2025.2.21 UP
懐かしのデザート、ババロア。子供の頃、家で作って食べた、という方もいるのでは。今は様々なお菓子が買える時代ですが、こうしたクラシックなデザートは自分で作らないとなかなか楽しめません。
ババロア=バヴァロワはフランス語で「(ドイツの)バイエルン地方の」という意味の言葉で、バイエルン公国の華やかな時代を思わせるデザートです。当時は形状から「フロマージュ・ババロア」(チーズババロア)と呼ばれていましたが、今ではババロアと呼ばれるのが一般的です。
似たお菓子にアーモンドミルクや牛乳に生クリームを加え、ゼラチンで固めたブラマンジェがありますが、ババロアは卵黄を加え加熱したカスタードソース(アングレーズソース)をベースとするのが特徴です。材料自体はシンプルなので、ゼラチンの扱いや温度管理に注意をすれば誰でもおいしくつくれます。今回は季節の柑橘を添えたバリエーションもご紹介します。
◼️ババロア
<材料>
卵黄 2個
グラニュー糖 40g
牛乳 220ml
ゼラチン 5g
ブランデー 12ml(大さじ1)
生クリーム 100ml(乳脂肪35%)
材料はシンプル。お菓子作りはまず器具と材料を一箇所に集めるところからはじめましょう。慣れてくれば意識せずともできるようになりますが、慣れないうちは慌ててしまうので、まずは作り方をよく読んで、作っている最中にボウルがない、泡だて器がない、という状態にならないように落ち着いてつくりましょう。
ボウルに卵黄を溶き、砂糖を加えて混ぜます。コツは砂糖を加えたらすぐに混ぜること。卵黄に砂糖を加えて放置すると、卵黄の水分が砂糖にとられて固まってしまい、溶けなくなってしまうからです。
昔はここで「空気を含んで白っぽくなるまで泡立てる」というのが基本でしたが、ほとんど意味がないので、泡立てる必要はありません。卵黄に砂糖が混ざったら次の工程に進みましょう。
小鍋に牛乳を入れ、中火にかけて沸騰直前まで温めます。沸騰すると吹きこぼれてしまうので注意。ふつふつとする程度で充分です。
卵黄と砂糖を混ぜたボウルに、熱くした牛乳を注いでいきます。右利きの場合は右手の泡だて器を混ぜながら、左手に持った鍋から牛乳を少しずつ注いでください。混ぜながら加えることで卵黄に火が通って固まってしまう失敗を回避できます。
ボウルの中身を小鍋に戻し、ゴムベラで底をこそぐように混ぜながら弱火にかけて、卵黄に火を通していきます。火を通しすぎると卵黄が固まって、スクランブルエッグになってしまうので注意しましょう。
昔の料理本には「すこしとろみがつくまで」加熱するように指示がありますが、完全にとろみがつく83℃〜85℃まで加熱すると卵の風味が強く出ます。それでも問題なくつくれますが、その前に加熱を止めることで濃厚さはありつつもクドくない仕上がりになります。この「すこし」という曖昧な部分が職人の技術でした。
しかし、今では温度計が安価に手に入ります。究極のババロアをつくるための加熱温度は78℃。それを守るだけで、誰でもおいしいババロアをつくることができます。温度計が家にないという場合は湯気が上がってきて、やはり軽くとろみがついたくらいが目安になりますが、温度計を買ったほうが安全です。
78℃になったら鍋を火から外し、鍋底を濡れ布巾などに当てて加熱を止めます。この段階でカスタードソースの出来上がりです。ここに粉ゼラチンを振り入れて、ゴムベラで混ぜながら溶かします。昔、粉ゼラチンは水でふやかしてから湯煎にかけて溶かしたものを混ぜるのが一般的でしたが、今ではふやかし不要の顆粒タイプが主流です。
ブランデーを加え、氷水を当てたボウルに移し、冷やします。この段階で、ゼラチンの溶かし残りがないかを確認してください。もしも、ゼラチンが残っていれば冷やす前にゴムベラで混ぜて溶かしてから冷やします。
別のボウルで生クリームを泡立てます。生クリームを泡立てずに加えるとブラマンジェのようなツルンとした食感になり、逆に泡立てすぎるとババロアではなくムースになってしまいます。この泡立て具合が成否を分けるポイント。プレーンヨーグルトくらいのとろみがつくまで泡立たら、冷やしたカスタードソースと合わせていきます。
さて、カスタードソースはどれくらい冷やせばいいのでしょうか。よくお菓子の本には「軽いとろみがつくまで冷やす」と書いてありますが、やはり温度を基準にすれば失敗を回避できます。ゼラチンを加えた液体は20℃以下になると固まりはじめ、14℃以下まで冷やすとあきらかな濃度がついてきます。ゴムベラで混ぜながら温度計で11℃〜13℃になったことを確認しましょう。
軽く泡立てた生クリームを合わせていきます。
ボウルの底を氷水から外し、ゴムベラで全体が均一になるまで混ぜます。ババロアの失敗パターンには「カスタードソースと生クリームが二層に分かれてしまった」というものがありますが、カスタードソースを適正な温度まで冷やすことで回避できます。
好みの型に流し、ラップをかけて冷蔵庫で冷やし固めます。目安は3〜4時間です。
固まったら盛り付けていきましょう。型の底を50℃の湯に一瞬浸けると外れやすくなります。
型に皿をかぶせ、ひっくり返してから上下にふるときれいに外れます。
出来上がり。完璧なババロアをつくるために昔はそれなりの技術が必要でしたが、今では温度計と顆粒ゼラチンの普及で誰でもかんたんにつくれるようになりました。
そして季節の柑橘を加えましょう。
ババロアはまったりとしたデザートですが、そこに酸味のあるフルーツを添えると魅力がワンランクアップします。
季節の柑橘を用意しました。柑橘は種類も豊富で、黄色から橙色まで色や大きさも様々。今回はこのなかから甘平というポンカンの一種を使ってみましょう。それだけでは酸味が強いと思うフルーツもババロアと合わせるとちょうどいい具合になります。
柑橘の皮の剥き方です。頭とおしりを落とします。
包丁で縦に皮を切り落としていきます。
薄皮と身のあいだを狙って包丁を入れます。
これで薄皮から身が外れました。
はじめに入れた包丁をひねるようにすると無駄なく身から剥がせます。
残った身は手で絞れば無駄がありません。こうしてできたのが柑橘のマリネ。ミントやディルなどのハーブを加えるとさらにおいしく食べられます。
柑橘の実をババロアに添え、果汁はソースにしましょう。
写真はミントの葉をそえました。酸味のあるフルーツとババロアの組み合わせが絶品です。ババロアは冷凍もできます。食べるときは冷蔵庫で2〜3時間ほど解凍するといいでしょう。柑橘のほかにイチゴなども合いますし、夏にはマンゴーやパイナップルなどのトロピカルフルーツ、秋にはぶどうなどもいいでしょう。基本を知ると様々に応用できます。
Text&Photo : Naoya Higuchi