“幸せなティータイム”を名古屋から発信し、全国にファンをもつ<カフェタナカ>。グランシェフパティシエの田中千尋さんが自分のお気に入りを厳選したクッキーのアソート缶「レガル・ド・チヒロ」をはじめ、現地に自社管理農園を持つサントメ島のカカオを用いたカカオ菓子などが揃います。
今回の開業にあたり「多くの有名ブランドと肩を並べることに身の引き締まる思いです。伊勢丹新宿店は感度が高く本物を求めるお客さまが集まる場所。私たちのブランドの商品の背景にある物語や熱い気持ちに共感して迎え入れてくださることを楽しみにしています」と語るグランシェフパティシエの田中千尋さん。お客さまとともに自然の恵みや生産者たちに思いを馳せ「ともに生きる」ブランドでありたいという真摯なメッセージを届けてくれました。
グランシェフパティシエの田中千尋さん
<カフェタナカ>を象徴するクッキーのアソート缶「レガル・ド・チヒロ」シリーズは、色とりどりの缶にそれぞれの物語が込められています。美しく整えられた各種クッキーには、コース料理のようにそれぞれの役割があり、スターター的な存在、メインディッシュのような味わい、箸休めのようなリフレッシュの一品とバリエーション豊か。食感や口溶け、余韻の違いを味わえる贅沢な一缶です。これまで発表されてきたアソートは、構成や取り合わせが缶ごとに異なります。
ビジュー・ド・ビスキュイ プティ マクミラン (1缶/31個)3,510円 【伊勢丹新宿店限定】※お一人さま2点限り
今回の伊勢丹新宿店限定缶は「白玉糖のビスキュイ、ゆずのサブレ、抹茶ほうじ茶のプティビズ、ディアマンショコラサントメ、ショートブレッド、サブレ・ナンテ・レザン、マポロン」の7種類。昨年の春、素材を求めて各地に足を運ぶ田中シェフは、高知県安芸郡芸西村で伝統製法によって作られる希少な黒糖の一種である「白玉糖」に出合いました。地元で復興に力を注ぐ人たち、白玉糖の優しくも個性的な味わいに惹かれ、すぐに自身の菓子作りに取り入れることに決めます。
白玉糖と白玉糖を使用したビスキュイ
白玉糖の他にも、西アフリカ・サントメ島のカカオ、高知県馬路村の柚子、山梨県産巨峰。各地の生産者と向き合い、出会った素材を一枚一枚のビスキュイへ丁寧に映しました。爽やかな酸味、やさしい甘み、果実の深み、穏やかなカカオの余韻。土地ごとに異なる個性が静かに響き合う、特別な詰め合わせです。どの順番で味わおうか、そんなひとときもまた、お楽しみいただける一品です。パッケージは、伊勢丹の象徴でもあるマクミラン/イセタン(伊勢丹タータン)で仕上げました。
また、昨年の関西万博では自社で管理するカカオ農園のあるサントメ・プリンシペ民主共和国と共同出展が話題になりました。念願だったサントメ島で農園のリーダーを務める二人の女性、イグナシアさんとファティマさんを日本に招聘する夢も叶いました。彼女たちにサントメ島のカカオがどのように日本のお客様を幸福にしているかを見てもらうことができたのです。<カフェタナカ>の本店では彼女たちと一緒に商品開発も行いました。
サントメ島から招聘したファティマさん(左)、イグナシアさん(右)と。本店で菓子の試作中の様子
パティシエとして、経営者として、働く女性という立場からも精力的に活動する田中千尋さんの菓子作りを、バイオグラフィーとともにご紹介します。
カフェ文化の本場パリで研鑽を積む。喫茶店からカフェのグランメゾンを目指して
愛知県北区上飯田。地方によくあるロードサイドに突如、緑豊かな煉瓦造りの館が現れます。<カフェタナカ>本店。店内には生菓子や焼菓子、パンも販売するパティスリーと従来からの喫茶店の流れを汲んだカフェレストランが併設され、多くのお客様で賑わいます。レトロなカフェレストランには女性同士、家族、カップル、そしてお一人様の姿も。昔ながらの鉄板ナポリタンに舌鼓を打つランチの人々、生ケーキをシェアしながらカフェタイムを堪能する人々、賑やかでバラエティに富んだ光景が広がります。
<カフェタナカ>の前身は田中シェフの父・寿人さんと母・まさ江さんが開業した喫茶店<コーヒータナカ>。開業は1966年でした(創業1963年)。名古屋の喫茶文化は、尾張徳川時代に武人から庶民にも広がった茶の湯が由来とも言われますが、コーヒーにトーストや卵がついてくるという主従逆転のようなモーニングで有名になりました。しかし<コーヒータナカ>は一杯のコーヒーに拘り、当時は珍しかった自家焙煎珈琲のパイオニアとして独自の道を歩みます。小さな頃からコーヒーの香りや店のお客さまの中で育ち、高校生の頃には店で接客のバイトも経験した田中シェフは、父のコーヒーに合う菓子を作ることを目的に21歳でパリへ渡ります。
パリには名古屋の喫茶文化にも通じるティータイムを楽しむ文化がありました。そして高度経済成長期以降の日本が失いつつあった、無駄や利便性に頼らない生活の心地よさがあり、丁寧な暮らしの中には美味しいスイーツとともにティータイムが根付いていました。日本の料理や菓子がヨーロッパの影響を大きく受けた1990年代、田中シェフもまたパリで大いなる刺激を受け、フランス菓子の技術や食文化を2年間学んで帰国します。
1995年、田中シェフの本格的なフランス菓子を店の新たな柱とすべく<コーヒータナカ>は<カフェタナカ>へリニューアル。パティスリーとカフェスペースを分け、当時名古屋では珍しかったテラス席も設け、カフェのグランメゾンへと舵を切りました。
両親の<コーヒータナカ>の面影も大切に、歴史を重ねるようにリニューアルされた店舗
間もなく、フランス菓子の評判は名古屋からその外へ。田中シェフは菓子作りのポリシーについて「こだわりの一つは余計なものを加えずに、素材をどう活かすかということ。素材そのもののおいしさを最大限に引き出すための“シンプルな菓子作り”がモットーです」と語ります。
レガル・ド・チヒロ シュクレ(1缶/55個)5,346円
クラシカルなロゴを箔押した彩り豊かな缶は、初代は職人の手作りによるクラシカルなブリキ缶でした。その職人の引退と共に2代目として誕生したのが現在のレリーフ缶となります。
カカオ、サントメプロジェクトへの挑戦。
そして<カフェタナカ>を語るのに欠かせない素材の一つがカカオ。フランス帰国後から取り組んできたのが、ボンボンショコラやショコラ・ド・パリ(ガトー・ショコラ)などのショコラ菓子です。
鮮度とカカオ感を最大限に活かして作られるボンボンショコラ。フィリングの素材感も引き立つように全体のバランスを組み立てる
国内外の素材産地を訪問するようになっても、なかなか現地を訪れることのできなかったのがカカオでした。現地の治安問題などもあり、ようやくチャンスが巡ってきたのは2007年。エクアドルのカカオ農園で初めてカカオポッドを目の当たりにして、カカオがフルーツであること、製菓材料としてのチョコレートになるまでの発酵など、複雑で長い工程を知り、奥深い魅力に魅せられます。いくつかのカカオ産地を巡り、辿りついたのがサントメ島でした。
2019年に初めて訪れたサントメ島。島で働く女性たちの経済的な自立も助けたいとプロジェクトを立ち上げる。
サントメ・プリンシペ民主共和国は、15世紀の大航海時代にはポルトガル領で、列強の奴隷貿易の拠点でもあった暗い歴史があります。実は、アフリカ諸国で最初にカカオ栽培が試みられた国でもあり、原種に近いカカオの品種が残っていることがわかりました。
ビスキュイ・サントメ・リュミエール~サントメ-トサ~(1缶/30個) 3,240円
「まだまだ知られていないのですが、サントメ島にはアメロナード種のカカオがあります。独特のウッディな香り、完熟したフルーツ香があり素晴らしいカカオです」。
そこで田中シェフはサントメ島のカカオの保護と荒廃したカカオ農園の再生を目指し、そのカカオ農園で働く女性たちの自立支援を目的としたサントメプロジェクトを開始させます。2019年に自社管理の「カフェタナカ希望の有機カカオ農園」を開設しました。
しかし、すぐにコロナ禍に。カカオ農園の女性たちと直接交流できない時間が続きましたが、その間も作業工具の寄贈やオリジナルTシャツ、ビデオレターなどを通じて交流を続け、産地との信頼関係を築いていきました。
辛い時期を乗り越え、サントメ島のカカオ栽培は徐々に広がっています。今年3月に行われたサントメ・プリンシペ共和国と日本の「外交樹立50周年記念イベント」で田中シェフは日本政府からの正式な依頼で特別講演を行いました。現在はカカオの保護育成と生産量の向上を目指し、現地の加工施設の整備も始まりました。
次のステップとして目指したのは、現地で収穫されたカカオや地域の食材を生かして、お菓子の製造から販売までを一貫して行える仕組みをつくること。
カカオ収穫だけに頼る現在の収入源を多様化させ、経済的自立を後押しすることで、継続的な発展につなげたいという考えからです。
「パティシエだからこそ出来ることを」という想いから、田中シェフは現地へ訪問の度に、お菓子作りを直接教えています。レシピや製造工程、衛生管理などを伝え、現地で自立して製造・販売ができるように支援に繋げています。
そしてとうとう、カカオ農園の管理をリーダーとして牽引してきたイグナシアさん、ファティマさんの働きかけもあり、現地のお菓子工房が完成しました。
“希望”と名付けられたサントメ島の自社管理管理農園。オーガニック農法でカカオを栽培する。
「ともに生きる」をテーマに生まれた、2種のクッキーサンド。
優れた素材を求めて国内外の産地や生産者を訪れるうちに「生産者の皆さんと、ともに生きているという想いを強めました。一人一人の生産者さんと対話を重ね、年々変化する収穫の時期などを綿密に連携して<カフェタナカ>のお菓子は生まれます。特に近年は気候変動など地球規模での環境変化、人手不足などから、以前は当たり前であったことが当たり前ではなくなってきました。そんな時代だからこそともに生きていくつながりが大切。素材を”仕入れる”だけではなく、その背景にある文化や暮らし、人々の思いに触れながら、お菓子作りをすること。生産者とお菓子を食べるお客さまを、<カフェタナカ>が作り手としてつなげ、「ともに生きる」ブランドでありたい」と田中シェフは話します。
ビスキュイ・ウィッチ・アンサンブル~レザン&ゆず~(1缶/10個)3,888円【伊勢丹新宿店限定】※お一人さま1点限り
素材や人びとがともに生き、響き合うことを大切に想いながら生まれたのが、このクッキーサンド。商品に使用した巨峰は、大きさや形が揃わず、市場に並ぶことのなかった“規格外”のフルーツ。しかしその味わいは、太陽と大地の恵みを凝縮した、豊かさを宿しています。2 種の新作が織りなす、軽やかで素材感あふれる味わいを、どうぞお楽しみください。コロンとしたフォルムの缶に、生産者の方が手掛ける果樹園をイメージしたデザインを施した缶で登場。
サントメ島の農園の名前は「希望」。スイーツを通じて希望の架け橋を。より多くの橋を架けようと田中千尋シェフは日々奔走しています。「今、この時に仕入れることのできる素材に感謝の気持ちを忘れず、そのおいしさの最大限を召し上がっていただきたい」。伊勢丹新宿店からも、熱い想いとともに幸せなティータイムを届けてくれるでしょう。
Text : ISETAN FOOD INDEX 編集部
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