紅茶専門店<リーフル>代表の山田栄さんダージリンストーリー。

2006年12月、伊勢丹新宿店本館地下1階=プラ ド エピスリーのリモデルと同時にオープンしたダージリン紅茶専門店<リーフル>(現在は伊勢丹新宿店プライベートブランド<ナヴァラサ>)は、食品フロアを代表する専門店の一つです。優れた農園、紅茶に関わる人々、クオリティの高い紅茶の世界を伝え続けてきた株式会社リーフル代表の山田栄さん。普段は自然体でチャーミング、紅茶となるとキリッと真摯なお人柄に伊勢丹新宿店のスタイリスト達も魅了されています。今回は、そんな山田さんにこれまで体験してきたダージリンでの体験をお話いただきました。

通称、「マイケル・ジャクソンロード」を通って茶畑へ

インド・ダージリンに行くようになってから、かれこれ30年になります。毎年1年に3回訪れていますが、毎回初めて行くような気分になるし、喜びの度合いは、回を重ねるごとに大きくなります。出合うお茶が素晴らしくなっていっていることもあるし、現地での人々との出会い、ヒマラヤの風景や素敵なもてなし、お食事、色々な要素がありますが、毎回『こんな喜びはない!』と思うのです。

1988年に株式会社リーフルを創業。毎年インド、ネパールなど産地を巡り、現地の農園と直接コミュニケーションをとりながらクオリティの高い紅茶を日本に紹介してきた。

まずは、ダージリンへの行き方をお話します。バグドグラ空港からダージリン地方に向かうと最初にあるのがシリグリという街。人々の移動や観光に使われるダージリン・トイ・トレインですと、シリグリのニュージャイパイグリという駅から終点のダージリンタウンまで8~10時間かかりますので、ジープで3~4時間かけて移動します。この線路は昔、茶を運ぶ貨物として利用されていましたが、今は主にタージリンに住む人々の移動や観光客が利用しています。いくつかタイプの違う列車を見る事がありますが、中でも一番豪華なのがロイヤルトレイン。昔、英国貴族などが産地に赴くのに利用していた列車です。とても瀟洒な列車ですが、歴史があるだけに、その重みを乗せているように思います。

農園によっては、一旦下がってまた上がってと辿り着くのが大変なところもあります。私が主にお付き合いしている農園の一つにサングマ農園があるのですが、そのサングマ農園のジャー氏が統括している農園がいくつかあります。その一つ、バラスン農園にはマイケル・ジャクソン・ロード(通称)を通ります。なぜそう呼ばれているかといえば、車に乗っての移動中、ずっとマイケル・ジャクソンの“スリラー”を踊っているみたいに体がこんなんになっちゃうから。(踊ってみせる山田さん) 写真でどんな悪路かお見せしたいけれど、いつも手ぶれがすごくてちゃんと撮れたことがありません(笑)。標高1400mにある農園です。

ダージリンの語源はドルジェリン。これは雷神を意味する。ダージリン地方は、夏、雨が多く、昼夜の寒暖差が大きく霧、雷が発生しやすい。これらの気候条件も品質の高い茶葉を育てる。

今回届いた4種類の農園のファーストフラッシュは、いずれもサングマ農園の傘下のものです。統括ティーマネージャーのA・K・ジャーさんがしっかり見ている農園。ジャーさんとのお付き合いが、私がダージリンと関係して来た年月とほぼ重なります。

土壌から茶葉の栽培、紅茶の製造の全てを把握する全体の統括マネージャー。ジャーさんの下に各農園のマネージャー、その下にアシスタントマネージャー、他にファクトリーやマーケティング担当のマネージャーも含め、全てをコントロールする重要人物だ。

二度目のダージリン訪問で出会ったのがジャーさんでした。「テイスティングをしたいか?」と聞かれたので「はい!」と答えました。最初に茶葉を見ずに行うブラインドティーテイスティングをさせてもらった中で、素晴らしいなと思ったお茶が二つありました。見せてもらうと一つは銀針(シルバーチップ:銀色の産毛に覆われた茶の芽の芯の部分。通常は1cm程度)が2〜2.5cmもあるものでした。もう一つが、銀針にグリーンの葉が絡んだものでした。両方とも献上用のお茶で販売はしていないものだったようです。あまりに素晴らしいお茶でした。その体験が、私がダージリンにのめり込むきっかけとの一つとなりました。

何種類もの紅茶を同時にテイスティングする。

農園でのお食事も、毎回楽しみの一つ。

翌日サングマ農園にランチへ招待された時に、20種類くらいの茶葉のテイスティングをさせてもらいました。私がお茶の質がわかるか試していたようです。数回ブランドティーテイスティングを行い、選んだ茶葉は毎回同じで、この茶葉の名前が“サングマクラシック”でした。購入したいと思ったのですが、ドイツやフランスからも引き合いがあったようで、すぐには返事がもらえませんでした。夜になって別の農園から戻ろうとしていたところ、暗闇の中、対向車のライトが見えました。車が止まって中から出て来たのがジャーさんでした。

「あなたを迎えに行こうとしていたところです。“サングマクラシック”は、あなたに決まりましたよ」と。その時の嬉しさは今も忘れることができません。お茶を購入できる嬉しさももちろんでしたが、わざわざ迎えに来てくれた心遣いや、私の味覚を信頼してくれたのだなという喜び、色々な気持ちでいっぱいになりました。

ダージリンの農園を訪れる楽しみは、紅茶以外のこともあります。それが、農園でのお食事。各農園のマネージャーのマダムが手作り料理でもてなしてくださるのですが、マダムの出身地によって郷土性豊かなインド料理がいろいろ楽しめます。ジャーさんのマダムはリタさんという方で、お料理が本当に素晴らしい。インドの西北部のビハール州ご出身ということなのですが、お料理の味付けは辛くて塩気も効いている。だけどおいしい。日本の懐石料理のような、さまざまなハーブできれいに盛り付けられた、見た目にも美しい料理で、ちょっとでも皿が空いていると、盛られてしまいます。おなかいっぱいの中、出てくるデザートはとっても甘くて、全体のバランスがやみつきになっちゃうんですね。こんな美味しいお料理を食べているから、お茶も美味しいものが作れるんだわ、って思いました。

今は、コロナ禍の影響でダージリンの産地、航空便も大変混乱しています。貨物の値段も高騰していますし、不安定な状況です。そんな中で今回ご紹介するファーストフラッシュは、芽吹いたばかりの茶葉を、少量ですが大事に作ってくださった、特にクオリティの高いお茶で、コロナが深刻化する前に奇跡的に出荷してもらえました。現在、産地はセカンドフラッシュのシーズンに入りました。早く落ち着きを取り戻して、またダージリンに行ける日が来るのを心待ちにしています。

〔サングマ農園傘下のダージリン紅茶〕

〔ダージリン2020ファーストフラッシュ〕
<ナヴァラサ>バラスン農園 フラワリー EX-1
小缶(25g) 4,374円、大缶(35g) 5,994円、スタンドアルミ(25g) 4,050円 ※店頭販売のみ

バラスン農園は、カーセオン、ノースバレーの標高約1,400mに位置する農園。地元の人が「マイケルジャクソンロード」(車で踊れるほど揺れることから)と呼ぶ悪路を谷に向かって下って行きます。
銀緑色の若葉の中に、見事なシルバーチップが一際目を引きます。静かな春の訪れをそっと教えてくれるような初々しい清らかな外観です。熱湯を注ぐと甘くたおやかな香味が立ち上がります。水色は黄金色の輝きをたたえ、口に含むと可憐な花をいっぱいに集めたかのようにフラワリーなフレーバーが広がります。時間の経過とともにボディも増し、繊細でありながら確かな飲み応えと深い魅力を持つ初摘み茶です。

〔ダージリン2020ファーストフラッシュ〕
<ナヴァラサ>リシーハット農園 チャイナフラワリー EX-1
小缶(30g) 5,184円、大缶(45g) 7,614円、スタンドアルミ(30g) 4,860円 ※店頭販売のみ

ダージリン・イーストバレーの標高約980~2,050mに位置し、農園の東西両側を川が流れています。
*オーガニックガーデンとして「日本JAS」「スイスIMO」の認証を受けています。
銀緑色の見るからに初々しく、春一番を感じさせてくれる茶葉です。美しいシャンパンゴールドの水色、石楠花の花を思わせる清らかで上品な香り立ちと、もぎたての果実のようなほのかな甘みは、奥深い魅力を放っています。柔らかな春の陽射しの中、すっと顔を出した新芽を注意深く手摘みし丁寧に作りあげられました。12kgのみ生産された特別限定茶です。

〔ダージリン2020ファーストフラッシュ〕
<ナヴァラサ>プッタボン農園 フラワリー EX-1
小缶(25g) 4,374円、大缶(35g) 5,994円、スタンドアルミ(25g) 4,050円 ※店頭販売のみ
※少量生産のためなくなり次第終了とさせていただきます

雪をいただいた壮大なカンチェンジュンガ山を擁するヒマラヤ山脈を背景に、ウエストバレーの標高470~2,560mに位置する、1852年に設立された広大な農園です。
*オーガニックガーデンとして「日本JAS」「スイスIMO」の認証を受けています。
しっかりと撚られた濃緑色の茶葉からは、花のような甘い香りとともに、若葉の清々しい香りが立ち上ります。淡い黄金色の水色は、春の陽の優しくうららかなさまが浮かぶようです。繊細な花の香りが、茶の持つ深い味わいをまろやかに包み込みます。清らかで甘く優雅な香味の春摘み茶、10kgのみ生産された特別限定茶です。

<ナヴァラサ>シンブリ農園 フラワリー EX-1
小缶(30g) 5,184円、大缶(45g) 7,614円、スタンドアルミ(30g) 4,860円 ※店頭販売のみ
※少量生産のためなくなり次第終了とさせていただきます

ダージリン南西部ミリクバレーの標高約1,500mに位置する農園です。
*オーガニックガーデンとして「日本JAS」、「スイスIMO」と「ドイツNaturland」の認証を受けています。
銀色に輝く芯芽が銀緑色の茶葉に重なり合う繊細な美しいファーストフラッシュは、淡い黄金色の水色をたたえ、夾竹桃のような甘い香りを漂わせます。上品でまろやかな香味は、口に含むごとに爽やかな茶の厚みをしっかりと広げ深い余韻を残します。心身が洗われるような清々しい“幸茶”はヒマラヤの早春が届けてくれた尊い贈り物といえます。蒸らし時間の経過とともに茶の深みが増し、優雅でありながら力強くもある、淹れ手にとってさまざまに楽しめる魅力を持つEX-1です。11kgのみ生産された特別限定茶です。

〔有機JAS認定 ダージリン2019セカンドフラッシュ〕
<ナヴァラサ>サングマ農園 カクラムスク EX-15

小缶(50g) 4,644円

大缶(80g) 7,236円

スタンドアルミ(50g) 4,320円

ダージリン西部、ネパールとの国境に程近いランボンバレーの標高約1,250~1,800mに位置する農園です。丁寧で熱心な茶作りで知られる名園のひとつです。
*オーガニックガーデンとして「日本JAS」「スイスIMO」の認証を受けています。
チョコレート色の茶葉から、香ばしく甘い香りが漂ってきます。カップに注ぐと、やや赤みを帯びたオレンジ色を呈した茶から、香ばしさと夏の草花を思わせる甘い香気が漂ってきます。熟成した果実味と一体となったタンニンが、一口毎に心地よく広がり、濃密さを増していきます。マスカテルフレーバーの意味を持つネパールの言葉「カクラムスク」はサングマ農園の魅力を更に印象づけてやみません。自然の恵みと人の手の優しさが育んだ、力強く勢いのある夏摘み茶です。

Text:ISETAN FOOD INDEX編集部

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