2023.5.22 UP
埼玉県越谷市にある<IHミートパッカー>東京ミートセンター。同社が長年培ってきた和牛生産システムを最大限に活用し、枝庫、分割・脱骨、整形、商品検査、真空包装、金属探知機、シュリンカー・チラー、計量・梱包という工程を経て、おいしさへのこだわりを追究している。日本全国の銘柄牛や銘柄豚、季節限定のジビエなど豊富な肉を取り揃える伊勢丹オリジナルブランド<I’s MEAT SELECTION>では、<IHミートパッカー>の取扱ブランドである常陸牛をラインナップ。ここ東京ミートセンターから、こだわりの生肉が出荷されている。まずは常陸牛の枝肉が保管されている枝庫へ潜入。枝肉とは、牛の体から内臓などを取り去った肉のことで、室温4度以下に設定された最適な温度、湿度に保たれた状態で保管されている。
<I’s MEAT SELECTION>茨城県産常陸牛
左5枚・肩ローススライス 100gあたり 1,836円/右5枚・肩スライス 100gあたり 1,512円
伊勢丹新宿店本館地下1階 フレッシュマーケット
※販売期間:5月24日(水)〜5月30日(火)
※画像はイメージです。
「よく、A5ランクのような言葉を耳にしたことがあると思いますが、牛肉は日本食肉格付協会によって定められた等級により格付けされます。その中で、伊勢丹に出荷する黒毛和牛は4等級以上のもののみ。舌の肥えたお客さまばかりなので、その見極めにはいつも緊張しています。ちなみに枝肉は左半身の第6肋骨と第7肋骨間で切断した肉の表面で格付けするのがルールなんです」と、国産牛に携わって16年の東日本国内ビーフ課主事の高橋浩孝さん。入社23年目のベテランで、枝肉の見極めには絶大な信頼を得ている。格付けというわかりやすい等級があるものの、それだけでは計り知れないのが牛肉の面白いところ、と高橋さんは続ける。
「十人十色といいますが、牛はまさにそれ。等級を決めるポイントは主に霜降りの入り方という印象があるかもしれませんが、肉色の濃淡、光沢、肉質の締まり具合やきめの細かさなど、一頭一頭すべて違って個性があるので面白い。さらに格付けで見られる表面以外に、枝肉全体の肉付きや重量などを鑑みて肉の品質を見極めています」
ライトを当てて肉質をチェックするビーフ課主事の高橋浩孝さん。
牛肉の格付けでチェックされるのは第6肋骨と第7肋骨間で切断した肉の表面。
脱骨した肉を、肩、ロース、バラ、モモと部位ごとに整形していく。
全身を使って肉の塊と対峙する、かなりの重労働だ。
ポーク課新人の西辻隆真さんは元ラガーマン。
これまで十数万頭という牛を見て、触れて、食してきた長年の経験が成せる技だ。枝庫から出てきた枝肉は、肩、ロース、バラ、モモ、希少部位などに分割・脱骨して、整形されていく。牛の枝肉は500㎏前後もの重量があるため、吊るした状態で大型の脱骨システムを用いて骨を抜く重労働だ。そこから手早く、丁寧に捌く様はまさに職人技。「熟練が一番、あとはなんといっても体力勝負ですね」と、センター長代理の須藤充浩さん。お客さまがご要望の規格やニーズに応えつつ、製品が滞りなく工程を流れていくのが大切だという。
「現場を直接訪れることができるのが生鮮部門に携わる楽しみの一つですが、食肉加工の現場は初めてなので圧倒されています。こうしてきちんと管理が行き届いた現場を見ると、自信を持ってお客さまに商品を提案できます」と、アシスタントバイヤーの中瀬正実。実は農業高校の出身で、もともと素材の追究には興味があったのだそう。
センター長代理・須藤充浩さんの丁寧な説明に聞き入る、アシスタントバイヤーの中瀬正実。
牛肉部門を後にして、次は別のフロアにある豚肉加工の工場へ。基本的に行われる工程は一緒なのだが、一頭の重量が違うだけで、工場内の雰囲気も一変する。
「豚10頭分で牛一頭を捌くくらいの感覚です。豚肉は重量がない分、職人にはより細かく繊細な手捌きが求められます。おいしい鮮肉をお届けするには、牛も豚もまずは枝肉の選別、そして脱骨から整形のスピードと、それに伴う温度管理が重要です。特に牛肉はシュリンカー・チラーにより真空パックした肉を80度の熱湯を通してすぐに冷却することで生のまま品質を保つことができます」と、須藤さん。
整形された肉を部位ごとに真空パックする。
真空パックした牛肉を80度の熱湯に通し、すぐに冷却。
右記の工程により、冷凍しなくても牛肉の賞味期限を約45日保つことができる。
入社2年目のポーク課のホープ、西辻隆真さんが豚肉の見極めを解説してくれる。
豚肉の脱骨がスピーディに行われる。
こうして丁寧に整形し、伊勢丹新宿店へ。<I’s MEAT SELECTION>の店頭には、今日も新鮮な肉が並ぶ。
工場入口には和牛の看板がずらりと並ぶ。
写真:太田隆生
取材・文:西野入智紗