<日本茶テロワール> 天皇杯受賞の、香り高い茶葉の濃厚な旨みとボトリングティー。

2022.10.31 UP

ワイン用語でおなじみの“テロワール”とは、ブドウ栽培の生育環境や産地の特性を表す言葉。しかし今ではお茶やコーヒーなどでも、広く使われるようになっている。日本茶のテロワールにいち早く着目し、産地の気候風土から培われる茶葉の風味や味わい方を提案しているのが<日本茶テロワール>。その切なる願いとは。

このページをシェアする

ph

テロワールに根ざした日本茶の繊細な風味の違いと奥深さは、ペットボトルでは味わえない味。

伊勢丹新宿店限定。つまり、ここにしかない日本茶専門店が<日本茶テロワール>。東京・高田馬場に本社を置く、日本茶の製造・販売会社「愛国製茶」が2007年から出店している。

 

「数十年前はどの駅の周辺にも日本茶専門店って必ずありましたよね。でもいまは激減して、茶葉はスーパーで買うのが普通になっているし、日本茶はペットボトルで飲むというのが主流になってきています。一方で日本茶の生産量は減少し、栽培農家の高齢化も深刻ですが、日本で豊かに育まれてきたお茶文化を衰退させてはならないと思っています。何より全国の生産者が丹精込めて作る茶葉のおいしさを味わってほしいし、なぜ産地によってこんなにも風味が違うのか、そのテロワールの奥深さを伝えたくて伊勢丹新宿店に<日本茶テロワール>を出店したんです」

と語るのは愛国製茶社長の馬場章夫さん。急須でお茶を入れることが減ってきた今日に、日本茶の素晴らしさを再発見してほしいという熱い思いがこの店に結実している。

store

冬の間、栄養分をたっぷり蓄えた一番茶の新芽は柔らかく、みずみずしい。

<日本茶テロワール>の中でも人気が高いのが「天皇杯受賞生産組合の茶」。静岡県掛川市の中山茶業組合が作っている。この業界で最も権威のある天皇杯は、前年の農林水産祭で農林水産大臣賞を受賞していることが大原則で、最高品質のお茶を作れなければ受賞できないという厳しい条件が設けられている。

中山茶業組合の茶園は標高約270mの中山間地にあり、旧東海道の急峻な坂道が続く難所として知られる“小夜の中山″にある。銘茶が作られるのだから、さぞかし茶栽培に適した土地かと思いきや、

「実はお茶作りに向いている土地ではありませんでした。急傾斜地で土は粘土質、排水が悪くて安定的な水源にも乏しい。だから長年、土壌改良に取り組んできました。茶草場農法といって秋から冬にかけて雑草を刈り採ったものを茶園の畝目にすき込んで土壌を豊かにしたり、有機質の肥料をふんだんに入れたり、そういうことを地道にやってきたおかげで、天皇杯を受賞できるほどのいい茶葉ができるようになりました」

と語るのは中山茶業組合代表理事の鈴木将弘さん。

 

store

静岡県掛川市の中山茶業組合の茶園。全体が黄緑色なのは一番茶の新芽のきれいな色。

世界農業遺産に認定されている「静岡の茶草場農法」は、茶園の畝目に周辺のススキやササなどの草を刈り敷く伝統農法で、お茶の香りや味が良くなるばかりか、生物多様性の保全にもつながっている。中山茶業組合の茶園の土はふかふかで栄養分たっぷり。茶葉はふんだんな日照量で、葉が肉厚で滋味が強い。深蒸し製法で作られるので、上品な香りと濃厚な旨みがあり、程よい苦味渋みでマイルドな味わいが特徴だ。

 

 

store

天皇杯受賞生産組合の茶(85g)1,620円

たとえどんなに高級な茶葉でも、お茶は淹れ方次第で味が変わってしまう。煎茶も浅蒸しと深蒸しでは淹れ方が違ってくる。だからこそ「天皇杯受賞生産組合の茶」を一番おいしい状態で飲んでほしいと、<日本茶テロワール>が推奨しているのはボトリングティー。その製造を手がけているのが老舗茶商の丸七製茶(静岡県藤枝市)だ。

 

「この茶葉が持つ芳醇な香りと深みのある力強い旨み、爽やかな苦味と渋み、そうした個性を最高の形で引き出すために、最適なタイミング、時間、方法で抽出し、ガラスボトルに充填しています。香りも風味もそのままに、いつでもどこでも手軽においしく味わえます。ぜひ少し冷やしてワイングラスで飲んでください。茶葉本来の繊細な味わいはもちろん、料理とのマリアージュも楽しめます。常温保存ができて賞味期間も約1年と長く、ちょっと気の利いたギフトとしても喜ばれています」

と話すのは丸七製茶社長の鈴木成彦さん。ペットボトルのお茶とは全く異次元の味わいに誰もが驚き、こんなに日本茶はおいしかったのかと瞠目せずにはいられないだろう。

 

 

store

天皇杯受賞生産組合の茶ボトリングティー(720ml/1本) 3,240円

store

(右)茶葉の様子をたしかめる中山茶業組合の鈴木将弘代表理事

(左)丸七製茶の鈴木成彦社長

store

丸七製茶のボトリングティー工場「CRAFT BREW TEA STUDIO」。2021年より稼働し、そのクオリティの高さが評判に

土地の個性が醸し出すお茶の香りや風味を心ゆくまで味わう。

<日本茶テロワール>の店頭には代表的な産地の銘柄が常時30種類ほど揃っている。いま二大産地となっているのは静岡県と鹿児島県。なかでも平坦な土地で大規模生産が可能になったのが鹿児島の知覧茶だ。葉肉が厚く、しっかりして旨みが強い。注いだ時の水色(すいしょく)がきれいで、まったりとした甘さが特徴。

store

鹿児島・知覧茶 霧(85g)1,620円

九州はお茶の名産地が多いが、佐賀の嬉野釜炒り玉緑茶は葉を蒸すのではなく、高温の釜に直接葉を入れて製造する伝統的な釜炒り製法。茶葉は丸みを帯びた形状で、特有の香ばしい釜香があり、甘みがあるさっぱりとした味わい。

store

佐賀・嬉野釜炒り玉緑茶(85g)1,080円 

川根茶は静岡県大井川流域の山間地で作られている。形状はやや太めで濃緑の茶葉。爽やかな香りとほどよい苦味と渋みを併せ持ってバランスがよく、まろやかな味わい。

 

 

store

静岡・川根茶 霧(85g)1,620円

朝昼晩の食事時、その合間にも急須に茶葉を淹れて湯呑に注いで飲む。お茶の時間は日本人にとって毎日の自然な休息のひと時だった。その安らぎと慈しみを、日本茶のおいしさで味わわせ、思い出させてくれるのが<日本茶テロワール>。ペットボトルの日本茶にはない「お茶の心」、日本の気候風土で育まれたお茶の素晴らしさに気づかせてくれる。

 

撮影・岩本慶三、田嶋雅己 

文・一澤ひらり

RECOMMEND

ブランドストーリーズ

レブレ[デリ エ ブーランジュリー]

レブレ[デリ エ ブーランジュリー]

桂新堂[甘の味]

桂新堂[甘の味]

青果[生鮮]

青果[生鮮]

CATEGORY

カテゴリー