2024.9.13 UP
和菓子屋のこだわり、と聞くと敷居の高さを感じてしまうが、〈仙太郎〉のおいしさへのこだわりは、いたってシンプルだ。「体が求めるもの、喜ぶものが〝おいしい〟につながる」、「〝美しい〟より〝おいしい〟を追求する」という考えのもと、菓子作りに励んできた。
店頭には、おはぎや羊羹など、日常をほんの少し豊かにしてくれる普段使いの甘味が並ぶ。柔らかく口当たりが良い、風味豊かな味が魅力の丹波大納言小豆を使った粒餡の「おはぎ」は、店の看板商品。ここに、身体が喜ぶ菓子作りの理念が、わかりやすく表れている。たとえばもち米は、米の食感、風味を最大限生かすため、八分づきにして胚芽を少し残している。
「そのほうが香りと味が良いし、お腹にも良いから」とは先代の弁。もち米に混ぜた青じそも、爽やかな風味づけのためだけでなく、胃腸の消化の良さを考えてのアレンジだ。四代目の当代になって、「今の世の中にあった食べやすい大きさが良い」という想いから小ぶりの大きさにしたが、店の厨房で職人がふんわり握る作りたての「おはぎ」の魅力は不変。目が喜ぶものばかり求めがちな今だからこそ、体が喜ぶ菓子に心まで満たされるのかもしれない。
日常のご褒美時間のお供、おはぎの味は、小豆、米、砂糖と限られた素材ゆえ、それらの質に大いに左右される。そこで<仙太郎>は、理想とする柔らかく口当たりが良い、風味豊かな味が魅力の大粒の丹波大納言小豆を求め、8年の選抜淘汰を経て自社銘柄「仙太郎大納言」の完成にこぎつけた。さらに、おはぎの芯となるお米は、粘り気が強くもちもちした食感を目指して、うるち米を使わず100%もち米を使用している。甘さのために加えたてん菜糖は、スッキリした甘さを醸し出すのに欠かせない存在だ。
刻んだ青じそを蜜の中に浸して火にかける。しその香りと色が飛ばないよう、熱する時間は最低限。
自社精米したてのもち米を使用。蒸し上がりの香りと味に違いが出る。
もちろん、身体が喜ぶ菓子作りの理念も随所に見てとれる。たとえばもち米は、米の食感、風味を最大限に活かすため、八分づきにして胚芽を少し残している。これは、先代曰く「そのほうが香りと味が良いし、お腹にも良いから」。もち米に混ぜた青じそも、爽やかな風味づけのためだけでなく、胃腸の消化の良さを考えてのアレンジだ。
京都丹波の工場から毎朝送られてくる、番重にぎっしり詰まった餡。手が触れる回数をなるべく減らし、瑞々しさを保つ。
1日最大で500~600個を作るというおはぎは、その日に食す“朝生菓子”だ。
おはぎ 粒あん、きなこ(各1個)各238円
ともに、青じそ入りのもち米を使用。丹波大納言粒餡で生地を包んだ「粒あん」と、生地を小豆こし餡で包み、黒豆きなこをまぶした「きなこ」。
栗むし(1個)411円
自社で剥いた国産栗の蜜煮を、羊羮生地にぎっしりと敷き詰め蒸し上げた。秋季限定商品。
こぐり(8個入)951円
ツヤツヤの表面が本物の栗と見まごうほどリアルなデザイン。小豆こし餡入りの桃山生地で栗餡を包んで焼き上げてある。栗餡には刻んだ栗も入っていて、秋の味覚の風味と食感を同時に味わえる。製造日含め0日間日持ちする。秋季限定商品。
ご存じ最中(1個)303円
香ばしい最中種(皮)から、90gの餡がはみだすほどのボリューム感。製造日含め3日間日持ちする。
丹波みくまり 小豆、黒豆(各1缶)各378円
琥珀寒天で小豆かのこを閉じ込めた「小豆」と、黒豆蜜煮を閉じ込めた「黒豆」。
Text : Mikiko Itakura
Photo : Yuya Wada