ふたつのシチューで温まろう。〜樋口直哉さんの『料理のツボ』〜

2024.11.23 UP

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つい先日までの暑さが嘘のようですね。秋を通り越して一気に気温が下がりました。寒くなったら急に食べたくなるのがシチューです。ホワイトソースを体得したら、色々な料理に展開できますよ。

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冬の寒い日にはぽってりとしたシチューがおいしいもの。ホワイトソースを使ったクリームシチューをご紹介しましょう。ホワイトソースは洋食の基本ですから、憶えておくと一生役に立ちます。

 

シチューに限らず、洋食の要は「とろみ」です。とろみがあることで料理全体の厚みが増し、舌に滞留する時間が長くなるのでうま味や風味も強く感じます。ただ、料理によっても適切なとろみ加減は異なりますし、温度や作ってからの時間などでも濃度は変わってきます。そのため、レシピ通りだけではなく、つくる人が調整する必要があります。ここに洋食の難しさがあります。

 

◼️野菜だけのクリームシチュー

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<材料> 4人分

玉ねぎ 1個(200g程度)

にんじん 1本(150g程度)

じゃがいも 1個(180g〜200g)

オリーブオイル 大さじ1

水                      300ml

塩       小さじ1/2

 

バター     40g

小麦粉     40g

牛乳      400ml

 

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野菜だけでつくるクリームシチューです。もちろん、ベーコンを入れてもいいですし、鶏肉を入れればチキンシチューに……という具合にアレンジできます。でも、最初は野菜だけで作ってみてください。冬野菜の甘さに驚くはずです。

 

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玉ねぎ、にんじん、じゃがいもは皮を剥き、7〜8mmの大きさに切ります。

 

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厚手の鍋にオリーブオイルをひき、細かく切った野菜を入れ、ひとつまみの塩(分量外)を加えて、軽く混ぜます。蓋をして、弱火にかけましょう。

 

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時々、混ぜながら15分、蒸し煮にします。この段階で野菜を蒸し煮にすることで味に凝縮感が出ます。例えば煮詰めたジャムを水で薄めてもジュースになりません。はじめに味を凝縮しておくと、薄めてもその風味が残るのです。

 

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充分に火が通ったところで水300mlを加えます。弱火で5分ほど蓋をした状態で加熱を続け、さらに野菜に火を通します。

 

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塩で味付けしましょう。この後、ホワイトソースを加えてとろみをつけますが、とろみをつけた液体に塩は溶けづらいので、この段階で味付けしておくと具合がいいのです。

 

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それでは基本のホワイトソースの作り方を解説していきましょう。基本的な配合はバター1:小麦粉1:牛乳10の割合。さっぱり目に仕上げたい場合はバターをサラダ油に置き換えたり、とろみを減らしたければ小麦粉を減らしたりします。

 

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ステンレスの鍋にバターを入れ、中火にかけます。鍋をゆすりながらバターを溶かし、泡立ってきたら小麦粉を一気に加えます。

 

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ゴムベラや木べらで混ぜながら火を弱めて、小麦粉にしっかりと火を通していきます。この状態をルーと呼びます。バター、小麦粉、牛乳を混ぜてから電子レンジで加熱する作り方も見かけますが、仕上がりの味は違います。ホワイトソース作りにはルーをつくる工程が重要だからです。

 

とろみは片栗粉やコーンスターチでもつけることができますが、小麦粉とは違います。鍵を握る成分は小麦粉に含まれるタンパク質です。小麦粉とバターを炒める過程で、デンプン分子の一部がデキストリンに変化し、デキストリンは糖に分解されます。この糖が小麦粉のタンパク質とメイラード反応を起こし、芳香性化合物が生成されます。これがホワイトソースの風味で、ここにルーを充分に加熱する意味があります。

 

小麦粉をよく炒めないでホワイトソースをつくると、デンプンの一部が分解されないため、粘りが強くなります。また、よく炒めることで小麦粉の粒子のひとつひとつが油脂に覆われた状態になるので、この後の工程でダマができにくくなります。

 

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火を止め、牛乳を一気に加えます。

 

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泡立て器でルーを溶かしましょう。よくある作り方は『少しずつ牛乳を加える』というものですが、その方法だとダマになるリスクがあります。ルーを完全に溶かしてから加熱したほうが合理的です。ルーが溶けたことを確認したら中火にかけます。

 

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混ぜながら加熱していきます。牛乳には乳化作用があるので、ルーはごく細かいコロイド粒子として分散し、滑らかな状態になります。また、デンプンが牛乳に分散するのでしっかりとしたとろみがつきます。鍋の底から泡がブツブツと上がってきたら出来上がりです。

 

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出来上がったホワイトソースをさきほどの野菜スープに加えます。混ぜながら中火にかけて沸かせばすぐに溶けるはずです。この段階で味見をして、塩気を確かめます。ちょうどいいと思いますが、足りない場合は塩を足すか、粉チーズなどで塩気を補ってもいいでしょう。

 

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野菜だけで作るとやさしい甘さを感じるはず。温め直すときは水か牛乳を少し足します。時間が経つとデンプンが水分を吸うので、濃度が強くなるからです。

 

 

さて、ホワイトソースを使ったシチューは洋食の定番ですが、フランス料理では生クリームで鶏を煮込む手法があります。生クリームは牛乳よりも高価ですが、材料や工程が少なくてもおいしくつくれる、というメリットがあります。

 

◼️鶏のフリカッセ

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<材料> 2人分

骨付き鶏もも肉 2枚

玉ねぎ     1/2個

にんにく    1片

白ワイン    50ml

生クリーム    200ml(乳脂肪分45〜47%)

マッシュルーム 6個

 

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シンプルな材料ですが、生クリームのコク、ワインの酸味、鶏肉とマシュルームのうま味、玉ねぎとにんにくの甘みと香りとすべての要素が入っています。

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まずは鶏肉の下ごしらえから。骨付きのもも肉がなければ、もも肉でもかまいません。骨に沿って裏側から切り目を入れます。この工程で鶏もも肉の厚みが均一になるので、火が通りやすくなります。

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関節に包丁を入れ、2つに分けましょう。重量の1%の塩を振り、15分置きます。

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そのあいだに玉ねぎもクシ形に切っておきましょう。マッシュルームも4等分に切ります。

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サラダ油少々(分量外)をひいたフライパンを中火にかけ、皮目を下にした鶏肉を入れます。

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皮目に焼き色がついたら裏返し、火を弱めて反対側も同じ時間だけ焼きます。この段階である程度、じっくり火を通すことで鶏肉の香ばしさが生まれ、それがソースに溶け込むのでよりおいしくなります。鶏の全面に焼き色がついたら煮込み鍋に移します。

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同じフライパンでマッシュルームと玉ねぎ、にんにくを入れ、中火で炒めます。

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やはり、ある程度の焼き色がつき、味が凝縮するまで炒めるのがコツです。白ワインを注ぎます。

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白ワインを加えたら鍋底を木べらなどでこそぎ、半分ほどになるまで煮詰めます。ここで白ワインを煮詰めないと水っぽい仕上がりになるので、ここが勝負どころ。

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鶏が入った煮込み鍋にフライパンの中身を移し、生クリームを注ぎ、中火にかけます。

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沸いてきたら火加減を弱火に落とし、蓋をして15分煮ましょう。

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15分経ったら蓋を外し、さらに5分煮ます。ソースに適度なとろみがついたら出来上がりです。

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濃度はソースの背にまとわりつくくらいが目安です。もしも、煮詰め具合が足りなければ鶏肉を取り出し、強火にかけて煮詰めるといいでしょう。

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塩加減は鶏肉にしっかりと塩味をつけているので足す必要はないはず。好みで胡椒を振ってもいいでしょう。じつは日本のクリームシチューはこの鶏のフリカッセを日本風にアレンジしたもの。ふくよかな香りとコクのあるソースが意外にもごはんに合う味です。

 

Text&Phpto : Naoya Higuchi

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