牛乳の種類はいっぱいあります。皆様は使い分けることができていますか?そのまま飲む牛乳、カフェオレに入れる牛乳、スープを作るときの牛乳。「トリセツ」を読んだら、たくさん並んでいる牛乳との付き合い方がわかります。
牛乳は冷蔵庫に1本、常にストックしておきたい食材です。牛乳は、液体でありながらタンパク質、糖、脂質など豊富な栄養を持つ食べ物で、そのまま飲むだけではなくコーヒーや紅茶に入れたり、料理にも使われます。
2008年に雑誌『ネイチャー』に掲載された論文*によると人類が牛乳を利用しはじめたのは紀元前7000年〜6000年代とされます。じつはそれまでは家畜は肉を食べるために飼われ始め、ミルクを利用するのはずっと後というのが定説だったのですが、土器に残っている微細な有機物(脂肪酸)を調べる技術が進んだことで、それが覆されたのです。
それほど昔からなぜ人は牛乳を利用してきたのでしょうか。その答えは『おいしさ』にあります。一方で、現在の売り場に行くとたくさんの種類の牛乳が並び、違いがわかりにくいのが実情。ここはひとつ、牛乳の種類を復習し、毎日飲んでいる牛乳を見直してみましょう。
まずは「種別」に注目してみる
牛乳のパッケージには「特濃」や「おいしい」といった文句が並んでいますが、まず確認するべきは「種別」の欄です。スーパーの売り場に並んでいる牛乳は以下の6つの種別に整理できます。(種別の分類にはもうひとつ「特別牛乳」というのがあるのですが、名前の通り特別なので今回は最後に別枠で紹介します)
1 牛乳 原料が生乳100%
2 成分調整牛乳 生乳から乳脂肪分や水分などの一部の成分を除去して濃度を調整したもの
3 低脂肪牛乳 乳脂肪分を除去して0.5%以上、1.5%以下の間に調整したもの
4 無脂肪牛乳 乳脂肪分量を0.5%未満まで減らしたもの
5 加工乳 生乳由来の乳製品(あるいは水)を生乳に加えたもの
6 乳飲料 生乳や乳成分を主原料に乳製品以外も加えたもの
料理のレシピに『牛乳』とあった場合は種別「牛乳」のことなので、牛乳を選ぶのがベター。パッケージの裏を確認するのが面倒であればパックの上部に注目してください。
このような凹みはそれが牛乳であることを示しています。これは視覚障害の方にもわかりやすいようにつけられた工夫なのですが、商品が乱立する状況では一般消費者にとっても役に立ちます。
殺菌温度が、使い方を教えてくれます
次に注目したいのが『殺菌温度』です。製品の表や裏に「66℃30分間」とか「120℃2秒」などと書かれているので、簡単に見分けられます。
牛乳はそのままだと雑菌が増えたり、脂肪分解する酵素によって味が劣化する可能性があるので、通常は加熱殺菌されていますが、大きく低温長時間殺菌と高温短時間殺菌、高温瞬間殺菌の3つに分類され、それぞれ味わいが異なります。
牛乳を低温殺菌すると繊細な香りの一部は飛んでしまいますが、酵素や細菌が不活性化して状態が安定し、わずかな硫黄臭と青葉の香り(硫化ジメチルやヘキサナール)が出てきます。これがいわゆるミルクっぽい香りです。
高温短時間殺菌および高温瞬間殺菌では乳清タンパク質の10%が変性するので、香り成分がさらに変化し、バニラやアーモンド、発酵バターのような香りが出てくるのですが、同時に硫化水素ガスが生じ、加熱臭が出てきます。
このあたりを『どう感じるか』は好みによるところが大きく、高温殺菌牛乳しか飲んだことがない人はこの加熱臭を「牛乳の匂い」と感じるようで、例えばアメリカの消費者は高温殺菌牛乳を好む傾向があります。
個人的なおすすめは断然『低温殺菌牛乳』です。低温殺菌牛乳にはかすかな甘さを連想させる香りがあり、タンパク質にダメージを与えない低い温度のためナチュラルで、すっきりした味わいがあります。
もうひとつのポイントとして『ホモジナイズド(均質化処理)』の有無が挙げられます。牛乳は乳脂肪が分散した状態ですが、ホモジナイズドという処理をすることで安定します。逆にノンホモジナイズド(あるいはノンホモ)と書かれている牛乳はこの処理をしていないので、時間を置くと乳脂肪分が浮いて、牛乳部分とクリーム部分に分かれます。
ホモジナイズドされた牛乳とノンホモのもの。どのように使い分ければいいでしょうか? 例えばカフェオレにするのであればホモジナイズドされたもの、そのまま飲むのであればノンホモジナイズドの牛乳をおすすめします。ホモジナイズドすることでアイスコーヒーにしても脂肪が浮きませんし、舌触りが滑らかになり、牛乳の風味は弱くなる=コーヒーの香りが生きるからです。というわけでカフェオレの作り方をご紹介しましょう。
◼️カフェオレの作り方
<材料> 1人分
コーヒー 150ml
牛乳 150ml(タカハシ乳業 ジャージー牛乳)
カフェオレには低温殺菌で、それもホモジナイズドされた牛乳を使います。今回はタカハシ乳業 ジャージー牛乳を選びました。乳脂肪分が高く、リッチな味わいが特徴です。
ところでカフェオレとカフェラテの違いはご存知でしょうか。一般的にカフェオレはドリップコーヒーに温かい牛乳を注いだもので、カフェラテはエスプレッソコーヒーに温かい牛乳を注いだものを指すようです。ドリップコーヒーはやや濃いめに抽出します。
牛乳を温めますが、温度は70℃が目安になります。低温殺菌の項で説明しましたが、牛乳は高温にすると香り成分が変化し、香ばしさが出てきます。高温殺菌牛乳を使う場合はあまり関係がありませんが、せっかく低温殺菌牛乳を使うのであれば温度を上げすぎず甘い香りを生かしましょう。
淹れたてのコーヒー150mlに70℃まで温めた牛乳を注げばカフェオレのでき上がりです。
スープを作るのに向いている牛乳
伊勢丹新宿店の地下食品売り場で3本の牛乳を買ってきました。東毛酪農低温殺菌牛乳63℃はノンホモジナイズドですっきりした味わい。低温殺菌牛乳特有のさわやかな香りもあります。カフェオレに使ったタカハシ乳業のジャージー牛乳は高い乳脂肪分によるリッチな味わいが魅力です。
この2本は牛乳ですが、3本目は蒜山ジャージー低脂肪牛乳1.0といういわゆる低脂肪牛乳です。低脂肪牛乳は栄養分をそのままに、脂肪だけを取り除いたもの。牛乳はおいしいけれど脂肪を抑えたいという人が選ぶ商品ですが、実は料理に使ってもメリットがあります。
◼️かぼちゃのポタージュ
<材料> 2人分
かぼちゃ 正味125g
有塩バター 10g
低脂肪牛乳 100ml
牛乳 適量
パセリ 適量
1 かぼちゃは皮を剥き、3cm角を目安に切る。
2 蓋ができる小鍋に1のかぼちゃと水100mlを加え、中火にかける。沸いたら弱火にし、蓋をして10分加熱する(8分の段階で蓋を開けて中の様子を確認し、水がなくなっていれば足す)
3 低脂肪牛乳とバターを加え、ミキサーにかける。滑らかになったら器に注ぎ、泡立てた牛乳、パセリを添える。
かぼちゃやとうもろこし、さつまいもなどのポタージュにはバターを使うとコクと風味が出ますが、そこに脂肪分の高い牛乳を入れるとクドくなる場合があります。そこで活躍するのが低脂肪牛乳。すっきりした味わいに仕上がります。
低脂肪乳は、泡立てが簡単です
牛乳はカプチーノのように泡立てて使うこともあり、泡立てにはミルクフォーマーという道具を使います。
牛乳を泡立てるにはまず60℃以上、70℃以下に温めるのが基本。加熱することで牛乳の乳清タンパク質(牛乳のわずか1%ほど)の構造がほぐれ、それが空気のまわりに薄層を形成して泡となるからです。脂肪分は泡立ちを悪くするので低脂肪牛乳は泡立ちやすいのが特徴。
ただ、キメが荒くなり、消えやすい、という弱点もあります。これは泡立てるのにはタンパク質が関係していますが、それを安定させるには脂肪分が関係し、泡と泡のあいだに脂肪が入ることで、泡の膜に弾力が生まれ、割れにくくなるからです。とはいえ、温度管理さえ気をつければ低脂肪牛乳も泡立てられますし、さっぱりした味わいが得られます。
まとめると牛乳は3.7や4.5といった乳脂肪分と殺菌温度、この二つで分類できます。あとは様々な種類の牛乳から好みの味わいを探すだけです。ちなみに高温殺菌牛乳と低温殺菌牛乳でプリンを作って比較すると、低温殺菌牛乳を使った方のテクスチャーは滑らかで、有意にやわらかい、という報告もありますが。低温殺菌牛乳はタンパク質の変性が少ないからです。低温殺菌牛乳を温める時は、せっかくの甘い香りを逃さないよう加熱し過ぎに注意してください。僕自身は毎朝、低温殺菌牛乳で作ったカフェオレを飲んでいますが、この使い方は特に差を感じると思います。
Text&Photo:Naoya Higuchi
Photo:Yu Nakaniwa(店頭撮影)
*『Earliest date for milk use in the Near East and southeastern Europe linked to cattle herding』Richard P. Evershedほか 2008
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