2025.6.2 UP
白雨に 踊り出でけり ところてん 森川許六
旅先の茶店で一服していると突然激しい雨音がします。見れば視界が真っ白になるほどの雨。白雨(しらさめ・はくう)とは夏の夕立のことで、西の明るい空から降ることから白雨といわれるようです。許六はその様子を、あたかも心太(ところてん)が天突きから押し出されてくる瞬間の様と感じたのでしょう。
許六の生きた江戸時代、「ところてん」は庶民の代表的な涼菓でした。白雨もまた、夏に涼を与えてくれる自然の恵み。この句は、そうした江戸の夏の一瞬を切り取っています。「ところてん」という江戸の食文化と「白雨」という自然現象が「踊る」という言葉を介して相呼応しています。
「ところてん」は海藻の天草を煮溶かして冷やし固めた食材。漢字で「心太」と書いて「ところてん」と読むのは江戸ことば独特の謎かけでしょうか。古代、天草は煮凝る性質から「凝海藻(こるもは)」と呼ばれ、「凝る」を語源とする「心」と、太い海藻という意味の「太」という字をあて、「心太(ココロフト、ココロブト)」が最後にトコロテンと呼ばれるようになったとの説があるようです。
江戸では酢醤油や二杯酢などで食べられてきましたが、関西では黒蜜や黄粉をまぶして間食やデザートとして食べるのが一般的。この食べ方は、京都の貴族から庶民に広まったということですが、大阪に砂糖の卸業者が集まっていたのが、関西で甘味として普及した理由のようです。関東では「ところてん」を甘味としてはあまり食べませんが、寒天には黒蜜やきな粉をまぶして食べます。寒天は「ところてん」を凍らせ、乾燥させたものなので、味は似ているのかもしれません。が、食感は大きく異なります。江戸といえば、そば文化。江戸の人たちは「ところてん」を、そばのように喉越しでつるりと食べるのを好んだのかもしれません。
作者の森川許六は蕉門十哲の一人であり、六芸「俳諧、絵画、書、剣、槍、馬術」に優れていました。許六という号は芭蕉の命名。許六が蕉門を出て彦根に帰る時、芭蕉が与えたという「許六別離の詞」の中には「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」という言葉があり、現代に語り継がれる名言として知られています。
※蕉門の十哲・・・松尾芭蕉門下の十人の優れた俳人のこと。
今月は、喉越し爽やかな夏の涼菓をご紹介します。
<ISETAN MITSUKOSHI THE FOOD>国産天草使用ところてん(120g×2)376円
本館地下1階 フレッシュマーケット
国産天草を100%使用し、箸で持っても切れないほどのコシと食感が特徴です。添付のたれもくせがなくサッパリと仕上げました、おかずの一品として召し上がっていただくだけでなく、きな粉や黒蜜をかけて甘味としてもおいしくお召し上がりいただけます。
<京菓匠 笹屋伊織>くずきり(3本入)1,296円
本館地下1階 甘の味
涼しいひとときを届けてくれる、笹屋伊織のくずきり。
つるりとした食感、爽やかな味わい、見目の涼やかさが、ひとときの涼を演出する夏の銘菓です。
竹型の容器に入ったくずきりは、突き棒で押し出して、作る楽しさを味わえるのも魅力の一つ。たっぷりの氷と共によく混ぜて、黒蜜をかけてお召し上がりいただくのがおすすめです。常温での保存が可能ですので、夏のギフトにもおすすめです。
販売期間:販売中~8月中旬
<鶴屋吉信>本蕨(小倉、こしあん、抹茶)(9個入)3,024円
本館地下1階 甘の味
なめらか“ぷるぷる”食感に、風味豊かな小倉、抹茶、こしの3種のなめらかなのどごしを楽しんで。抹茶は京都府産宇治抹茶を使用。希少な「本蕨粉」などを使用して、水ようかんともゼリーとも異なる独特の食感に仕上げました。なめらかな生地ののどごしは、どなたさまにもお召し上がりやすく。夏にうれしい、涼やかな和菓子です。
販売期間:販売中~8月下旬
<織り果>琥珀の流星(4個入)3,348円
本館地下1階 甘の味
大粒の南高梅の甘露煮をひと粒まるごと、キラキラ輝く金箔をちらして。香り高い梅酒とさっぱり梅果汁でし上げた夏のゼリーです。
<織り果>清水白桃の寒天よせ~つぶあんを添えて~(1個)1,404円
本館地下1階 甘の味
清水白桃の美味しさを寒天に閉じ込めて。清水白桃と蜜入り寒天につぶあんを添えていただく夏の和のデザートです。
販売期間:展開中~7月中旬
<両口屋是清>夏ささらがた4個入(れもん・わかもも・ピンクグレープフルーツ・鳳梨(ぱいなっぷる) 各1個)1,426円
本館地下1階 甘の味
さわやかな檸檬風味の「羊羹 れもん」、若い桃のみずみずしさ香る「錦玉羹 わかもも」、昨年大好評だった「羊羹 ピンクグレープフルーツ」、果肉の食感が楽しい「羊羹 鳳梨(ぱいなっぷる)」
販売期間:展開中~6月末
<老松>葛ながし(北野の梅 、波照間黒糖)単品 各594円(3本入)1,998円
本館地下1階 甘の味
梅は香りのよい物を、黒砂糖は波照間島産にこだわった、本葛使用の葛切りです。
別添えの梅蜜・糖蜜をお好みで加えてお召し上がりください。
販売期間:展開中~8月中旬頃 ※なくなり次第終了となります。
<老松>梅酒羹(1棹)1,728円
本館地下1階 甘の味
北野天満宮の梅で調製した梅酒を使用した琥珀羹。芳醇な梅酒の香りと爽やかな甘さが広がる華やかな一品。
※価格はすべて税込です。
※画像は一部イメージです。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
Text : FOOD INDEX編集部