2024.6.7 UP
(右)国産天草角寒天(2本)778円
(左)粒あんパック(350g)605円
和のお菓子といっても様々ですが、あんこはやはり基本食材の一つ。あんこは小豆をやわらかく煮てから砂糖を加えて煮詰めたもので、様々な和菓子に使われます。手作りもできますが、市販品も便利。
今回、取り上げるもう一つの基本食材が寒天です。寒天は海藻の一種であるてんぐさからつくられる植物性素材で、精製された粉寒天なども売られていますが写真のような棒寒天にはかすかな海の香りがあり、冷たくした寒天を口にすると涼やかな気持ちになります。
今日はあんこと寒天を使った『あんみつ』の作り方をご紹介します。作り方はかんたんですが、現代風に仕立てるところに特徴があります。
例えばパッケージの裏に書いてある調理例には寒天1本に600mlの水分という分量が記載されています。この割合でつくると切ったときにコロコロと転がるようなしっかりとした食感になり、このプリッとした食感が寒天の魅力と思われがちですが、あんみつの場合はもっと水の分量を増やします。やわらかく仕立てるのが現代風というわけ。
◼️あんみつ
<材料>
棒寒天 1/2本
グラニュー糖 75g
水 750g
黒砂糖 100g
水 100g
あんこ 適量
白玉 適量
棒寒天は使う前に水で2時間程度戻しておきます。
寒天が浮いてくるとうまく戻らないので落し蓋や皿などを重しにすると安心。
波照間産特等純黒糖(250g)521円
そのあいだにあんみつのもう一つの主役である黒蜜を仕込みましょう。黒蜜は黒砂糖と水を軽く煮詰めたもの。黒砂糖の産地は奄美大島や沖縄など。店頭には様々な種類が並んでいますが、今回は波照間産の黒糖を使いました。
沖縄では8つの離島でそれぞれ黒糖を生産していますが、それぞれ味わいが異なります。土壌や気候、収穫時期、製糖方法などが異なるからです。なかでも波照間産はかすかな苦味と厚みがあって黒蜜に最適。大人な味わいの黒蜜に仕上がります。
黒砂糖はそのままだと溶けづらいので、水を加えて30分以上置いてから加熱をはじめます。
時間を置くと黒砂糖が水分を吸い込み、ゴムベラで軽く混ぜるだけで溶けるからです。中火にかけて沸かします。
沸騰すると泡が浮いてくるので取り除きます。
吹きこぼれないように注意しながら、中火で1分加熱したら出来上がりです。泡が大きくなったら加熱終了の目安ですが、冷ますと濃度がつくので煮詰め過ぎは禁物。砂糖がしっかりと溶けて、軽く煮詰めたら大丈夫です。粗熱がとれたら瓶などに移し替えて、冷蔵庫で保存しましょう。
さて、寒天の準備に移りましょう。鍋に水、グラニュー糖、手でちぎった寒天を加えて中火にかけます。
寒天は科学的にはゼラチンと同じゲル化剤です。ゲルとは少量の個体がたくさんの液体を抱え込んだ状態を指しますが、寒天やゼラチンは液体をゼリー状にします。寒天は特に凝固力が強く、99.8%の水分を抱え込むことができますが、その力を発揮させるために必要なのが加熱です。
寒天は90℃未満で溶けますが、凝固力を発揮させるためには一度沸騰させる必要があります。失敗パターンのほとんどは加熱不足なので、沸騰したことを確認しましょう。
四角い容器(流し缶を使っています)に流します。茶こしなどで寒天が溶けているかを確認するといいでしょう。もしも、茶こしに寒天が残っている場合は鍋に戻して、もう一度溶けるまで加熱し直します。
周りに氷水を張り、粗熱をとります。粗熱がとれたら冷蔵庫で2時間以上、冷やしましょう。
白玉も和のお菓子の基本の一つです。白玉粉と同量の水を混ぜ、丸くまとめて沸騰した湯で浮かんでくるまで茹でるだけです。
茹でた白玉は水にとっておきます。白玉は時間を置くと固くなるので出来立ての、しかもほの温かいところを食べるのが理想です。ただ、冷蔵庫に入れて固くなった白玉も茹で直すともとの状態に戻るので心配は無用です。
冷やし固まったものがこちらです。
包丁で四角に切ります。あんみつの寒天のおいしさは口のなかで角を一瞬感じてから、溶けていき、香りがふっと感じられる瞬間にあります。そのため四角く切るのが基本なのです。
器に切った寒天を盛り、あんこと白玉を添えます。好みの量の黒蜜をかけていただきます。好みでアイスクリームを添えるとクリームあんみつという名前に変わります。今回は寒天、黒蜜、白玉を手作りしましたが、黒蜜を買ってくれば工程が減りますし、白玉の代わりに市販の餅を茹でる、あるいは餡ころ餅を買ってきて添える手もあります。そうすれば水で戻した寒天を水、砂糖と火にかけ、それを冷やし固めるだけです。そう考えるとあんみつは手軽なデザートと言えます。
あんこが余ったら水羊羹にするのはいかがでしょう。水羊羹も寒天と基本は同じ。水に寒天とあんこを溶かし、冷やし固めるだけです。
◼️水羊羹
<材料>
あんこ 250g
水 600ml
粉寒天 1/2本
やはり、水の量多め、寒天は控えめでつくります。
水で戻した寒天と水を鍋に入れ、しっかりと沸かします。
ボウルのあんこに少しずつ混ぜ入れ、溶かします。
ザルなどで濾して滑らかにします。この工程は省略することもできます。
流し缶に流し、冷やし固めます。流し入れるときの温度が重要で40℃〜50℃くらいが目安です。寒天はこの温度くらいで固まりはじめるので、この温度まで下げてから流し入れることで餡の粒子と寒天の部分の分離が防げます。
冷蔵庫で冷やし固めた状態がこちら。
あとは適当な大きさに切り分けるだけです。このように考えると和のお菓子はシンプル。手軽に挑戦できます。ちなみに寒天はそれ自体にカロリーがなく、健康にもいいことから注目される食材の一つ。水の量を増やして固めることで、伝統的な食材の魅力を再発見できます。
Photo&Text : Naoya Higuchi