〈MACCIU〉いつか自分も作品のような丸っこい人間になりたい| ART UP Vol.21 

伊勢丹新宿店メンズ館2階=メンズクリエーターズ内「ART UP(アートアップ)」において、グラフィックデザイナーであるMACCIU(マチュー)さんを迎え、個展「CHOICE」を9月2日(水)より開催。国内外を問わず、メーカーや公共施設、書籍、テレビ番組、音楽業界など活動の幅は多岐に渡り活動。最近ではナイキとのコラボレーションが記憶に新しい。今回はそんなMACCIUさんのグラフィックデザイナーになるまでの経緯や展示に対する思い、さらには今後のヴィジョンなどについても語っていただきました。

好きという気持ちと様々な出会いを通じ、気づいたらアーティストに

――MACCIUさんは大学在学中に制作活動を開始。当時、趣味で作っていたデザインが評価され、気づいたら仕事になっていたという。

「「ちょうどソーシャルメディアが流行り始めた時期だったんです。『mixi(ミクシー)』や『Myspace(マイスペース)』を使っていたのですが、その中で『マイスペース』がhtmlタグを書き換えたり、画像サイズの制限がなかったり、ページを改造できる自由度の高いもので、それがとても面白くてよく作ったモノを発表していたんです。『マイスペース』は音楽・エンターテインメントを中心としたソーシャル・ネットワーキング・サービスだったこともあり、ミュージシャンや DJなど音楽系の人々の目に作品が触れる機会が多く、そうした国内外のアーティストの方々からジャケットやグッズデザインのオファーが来るようになった流れで、自然と制作 活動をはじめました。当時はイラレ『Adobe Illustrator(アドビ・イラストレーター)』 (=画像編集ソフト)の存在をやっと知り始めたくらいの頃だったので、最初はマイクロ ソフトのワードなどを駆使して、見様見真似でデザインみたいなモノをつくっていました。大学では歴史学を専攻していたので、当時は今の仕事に就くことは全く考えてなかったと思います。」

 

――パソコンをいじる事は昔から好きだった。

「両親にWindowsを買ってもらってからずっとネットで遊んでいて、昔からなんでもネットから情報を得ていました。すごく楽 しくて、あらゆるウェブサイトを見ていました。雑誌を読む代わりに、ネットを見ていたんだと思います。雑誌は人が収集した文字情報なので、なんとなく攻略本みたいな感覚があり、誰かが編集して提供された情報ではなく、好きなものを自分から発見するのが好きでした。ちょうど『マイスペース』の流行と同時期くらいは、クラブカルチャーがエレクトロ・ミュージックの全盛期で、パーティ・フォトが流行っていました。DJの利用者の多 いマイスペース内でもクラブの来場者や出演者を撮影した写真を目にする機会が増えていました。そこに映し出される生々しさや熱狂する人々の姿に圧倒され、私も外に出てクラブで写真を撮るようになりました。家にいてもソーシャルメディアを通じて、クラブカル チャーの情報をよく取り入れていたので、とても自然な流れでした。パーティフォトを撮るのと同時に、フライヤーのデザインなどもするようになり、こうして私のキャリアはクラブカルチャーから本格的にスタートしました。」

 

――やりたいと思ったら即行動。カメラの扱いも初心者だったが、そこも「やりたい」という気持ちが勝ったという。

「『マイスペース』がきっかけで、当 時の世界各国で活躍するパーティフォトグラファーたちのことを知ったんですが、彼らの 撮る写真の被写体との距離感や空気感がすごく好きで、そこからその世界に魅了されていきました。写真家でとくに影響を受けたのが、チェキフォトグラファーの米原康正さんでした。米原さんはモデルとの間に独特の距離感を作りだす写真家で、パーティフォトもよく撮られていたので、撮り方をマネて自分でもパーティに来る人たちと積極的にコミュニ ケーションを取りながら撮るようになりました。あと米原さん自身、もともと編集者として活動をスタートされ、現場の実践から写真活動をスタートした方なので、そういった経緯もすごく面白いなって」

 

――実践することで、現場の空気を肌で直接感じられるのが好きだったという。回数を重ねるごとに作品にもその影響があらわれた。

「人に反応してもらえるっていうのが嬉しかったですね。実際にクラブに行っても自分がデザインしたフライヤーを配ったりすると、とてもたくさんの反応が返ってくるんです。そのダイレクトな反応が楽しかったです。人とのコミュニケーションによってデザインが良くなっていったので、そういう意味では実践することで作品に変化を与えてあったのかも。これからも自分が色んな経験をすることで、どんどん変わっていくのかもしれないですね」

自らの作品に新たな風を吹かせるべく目下行っていること

――伊勢丹新宿店メンズ館から、今回の展示のオファーが来た時はどう思ったのだろうか。

「めちゃくちゃ嬉しかったです。今回コロナの影響で予定していた展 示をオンラインに切り替えた経緯もあったため、実際にいろんな人に見てもらう機会ができるのはありがたいです。伊勢丹新宿店メンズ館なら色んな年齢層のお客さまが見に来てくれるでしょうし。ぜひ何でも好きなように見て欲しいです。とにかく自由に感じてもらいたい。」

――作品を作る際に心がけていることがあるという。これは京都出身のMACCIUさんならではの感覚だ。

「『人を笑かしたいな』っていう気持ちは常にあります(笑)。デザインは人が楽しむモノなので、作品はすべて人の娯楽のために作っています。なので、自 分の作品を観たり、体験する人に少しでも笑ってもらえたら嬉しいです。ちなみに今回の 展示のテーマは『CHOICE』ですが、もともと裏テーマとして『TOUCH』というキーワー ドが隠れてて。すべての作品でキャラクターとキャラクターが何かしら「TOUCH」しあってるんです。コロナの影響で人との接触が難しくなりましたが、絵の中だったらいくら触っても誰にも咎められまいということで、キャラクター同士が触りまくる作品にしました。『触れ合いっていいでしょ』っていうメッセージも込めています」

 

――また見る人に「決めつけ」を感じさせないのも、MACCIUさんの作品の特徴。

「自分の作るものでは出来る限り「決めつけ」を意識させないようにしています。作家の思惑とかエゴ、ジェンダーや時事性、そういったジャッジメントと出来る限り遠いところで作品を作ろうと思っています。例えば、自分自身が絵を見た時に、 女性が描いたとか男性が描いたとか、作り手の姿が少しでもチラつくとちょっと冷めてしまうところがあって。そういうジャッジを超えたところで作品を提供したいので、できる 限りフィルターを取っぱらったものを作るようにはしています。断定的に決めつけないと無限の可能性が生まれます。今回の展示でも何も考えずに、思考停止するくらい、ただた だ楽しんでもらえたら幸いです」

――6月にリリースされた自身がデザインを手掛けた〈ナイキ〉のコラボスニーカーにしかり、MACCIUさんの作品には、丸っこくて可愛らしいモチーフが多く見られる。これには自身にも、なんとなく心当たりがあるそう。

「角(かど)が多いと落ち着かなくて。(角を)削ぎ落とすこと、そ の作業自体が生きて行くことなのかなって。『角が取れて丸くなった』とかってよく言うじゃないですか。人間って最終的に、球体に近づくことが本当に生きやすい方法なのかなと思います。日常に溢れる情報や声があったり、自分の中でも声がしたりするから。そういうものを削ぎ落としたところで作品を作りたくて、この作品みたいな人間になりたいなって思えるような作品を、自分で作り続けようと思っているんです。自分の半歩先に作品が常にあるっていうイメージといいますか。恐らくまだ自分には角があるので、作品に 近づきたい、自分も丸っこくなりたいという願望があるんでしょうね」

――丸っこくなりたいと思うと同時に、アーティストとしてはその作風に逆行して新たなものを生み出したいと考えている。そんな複雑な思いを胸に、現在あることにチャレンジをしている。

「最近運動をするようになりました。筋肉を使うのがあまり好きじゃなかったんですが、コロナ自粛期間中に健康のためにスピンバイクを買って、それから家でずっと運動をしています。体型とか筋肉の付き方が変われば作品にも影響があるんじゃ ないかと思うんです。日ごろ使い慣れている筋肉の手癖とか、いつも見ている自分の体の形に対する自己肯定とかって、おそらく無意識に作品に投影されてしまってるはずで。少し凝り固まってきた感じもあるので、ほぐす意味でも実験してます。今のような、ぽてっとしたフォルムが、もしかしたら突然繊細な線に変化する日が来るかもしれないので、しばらく続けようと思います(笑)」

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MACCIU 個展「CHOICE」
開催期間:2020年9月2日(水)~29日(火)

9月25日(金)の営業のお知らせ
開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館2階=メンズクリエーターズ/アートアップ

【EVENT】リアルの場に初登場!MACCIUによるアート展「CHOICE at ISETAN」開催>>

 

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Text:Kei Osawa
Photograph:TAGAWA YUTARO(CEKAI)


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