2024.10. 28 UP
日本の食は変化し続けていますが、特に目立つのが果物摂取量の減少。今年、厚生労働省は健康寿命の延伸を目指し「健康日本21」(21世紀において、日本に住む1人1人の健康を実現するための国民健康づくり運動)を10年ぶりに改定しましたが、そこで目標として掲げられたのが「果物を一日200g摂取すること」です。
この目標に対しての現状は「国民健康・栄養調査」の最新結果によると80代でこそ一日151.3gと高いですが、40代はもっとも低く42.4g、30代でも44.8gという状況。(数字は平均)果物は元気な高齢者ほど多く食べ、若い世代ほど口にしない、という傾向が続いています。もちろん食べ過ぎは体に毒ですが、果物にはビタミンやカリウム、食物繊維やポリフェノールなど栄養を豊富で、病気のリスクを下げるので、適切な量を食べたいところ。
秋は果物がおいしい季節です。今日はそんな果物を使った白和えをご紹介します。白和えというと古い料理に思われますが、果物を使ったそれは和食店の定番。果物の甘みを生かしたモダンな味わいです。
◼️白和えの衣
<材料> 作りやすい分量
木綿豆腐 1/2丁
練りゴマ 大さじ1
白みそ 大さじ1
しょう油 小さじ1/4
味のポイントは練りごまです。ごまは豆腐に油脂分を足し、チーズのような濃厚さを出します。白みそを加えるとさらにリッチな味わいになりますが、なければ省略できます。その場合は少々の塩で塩気を補ってください。
すべての材料をフードプロセッサーかハンドミキサーなどで混ぜます。木綿豆腐であれば水切りする必要はありませんが、家に絹ごし豆腐しかない場合は水切りして使ってください。
昔の白和えはすり鉢とすりこ木を使って豆腐を練り合わせる作り方が一般的でした。今でもフードプロセッサーを使ってはいけない、という職人さんもいますが、果物の白和えに関しては文明の利器を活用したほうがおいしいようです。
その理由は豆腐に含まれる脂肪にあります。豆腐の濃厚な味わいは大豆に含まれる脂肪に由来しますが、豆腐の場合はタンパク質がそれを覆った状態で存在しています。フードプロセッサーかミキサーにかけるとその構造が壊れ、口に入れたときに舌が脂肪球の存在を感じられる状態になるのです。
この状態にして冷蔵庫で保存もできますが、あまり長期間は持たないので、翌日には使い切りましょう。
基本の白和えとして柿と春菊の白和えからご紹介しましょう。
◼️柿と春菊の白和え
<材料> 2人分
柿 1/2個
春菊 60g
しょう油 小さじ1/2
白和えの衣 40g〜50g
ゆかり 好みで
春菊を使っていますが、ほうれん草でも同様につくれます。
鍋にたっぷりの湯を沸かし、春菊を20秒ほど茹でます。
冷水にとり、優しく水気を絞ります。
今回は4cm長さに切ります。
春菊に下味をつけておきます。しょう油を加えて、さっと和えましょう。このときの塩加減はやや強めに。この後、まろやかな白和えの衣と甘い柿と合わせるので、あまり薄味にすると全体の印象がぼやけます。
柿は1.2mm角に切り、白和えの衣40g〜50gを加えてさっと和えます。白和えの衣の量は目安の分量を出していますが、全体に絡まれば問題ありません。春菊の量や柿の大きさにあわせて量は調整するといいでしょう。
濡らした布巾で茶巾に絞ります。出来上がり。アクセントにゆかりを振りましたが、胡麻でもかまいませんし、菊の花を散らすのもおしゃれです。滑らかな白和えの衣に甘い柿、それに春菊の塩気が渾然一体となった仕上がり。
甘さ、塩っぱさ、濃厚さといった異なる味が一つになる、それが和え物の醍醐味ですが、果物だけのシンプルな白和えも現代的でいいものです。次はシャインマスカットの白和えを作ってみましょう。
◼️シャインマスカットの白和え
<材料> 2人分
シャインマスカット 120g
白和えの衣 40g
シャインマスカットの選ぶ目安は粒の大きさと色です。粒が大きいものは高価ですがジューシーで甘いものが多いでしょう。色については黄色いものが熟しているので甘く、マスカットらしく緑色をしていたら、さわやかな酸味があります。そのため、白和えには粒が大きすぎず、緑色のものが向いているでしょう。
大きい粒は4等分に、小さい粒は半分に切って、白和えの衣で和えるだけです。
これで出来上がり。黒ごまを振ってみましたが、そのままでもいいかもしれませんし、さきほどのようにゆかりを振ってもいいかもしれません。マスカットの甘さと酸味を豆腐のまろやかさを受け止め、シャンパンなどのスパークリングワインが合う味に仕上がります。
写真は左から洋梨、柿、シャインマスカットですが、もっと現代的に仕上げる場合は白和えの衣を一口大に切った果物の上にのせるだけでいいのです。食事の前のおつまみとして提供するのはいかがでしょうか。こうして食べると豆腐が大豆から作った植物性のチーズだと理解できると思います。
Text & Photo Naoya Higuchi