ホワイトデーに、できたてのフラワークッキーを。 ―樋口直哉さんの『料理のツボ』―

2023.3.8 UP

今月は、エディブルフラワーをあしらったロマンチックなクッキーの提案です。春らしく、見た目のイメージどおりの儚(はかな)くやわらかな味わい。できたては特においしいそうです!

このページをシェアする

ph

ホワイトデーのお返しにクッキーはいかがでしょうか。基本のバタークッキーに華やかなエディブルフラワーを飾ったフラワークッキーです。作り方はとてもかんたん……ですが、もちろんコツがあります。

調理科学の権威、ハロルド・マギーはクッキーを「菓子の芸術の集大成」と表現していますが、それだけ多種多様。どんな仕上がりにするかによって、材料の比率や混ぜ方などが異なります。

 

今回はやわらかで口溶けがよく、どこかはかなさを含む花のかわいらしさが伝わるようなクッキーを目指します。作る前にまず時間にゆとりを持ちましょう。というのもクッキーは材料こそシンプルですが、バターと砂糖をしっかり練ったり、生地を休ませたり……と時間のかかる工程が意外と多いのです。あらかじめレシピを読み、時間を計算してから作りはじめるのが重要です。

 

フラワークッキー(出来上がり分量 20個〜22個)

 

<材料>

バター   60g(有塩カルピスバター)

粉糖    30g

溶き卵   25g (およそ1/2個分)

薄力粉    100g

アーモンドパウダー 20g

 

(アイシング)

粉糖    60g

レモン汁  大さじ1

エディブルフラワー 1パック

 

store

(作り方)

失敗しないためのポイントは2つ。順番に紹介しますが、まず1つ目は「粉糖を使う」ことです。砂糖にはいくつか種類があり、いちばん一般的な砂糖は「上白糖」です。これはショ糖に転化糖を足し、しっとりさせたもので、料理や和菓子に使います。上白糖は日本独特の砂糖で、海外では見かけません。欧米で一般的なのは「グラニュー糖」です。グラニュー糖は細かい粒状に結晶させた砂糖の一種で、さらさらしています。「粉糖」はグラニュー糖を粉にしたもので、溶けやすさが特徴です。

 

上白糖でクッキーを焼くと、焼き色が早くつき、かためで中までカリッとした食感になります。味はしっかりとした甘みが残ります。グラニュー糖でクッキーを焼くと砂糖の粒がかすかに残り、表面はかため、なかはホロホロと崩れやすい食感になります。粉糖を使うと表面がなめらかになり、やわらかで口溶けのいい食感になります。口に入れると甘みを感じますが、グラニュー糖同様にさっぱりとした後味です。レトロ感のある昔風のクッキーには上白糖が向いていますが、おいしいクッキーを作るには粉糖が欠かせないのです。

 

store

バターは常温に戻し、やわらかくしておきます。室温が20度を下回る場合は200wの電子レンジに30秒ずつかけて、指で押してかんたんに潰れる状態まで慎重に加熱しましょう。

 

store

ゴムベラでボウルの底にバターを押し付けるように混ぜ、練っていきます。

 

store

粉糖を加え、さらに練っていきましょう。この押し付けるように混ぜるという作業がクッキー作りではよく登場します。

 

store

溶き卵を少しずつ加えて、なじませていきます。この時、卵が冷たいとバターが固まってしまうので、やはり常温に戻しておきましょう。

 

store

卵を一度に加えるとバターが散ってしまい、上手に混ざりません。面倒でも少しずつボウルの底にバターを押し付けるようにして、クリーム状になるまでしっかりと馴染ませていきます。もしも、バターの塊が分離した状態になったら泡立て器でクリーム状になるまで混ぜれば大丈夫です。

 

store

粉類(薄力粉とアーモンドパウダー)をふるい入れます。粉をふるうことで後から生地に馴染みやすくなります。アーモンドパウダーが入ることで味と口どけがよくなりますが、素朴な味にしたければ全量(120g)を薄力粉に変えてもいいでしょう。

 

store

粉類を加えたら混ぜていきます。

 

store

ここで2つ目のポイント、「粉類を加えたらしっかりと混ぜる」です。ボウルの底や側面に生地を押し付けるようにしながらすり混ぜていきます。ときどき「粉類を入れたらさっくりと混ぜる。練るとグルテンが出て、硬い仕上がりになる」という記述を見かけますが、それは水分の多い配合の場合。今回のようにバターの多い生地はよく混ぜても必要以上にグルテンが出ることはありませんし、しっかりと練ることで生地がよく混ざり、焼いたときにヒビが入ったり、割れたりすることが防げます。生地にツヤが出て、さわってベタつかなくなるまですり混ぜましょう。

 

store

オーブンシートの上に生地を移します。

 

store

もう一枚のオーブンシートではさみ、綿棒で厚さ4mmまで伸ばします。オーブンシートに挟んで作業すると生地がくっつきにくいので作業が楽です。綿棒は常に生地の中心から外側に向かって転がし、均等な厚さを心がけます。ルーラーという生地の両端に置くことで厚さを揃える道具を使えばカンタンなのですが、ホームセンターのDIYコーナーなどで4mmの角材を買ってきても代用できます。

 

生地が伸びたら冷蔵庫で1時間冷やします。しっかりと冷やしこむことで生地に硬さが出るので型で抜きやすくなりますし、生地のなかの水分が均一になるので、焼き上がりのムラが抑えられます。

 

store

冷やした生地を冷蔵庫からとりだし、まるい型で抜いていきます。その前にオーブンを170℃に予熱しましょう。

 

今回は3.8mmの丸形を使いましたが、適当な大きさのグラスなどでも代用できます。型の先に粉をつけ、まっすぐに押し抜き、オーブンシートをしいた天板に並べていきます。残った生地は丸めてから伸ばし、同様に型で抜きます。170℃のオーブンで12〜14分焼きましょう。8分ほど経ったところで、天板の上下を入れ替えると焼き色が均一になります。

 

store

焼き上がったら天板ごとケーキークーラーなどに乗せて冷まします。

 

store

粗熱がとれたところでアイシング作りです。粉糖にレモン果汁を加えて混ぜましょう。

 

store

クッキーの片面にアイシングをつけて……

 

store

ケーキークーラーなどにのせ、エディブルフラワーの花びらをのせていきます。

 

store

20分ほど置くとアイシングが固まったら出来上がりです。

 

store

色とりどりの花が美しく、クッキーの淡い甘さを甘酸っぱいアイシングが引き締めてくれます。クッキーは作りたてがいちばんおいしく、時間をおくと味が落ちていきます。できたてを楽しめるのが手作りの特権。ぜひ挑戦してみてください。

 

Text & Photo : Naoya Higuchi

RECOMMEND

レシピ

伊勢丹美味歳時記 〜4月 ~

伊勢丹美味歳時記 〜4月 ~

「フランスフェア」レストランメニュー

「フランスフェア」レストランメニュー

「たまご」を使ったおいしいものが大集合!「ISETAN たまごフェス」

「たまご」を使ったおいしいものが大集合!「ISETAN たまごフェス」

CATEGORY

カテゴリー