素材から製法まで “メゾンカイザー仕様”を追求して生まれた、唯一無二の味わい。

2023.3.10 UP

世界20カ国で愛される、世界的なブーランジュリー<メゾンカイザー>。2001年、日本におけるパートナーとして国内第一号店を開店したのは、日本のパン文化のパイオニア「木村屋總本店」の嫡男、木村周一郎さんだった。木村さんが家業を捨ててまで惚れ込んだフランスの伝統的製法と、日本で独自開発したこだわりの素材とは。

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フランスの伝統的製法にこだわり天然酵母で発酵させたパン作り。

パリの“ブーランジュリー”文化を日本に定着させ、現在では国内約30店舗を展開する<メゾンカイザー>。仕掛け人である木村さんは、アメリカ留学でベーキングサイエンスを学んだ後、渡仏し“50年にひとりの天才パン職人”と称されるエリック・カイザー氏に出会い、そのパンづくりに感銘を受けたという。1年ほどカイザー氏のもとで、パン職人として修業後、株式会社ブーランジェリーエリックカイザージャポンを設立した。

「創業当時、日本では横浜海軍カレーやメロンパンブームの真っ只中。そんな時代に、日本人が苦手とする“硬いパンの代表・フランスパン”で勝負するという試みに加え、業界では『<木村屋>のボンボン息子が、経験もないのに』という見方が大半で、「絶対失敗する」と言われていました。心ある取引業者さんから『日本人好みのパンも織り混ぜては』とアドバイスをいただいたりもしましたが、もし日本風のパン屋さんを作るのであれば、エリック・カイザーとやる必要が無くなってしまうんです」

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カイザー氏がこだわった伝統的製法は、低温で長時間発酵させたパン生地をしっかり焼き込むこと。本場パリの味を伝えるフランスパンは、とうもろこし粉を合わせた黄色い打ち粉を使用することで、パリッと香ばしく仕上がるのだそう。

カイザー氏に出会い、味はもちろん、作り方や発酵方法などこれまでのパン作りに対するアプローチが全く異なることに衝撃を受けたという木村さん。

19世紀に登場したイースト菌は、効率よくパンを膨らませるものの、小麦本来の香りを消してしまう。イースト菌登場前のフランスの伝統的製法にこだわって、天然酵母による発酵でパン作りをしていたのがカイザー氏だった。

また、伝統的な製法の肝となるルヴァン酵母を毎日継ぎ足すためには、昼夜関係なく2時間おきに粉と水を正確に混ぜるなど、職人の手間や体力的な負担が多かったため、カイザー氏は、ルヴァン酵母を培養するための専用機「ルヴァン フェルメント」を開発。徹底した温度管理のもと、安定した天然酵母の管理を可能にし、労働環境の向上にも一役買った。

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池袋店の工房を執り仕切る新井 匠さんがチェックするのは、液化天然酵母を培養するための専用機「ルヴァン フェルメント」。

 

 

「初めて“出口”を決めて、“入口”を作り込んだ」 オリジナルの小麦粉とバター。

さらに<メゾンカイザー>が革新的だったのは、自分たちのパンに合わせたオリジナルの小麦粉とバターを製造したことだ。

 

「日本のパン屋さんはたいてい、製粉会社にもともとある小麦粉を仕入れてパンを作っていたんですね。要は、“入口(素材)が決まってて、出口(商品)をみんなで模索していく”流れ。そこで<メゾンカイザー>では初めて、“出口(商品)を決めて、入口(素材)を作り込んでいく”ことにしたんです。もちろん弊社のためだけに小麦粉やバターを作っていただくというのは非常にハードルが高かったんですが、創業から約3年かけてさまざまな交渉や開発を経て、国内の製粉会社に我々仕様の小麦粉を作ってもらい、バターもより我々のパンに合う味わいを探し求め、北海道の北部・幌延町(ほろのべちょう)までバゲットとクロワッサンを抱えて口説き落としに行きました(笑)」

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<メゾンカイザー>専用の「MKファーメントバター」。一般的な遠心分離機を使わず、極力やさしい力で分離させて作るため、乳脂肪の分子が壊れず、発酵バターの風味が極限まで残る。

 

この高品質な発酵バターを存分に味わえる看板商品が「クロワッサン」だ。シート状のバターが織り込まれた生地を16層に重ね、クルクルッと慣れた手つきで成形した後は、約4時間の発酵を待つ。層は多いほど贅沢なように思われるが、層と層の間を生かして発酵バターの風味に厚みが生まれ、口一杯に広がるのが、16の黄金層なのだという。

 

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早朝から昼間も何回かに分けて焼き上げられるクロワッサン。店舗ごとに平均、平日100個~、週末約200個ものクロワッサンが販売されている。

 

 

特別に製造された小麦粉とバターを使い、パリの製法を踏襲して作られる「クロワッサン」は、サックリとした食感に続き、発酵バターの香りが鼻を抜けていく。噛み締めるたび、じんわりと味わい深い旨みは、素材や製法などあらゆる面で“メゾンカイザー仕様”のオリジナルを追求し続けた賜物なのだ。

 

 

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クロワッサン(1個)280円

看板商品の「クロワッサン」は焼成時に16の層に空気が入って膨らみ、風味の広がりを感じられる。「ひと口目はかじりついて、鼻に抜けるバターの風味を感じてほしい」と木村さん。

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バゲットモンジュ(1本)350円

一般的なフランスパンのパリッではなく、“バリッ”という厚みのある歯ごたえが、<メゾンカイザー>ならでは。低温で長時間発酵させたルヴァン酵母が、複雑な風味と奥深い味わいを生み出している。小麦粉と水、塩、酵母のみで作られるゆえ、素材の味がしっかり感じられる一品。

 

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ピスタチオのパン(1個)420円

店舗限定販売から人気を博し、定番メニューに昇格したストーリーを持つ一品。生地にピスタチオとピスタチオパウダー、蜂蜜を練り込み、やさしい甘みとコクが感じられる。ゴツゴツとしたホールタイプのピスタチオが食感を豊かにし、食べ手を刺激する。

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チャバタグランデ(1個)420円

イタリア語でスリッパを意味し、四角い平べったいパンを指す「チャバタ」。寝かせたおいた生地を一度だけ折って重ねるというシンプルな工程だが、その折り方やタイミング次第で、層の食感や味わいなど仕上がりが大きく異なるという、職人の腕が試されるパン。

オリーブオイルをふんだんに練り込み、あえてやや強めの塩を加えたパンは、食事のお供はもちろん、ワインのつまみにもおすすめ。

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デリスブラン(1個)330円

きめが細かくモチモチとした食感の生地に、相性の良いホワイトチョコレートをたっぷり練り込んだ、老若男女問わず支持されるパン。日本で生まれ、今ではパリの<メゾンカイザー>でも人気のパンTOP5にランクイン。「塩っぽいパンが好まれるパリで、甘いパンが人気になったこと自体が快挙です」と木村さん。

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株式会社 ブーランジェリーエリックカイザージャポン

代表取締役

木村周一郎さん

1969年、<木村屋總本店>創業家に生まれ、米国立製パン研究所へ留学。2000年に帰国後、ブーランジェリーエリックカイザージャポン設立。現在国内約30店舗を展開。

 

Text : Aki Fujii

Photo : Yuko Moriyama , Yuya Wada

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