2025.4.4 UP
ミートローフは調味料などをあわせた挽き肉を大きな塊で加熱した料理。外食ではあまり見かけませんが、昭和の頃には料理本に掲載されている定番料理の一つでした。現在でもオーブンに付属しているレシピ集などでは紹介されていますが、普段の材料で豪華な一品になることから需要があったのでしょう。
ミートローフのローフ=loafとは長方形のパンのこと。この形のパンを焼くために使用する焼き型をローフ型と呼び、その型で挽き肉を焼いたものがミートローフです。
というわけで、本来はミートローフをつくるにはローフ型が必要です。とはいえ、わざわざ買うのも大変ですし、一般的なローフ型(製品によって違いはありますが18cm×8cm×高さ6cm程度)でつくると4〜5人前の分量になるので、今回はラップで成形し、オーブンではなくフライパンで蒸し焼きにします。現代風にアレンジしたミートローフのレシピです。
◼️ミートローフ
<材料> 2〜3人分
牛豚合いびき肉 250g
塩 小さじ1/4
玉ねぎ 1/2個
生パン粉 20g
トマトケチャップ 大さじ1
卵 1個
豚バラ薄切り肉 100g〜120g
茹で卵 2個
酒 大さじ3
赤ワインソース
赤ワイン 100ml
みりん 100ml
しょう油 大さじ1
トマトケチャップ 大さじ1
片栗粉 小さじ1(同量の水で溶く)
<作り方>
ミートローフには合いびき肉を使います。調理科学に詳しいアメリカのフードライター,
J. KENJI LÓPEZ-ALT(J・ケンジ・ロペス・アルト)によるとアメリカではミートローフミックスという挽き肉が市販されているそうで、それは牛肉、豚肉、仔牛肉のブレンドとのこと。
牛肉と豚肉では筋繊維の長さが異なります。牛肉は筋繊維が長く、挽き肉にしてもしっかりとした噛み応えが残ります。一方の豚肉は牛肉と比べると筋繊維が短いので、挽き肉にすると滑らかな食感になります。これをブレンドすることで、食感のいいミートローフになる、というわけです。
日本では合いびき肉という便利な挽き肉が売られているので使わない手はありません。ちなみにアメリカで売られているミートローフミックスに仔牛肉が入っているのは、ゼラチン分を加えることで、冷めてもおいしく食べるための工夫です。焼きたてを食べるのであれば日本では普通の合いびき肉でいいと思いますが、冷めてから食べる場合は塩と同じタイミングで、粉ゼラチンを5gほど足すといいでしょう。
ハンバーグと同じで、挽き肉にまず塩を加えるのが基本です。塩を加えて混ぜることでタンパク質の一部が溶け、肉同士がつながります。また、溶け出したタンパク質が肉汁を抱え込むので、ジューシーになるのです。まず、塩だけを加えて軽く練っておきましょう。とはいえ、肉の温度が上がると決着力がなくなり、肉だねが崩れる原因になるので、ゴムベラなどで混ぜるのが無難。手で軽く混ぜてから冷蔵庫で30分以上寝かせると、そのあいだに塩が溶け、タンパク質が引き出されるのでよりベターです。
玉ねぎはみじん切りにして、600wの電子レンジで1分30秒加熱し、冷蔵庫でよく冷やしておきます。ハンバーグの場合は生の玉ねぎを加えても上手にできますが、ミートローフの場合、玉ねぎから出る水気によって肉だねが崩れる原因になるので、あらかじめ加熱しておくのがお勧めです。
ゆで卵も作っておきましょう。卵は冷蔵庫から出したてを使い、沸騰した湯で7分茹でます。この状態だと黄身はまだ生で、とろりとした状態。冷水で冷やし、スプーンなどで殻にヒビを入れたあと、流水にあてながら慎重に殻を剥きます。
昔ながらのミートローフでは硬茹で卵を巻き込むのが普通でしたが、この部分は現代的にアップデートしました。
肉だねにパン粉、ケチャップ、加熱した玉ねぎ、溶き卵を加えて混ぜます。パン粉は流れ出てくる肉汁を吸収する役割があるのでやや多めです。卵の割合がやや多い配合ですが、卵は肉の粒子のあいだを埋め、滑らかな食感に貢献するほか、やはり流れ出る肉汁を抱え込みながら固まるので、ミートローフでは必要な材料です。
肉だねを混ぜ合わせていきます。すでに挽き肉に塩を加えて結着力は引き出しているので、あとから加える材料はそれを弱め、ふんわりとした食感にするために加えています。全体が混ざればOKで、必要以上にこねる必要はありません。
形を保つために豚バラ薄切り肉で巻きます。薄切りのベーコンを使ってもいいでしょう。敷いたラップの上に少しずつ重なるように薄切り肉を並べましょう。
そのうえに肉だねの半量をのせ、表面に小麦粉をまぶした卵を並べます。
残った肉ダネで卵を覆います。この時、なるべく隙間ができないように注意。
ラップを持ち上げるようにして、肉だねを丸めます。ロールケーキをつくる要領で巻締め、なるべく空気を抜きます。ここで丁寧に作業することで卵と肉だねがきちんとくっつき、あとから切りやすくなります。
ラップの両端を絞り込めば出来上がり。余裕があれば冷蔵庫のチルド室に10分ほど入れると形がより整います。
ラップを外し、中火にかけたフライパンで肉だねを焼いていきます。
中火で2分も加熱していると焦げ目がついてくるので、弱火に落とし、転がすように焼いていきます。
全面に焦げ目がついてきたら酒大さじ3を加えて10分蒸し焼きにします。分量外ですが肉だねに入れた玉ねぎの半分が余っていたので、1cm厚に切って加えました。
すっかり火が通っています。串などを刺して、透明な汁が出てくれば安心です。肉だねを板などに取り出してください。
フライパンに残った肉汁を利用してソースをつくります。赤ワインとみりんを加えて強火で煮詰めましょう。
半分くらいに煮詰まったところにしょう油、ケチャップを加えて、水溶き片栗粉でとろみをつけたら出来上がり。
ミートローフは少し冷めてからのほうが切りやすいです。端からカットして、皿に盛り付けます。
クレソン(分量外)などを添え、ソースをかけたら出来上がり。21世紀式ミートローフは卵の黄身が半熟で、やわらかな食感が特徴。できたてはごちそうです。残ったミートローフは冷蔵庫で冷やしてもおいしく食べられます。
残ったミートローフはサンドイッチにするのがおすすめ。好みのサラダ野菜、ミートローフ、ソースとバターを塗ったトーストでサンドします。この時、フライパンで両面を焼いてもいいでしょう。
Text&Photo: Naoy Higuchi