2023.2.7 UP
ドーナツは永遠の定番。その魅力は多様性にあります。イーストを使ったふんわりとやわらかいタイプ、チュロスのようなシュー生地を揚げたタイプやオールドファッションと呼ばれる表面をサクッとさせたタイプも根強い人気です。
おいしいドーナツはたくさんありますが、このレシピが目指すのは究極の“サクサク”です。市販のチョコパイのようなサクサク感を出すために、生地を練らず、折り畳む工程を挟みます。
“サクサク”チョコレートドーナツ (4個分)
<材料>
バター 20g(有塩)
上白糖 30g
卵 25g(1/2個)
牛乳 大さじ1/2
薄力粉 120g
ベーキングパウダー 5g
ナツメグパウダー 小さじ2個)
牛乳 大さじ1/8(またはシナモンパウダー)
ブラックチョコレート 100g
(作り方)
生地をふくらませるためにベーキングパウダーを使います。ベーキングパウダーは重曹に酸性の塩類を混ぜたもの。重曹に酢を加えると泡立ちますが、ベーキングパウダーに水を加えて加熱すると同じように泡立ちます。封を開けてから何年も経ち、古くなったベーキングパウダーは湿気を含むことで反応が進んでしまい、あまり膨らまないことがあるので、その点だけ注意してください。
粉を使ったお菓子作りの基本は液体系の材料と粉類をまず整理することです。薄力粉、ベーキングパウダー、ナツメグパウダーはボウルにあわせておきましょう。卵はよく溶き、牛乳を加えておきます。
バターは室温に戻して、やわらかくしておきます。冬場は室温が低すぎてなかなかやわらかくならないこともあります。その場合はラップを被せて、手の拳などで叩き、やわらかくしますが、温めすぎて溶かしバターにならないように注意してください。
やわらかくしたバターと砂糖をすり混ぜ、滑らかになったところに卵+牛乳を少しずつ加えます。
卵がすべて入ったら、粉類を加えて、ゴムベラで粉気がなくなるまで混ぜます。
ラップでくるんでひとかたまりにしましょう。
ラップにしっかり包んで冷蔵庫で最低30分間、生地を休ませます。
生地を休ませる、というのはどういうことでしょうか? 粉類に水分を混ぜても、デンプンがそれを吸収するためには時間がかかります。この時間を置くことで生地の水分量が均一になり、まとまりがでます。
寝かせる目的はまだあります。生地に水分を加え、こねるとグルテンが形成されますが、外から力をかけている分、網目構造が歪みます。この状態で生地を伸ばそうとするとグルテンが元の構造に戻ろうとするので、縮んだり、伸びたりして均一に伸ばせません。寝かせることでグルテンの状態が安定し、生地を形成しやすくなります。
30分経った状態がこちら。生地に水分が回ったのが色からもわかります。
打ち粉(薄力粉)少々を振った台にラップを外した生地を置き、手のひらで伸ばします。2.5cmほどの厚さになったらまず半分に折ります。また、2.5cm厚になるまで手のひらに伸ばし、もう一度生地を折り、今度は2cmほどの厚さになるまで生地を伸ばしましょう。
口径7cmのコップなどで丸く抜きます。セルクル型やドーナツ型があれば使うと楽です。2つ抜いて、残った生地は折りたたんでから同じ厚さに伸ばし、また生地を抜きます。
4つの丸と残りができました。丸の内側をペットボトルの蓋で抜いてドーナツの形をつくります。
5.5cmくらいの小さい器があれば、中心に溝をつくっておくとそこから膨らむので、表面積が増え、サクサク感がさらに増します。
170℃の油で揚げます。はじめは生地がやわらかいので触らないようにし、片面が色づいてきたら裏返し、両面をこんがりと揚げます。揚がったドーナツは網をしいたバットなどに移し、粗熱をとります。
チョコレートを準備します。カカオ分50%のチョコレートを細かく刻みます。
両側から折りたたむようにすればオムレツの形になるでしょう。50℃の湯煎にかけてチョコレートを溶かしていきます。チョコレートを溶かす湯煎の温度はパティシエによって意見が異なりますが、チョコレートの脂肪の結晶がすべて溶ける温度は45℃。(ダークチョコレートの場合)湯煎の温度に関わらずチョコレート自体を45℃まで温めればいいのです。
チョコレートが溶けたら火から外しゴムベラなどで大きくかき混ぜながら冷ましていきます。パティシエは大理石の台に一部を流し、温度を早く下げますが、少量であればこのまま冷ましたほうが簡単です。
大きく混ぜ、ゴムベラからチョコレートを垂らしながら温度を下げていくと途中で硬くなってきます。これは29℃の結晶生成温度帯になった証拠です。このままだと硬いので、もう一度湯煎にかけ、チョコレートを緩めます。目指すチョコレートの温度は31℃〜32℃です。この工程をテンパリング(調温)と言い、チョコレートの結晶を揃えることで溶けにくくなり、パリッとした食感とツヤが出ます。
色々と温度の数字を出しましたが、難しく考える必要はありません。温度計を使ったほうがかんたんではありますが、チョコレートの状態を見ながら『溶かす→冷やす→再び温める』だけです。テンパリングが上手くできているかを確認するにはアルミホイルに薄く伸ばしてみます。艶がある状態で、数分以内に固まれば成功です。失敗した場合はやり直せばいいので、焦る必要はありません。
ドーナツにチョコレートをスプーンですくってかけて、網などに置いて室温で冷まします。チョコレートが固まれば出来上がり。ダイスアーモンドなどを振ると食感に変化が出てさらにおいしくなります。
チョコレートのテンパリングが面倒というのであればジッパー付きの袋に刻んだチョコレートを入れ、34℃の湯で溶かす方法もあります。市販のチョコレートはすでにテンパリングされているので、この状態を壊さないように溶かすだけです。(参考『ホームメイドで楽しむチョコ×ミント、そしてチョコ×ストロベリー』)
チョコレートはゆっくりと冷やすことも大事です。例えば冷蔵庫に入れたりして急激に冷やすとカカオバターが不安定になり、逆に温かすぎるとせっかくテンパリングした結晶が溶けてやはり上手に固まりません。20℃〜25℃程度の室温で固めるのがベスト。暖房がきいた冬場の部屋はすこしだけ注意が必要です。
チョコレートさえ溶かせればおなじみのチョコバナナなどはかんたんにつくれます。ドーナツは手間がかかりますが、これならお子さんと一緒につくるのも楽しいでしょう。
適当な長さに切ったバナナに割り箸を刺します。この状態で冷蔵庫で30分ほど冷やしておくと、バナナが締まるので割り箸が抜けづらくなります。
あとはテンパリングしたチョコレートを小さな容器に移し、バナナをディップするだけです。
オーブンシートを敷いたバットなどに並べ、ドーナツと同じように室温で冷やし固めます。ピスタチオやアラザン、スプレーチョコレートなどをトッピングするのも楽しいでしょう。
チョコレートとバナナは定番ながら相性抜群。自分でつくると一層おいしいもの。作っているあいだに漂うチョコレートの甘い香りもご馳走です。
Text&Photo : Naoya Higuchi