2023.1.2 UP
「これは、両親が昔から好きだったケーキなんです」
いかにもうれしそうな表情で「マロンシャンティイ」を紹介してくれたのは、お取り寄せグルメなどにも詳しいエッセイストの酒井順子さん。
<パレスホテル東京スイーツブティック>で、小さい頃から好きな「マロンシャンティイ」を。「超絶技巧のケーキよりも、果物を使ったシンプルなタルトや、昭和っぽい昔ながらの味わいのスイーツの方が好みなんです」。
「ほとんどが栗と生クリーム、あとは少しだけスポンジも使っていますが、そのシンプルさが潔くていいなと思っています。特に父親がこの味を好きで、昔はパレスホテル東京までよく食べに行っていました。でも昨年からついに、伊勢丹新宿店でも買えるようになったんですよね。両親が生きていたら、ぜひ教えてあげたかったです」
<パレスホテル東京スイーツブティック>マロンシャンティイ(1個)901円
伊勢丹新宿店本館地下1階 カフェ エ シュクレ
1961年のパレスホテル開業時から変わらぬ伝統のスイーツ。粗めに裏ごしした栗の豊かな風味と、ふんわりとのせた生クリームの軽やかな食感にファンが多い。
そのご両親が住んでいた酒井さんの実家は、新宿から電車で1本の場所。酒井さんは子どもの頃から伊勢丹新宿店へ通っていたのだそう。
「実家から離れてみると伊勢丹新宿店のありがたみが身にしみて。実家のある町に戻った今、また頼りにしています。最近は少なくとも月に1回、時季によってはそれ以上かな。外出で新宿駅を通ると、伊勢丹によってから帰ろうかなと自然に足が向くことが多いですね」
特に利用するのは、駅から地下道で気軽に行ける食料品フロア。「地下1階の催物は毎回行きますし、地下2階の<ビューティアポセカリー>も好き。家では基本的に私が料理するのですが、1人で食事をする日は、自分が好きなお惣菜ばかりを買って帰るのがちょっとした楽しみです。あと、地方で買った調味料を切らしたときも、伊勢丹なら置いてあることが多い。そんな風に、何でも見つかる安心感がありますね」
<サルメリア ガリバルディ>では、お気に入りの「ベシャメルとラグーのラザーニェ」を購入。
伊勢丹は買物をする場所であると同時に「娯楽の場」だと表現してくれた酒井さん。
「ちょっとくさくさしてしまった日でも、行けば楽しい気分になれるオアシスのような場所。特別な目的がなくても、3階でふらりと洋服を見たり、6階の催物場で『もう年末か』と季節を感じたり…なじみの場所をパトロールするのが楽しいです」
自身の“伊勢丹好き”を改めて自覚したのは、3年前のパンデミックのときでした。
「外出が制限される直前のタイミングで、リュックをて駆け込んだのが伊勢丹新宿店でした(笑)。そのときは食料品や愛用のボディローション、洋服などを買いました。外出する楽しみが減ってしまう前に、地元のスーパーではできない、気分が上がるお買物をしたかったんだと思います。デパートという存在を、私はこんなに頼りにしていたんだなぁ!って、あのとき改めて気付かされましたね」
グルメな方への手土産探しにも便利な「プラ ド エピスリー」は、よく見るスポットのひとつ。
<ダ・ローマ>のイタリア食材や、<サヴィーニ タルトゥーフィ>のトリュフ塩などが、料理好きな酒井さんの好奇心をそそる。
新宿駅からふらりと立ち寄れる利便性もお気に入り。「雨の日も地下から濡れずに来れるのがいいですよね」
自粛期間中も、外食気分を味わうべく食料品フロアを活用。家では作れないお菓子や惣菜を楽しんでいたそう。
<神田志乃多寿司>は、以前に神田で食べたとき以来のお気に入り。
いつも購入するのは「かんぴょう巻」。「かぶりついたとき、ひと口では食べきれないこのサイズ感がちょうどいい。“おいしい長さ”です」
酒井順子
エッセイスト
東京都生まれ。2003年『負け犬の遠吠え』(講談社)で講談社エッセイ賞と婦人公論文芸賞を受賞。2013年『ユーミンの罪』(講談社現代新書)がヒット。近著は小野小町、紫式部、清少納言、日野富子など歴史上の女性43人の足跡を辿った京都エッセイ&ガイド『女人京都』(小学館)。
写真:福田喜一
取材・文:小堀真子