。理想とする大粒・角粒で表皮は柔らか、そして香気の強い品種は自社交配の末、誕生したものです。皆を魅了しているおはぎは、土選びから商品作りが始まっているといえます。
自社農場で栽培した小豆。
丹波八木町神吉の自社農場で、小豆は古来品種「天領馬路大納言」の原種を種子づくりから取り組んでいます。大粒で皮が柔く、香り高い小豆は<仙太郎>だけのもの。
もち米の品種は羽二重。あえて精米は八分づきにして胚芽分の栄養素を残す様にしています。青じそは、香りはもちろん、五臓六腑の胃腸が求める美味しさのために刻み入れているとのこと。
ご存じ最中(1個)281円
小豆はおはぎ同様、自社農場で育成栽培した原種を使用しています。北海道の甜菜糖で作った氷砂糖と天草の糸寒天を加えて餡を炊いています。添加物はもちろんなし。最中は和菓子の中でも、原材料の良し悪しがわかりやすい菓子だそうです。種は代々、最中種専門の船越家の種を使用しています。
おまん こし・粒(各1個)432円
柔らかな呼び方でぽってりした姿も可愛い「おまん」。京都の芸者さん達のお饅頭の呼び名だったとも。生地はつくねいもです。引菓子などは紅白で贈られることの多い薯蕷饅頭ですが、<仙太郎>では着色しない「白」こそ最も上品で気品がある、と白のみ。ただし餡は、こし餡と白餡・粒あんの二重餡となっています。上質な素材を選び抜き、作られる日常の和菓子は、とても贅沢な喜びだと改めて思います。
Text : FOOD INDEX 編集部