2022.10.14 UP
叶 匠壽庵は滋賀県大津市長等に創業されました。初代、芝田清次氏が滋賀県の名物土産を作り、郷土である滋賀県を紹介したいと願ったところから始まり、三代目、現代表である芝田冬樹氏へその想いは繋がってきました。
和菓子の菓銘(かめい:菓子の名前)は面白いもので、同じ素材、同じ形のお菓子であったとしても、菓銘が変わればそこから連想される事物が変わり、作られる季節まで変わってきます。
叶 匠壽庵では、滋賀県の地名や所縁の深い万葉集の言葉などを菓銘に用いて、お菓子の名前にまつわる物語の背景やストーリーを、素材選びや製法に活かして創作和菓子が作られています。
棹菓子といえば羊羹が主流だった時代に、普通の小豆の棹菓子ではないものを作ろうと工夫され、風味にこだわって丹波大納言小豆を手炊きしたみずみずしい生地と、お餅の柔らかさを追求した羽二重餅とを組み合わせることで誕生したのが「あも」でした。
「あも」は言葉の響きから商品の柔らかさを感じてもらおうと、宮中の女官が使っていた女房言葉からお餅のことをさす「あも」と命名されました。
創業者は元警察官で、石山寺横の駐在所に勤務していたという昔の縁から生まれた逸品が「石餅」です。福徳や縁結びのご利益があるとされている石山寺ですが、その名の通り石の上に立つお寺です。寺名の起こりとなった雄大な硅灰石の上に本堂や多宝塔が建てられています。
その石を模した「石餅」があったというお話を寺僧より聞き、『身体を清め、力が宿り、石のように固い絆が結ばれるようにと祈念し食した』という故事を元に、復元というかたちで「石餅」が作られました。
夏はかき氷の上にのせても、冬はぜんざいに入れていただくのもおすすめです。
初代が大切にされた郷土への思いは今日まで伝わり、現在は滋賀県大津市大石龍門の六万三千坪の丘陵地に本社「寿長生の郷」があります。琵琶湖から流れる瀬田川のほとり、京都との境の山々に囲まれた自然豊かな場所で「農工ひとつ」をコンセプトに土地を開墾し、日本の里山作りをされながら和菓子を創作されています。里山では自然と人の生活が無理なく巡ることが大切で、「寿長生の郷」では、お菓子の製造から出る小豆の皮は堆肥に混ぜて畑づくりに使用し、ゴミを出さない、原料を無駄にしない等のサイクルができています。
「叶 匠壽庵人は、おおみたから(百姓)、そんな人の集団です。」というのは芝田冬樹氏の言葉です。
叶 匠壽庵のおおみたからは、山の木々を整備したり、ニホンミツバチの養蜂を手がけたり、千本の城州白梅や希少な露茜というを育てています。銘菓「標野」には着色料を使用せず、実も皮も赤い「露茜」を「城州白」と合わせることで、美しい夕焼けに染まる野の色の階調が作り出されているそうです。「農工ひとつ」をまさに体現されている「寿長生の郷」里山の可能性はさらに広がるのではないでしょうか。
お食事処、甘味処、カフェもあり、初夏の梅狩りや、夏のとうもろこし祭り、秋の収穫祭や、冬の餅花づくりなど、季節を感じるワークショップの開催もありますので、ぜひゆっくりと訪ねてみたいところです。
<叶 匠寿庵あもや>あも(粒あん)(1本)1,296円
販売期間:通年
味と香りがよく、皮が薄くて口当たりのよい「丹波大納言小豆」。
その小豆をじっくりと時間をかけて糖蜜をふくませ、手炊きをしています。職人はその日の小豆の状態、気温湿度に合わせて炊き方を加減し、ふっくらと艶やかな餡をつくります。
羽二重餅はとろけるようにやわらか。小豆はやさしくほどけます。
<叶 匠寿庵あもや>あも(こしあん)(1本)1,296円
販売期間:通年
あも50周年の節目に誕生したこしあん。
素材の風味、小豆と餅のバランスなど「あも」の持つ良さに加えて、銅釜で丁寧に炊きあげたこしあんの持つなめらかな口あたりを吟味して仕上げました。
<叶 匠寿庵あもや>あも(栗)(1本)1,404円
販売期間:11月下旬まで
栗を使った、今までどうしてなかったんだろうと思わせる、新定番が出来上がりました。芳ばしく焙煎した栗をほどよい大きさにカット。そこへ選び抜かれた「ゲランドの塩」をまぶします。フランスの太陽、風、土が最適な環境で、塩職人の手によりじっくり結晶化させる天日塩「ゲランドの塩」が効いています。
<叶 匠寿庵あもや>あも(蓬)(1本)1,404円
販売期間:通年
滋賀県にある伊吹山は古くから蓬(よもぎ)などの薬草の宝庫として知られることから、これを使った地元にちなんだあもをつくろうとなりました。しかし当時は蓬を栽培するところがなかったため、「伊吹農園」を拓き、地元の方々とともに蓬栽培を始めました。収穫はやわらかいところのみを一枚一枚丁寧に摘み取ります。地元の方の協力で緑の濃い餅に仕上がりました。
<叶 匠寿庵あもや>あも(胡桃)(1本)1,404円
伊勢丹新宿店限定
販売期間:12月下旬まで
胡桃は日本に古来より自生しており、一家に一本あったというほど、日本人と馴染みが深い食材。胡桃色という伝統色もあります。そんな胡桃を芳ばしく焙煎し、餅に練り込みました。小豆、餅、そして胡桃が三位一体に。胡桃好きにはたまらないあもが出来上がりました。
<叶 匠寿庵あもや>あも歌留多(2枚1組×5セット)540円
販売期間:通年
※最中種のみ入っております。あもは別売りです。最中種2枚(おもて1枚・うら1枚)の1組が5セット入っており、1箱であものおよそ半分をあも歌留多(挟んだ状態)としてお楽しみいただけます。
叶 匠壽庵のある滋賀県大津市には、百人一首の聖地・近江神宮があります。その第一首を詠った天智天皇は、中興の祖といわれ、近江大津宮を建都。新元号「令和」を迎えたこの年、天智天皇ゆかりの近江からお祝いの菓子として開発しました。浮世絵をモチーフにした歌留多をあしらった近江羽二重糯米の最中種は全10種。いろはかるたのように、それぞれに平仮名をうちました。あもをはさんで食べる、手作り最中。新たな時代に新たなあもの楽しみ方が誕生しました。
<叶 匠寿庵あもや>石餅(1箱/6個入)756円
販売期間:8月・12月を除く通年(月・木のみ11時頃入荷)
石山寺の寺名の起こりとなった雄大な硅灰石。その石を模した「石餅」を復元しました。
無事息災の願いとともに、大切な方との絆がより一層深まるよう願いを込めて「石餅」を
お召し上がりください。
白餅と蓬餅をねじり合わせることで絆を表し、石山寺の象徴である硅灰石に見立てた小豆餡を力強くのせています。
百人一首の絵柄をあしらわれた「あも歌留多」と「あも」の組み合わせは食感も絶妙で、サクリと歯ざわりの良い最中種と軽い羊羹と羽二重餅。和菓子が恋しくなる秋真っ盛り、ぜひ、組み合わせて召し上がっていただきたい一品です。
Text : Yukako Yasuda