ブランド初となるカシミヤに触れ、素材の奥深さに耽溺する。<ナヤット>が挑戦し続ける素材の可能性とは

ニットブランド<Nahyat/ナヤット>が、初の店舗プロモーションを伊勢丹新宿店メンズ館2階 メンズクリエーターズにて9月1日(水)~7日(火)の間、開催する。ニット専業ブランドということもあり、素材へのこだわり、特に「糸」への思い入れはどこよりも強い。そんな<ナヤット>のデザイナーである依田聖彦氏を直撃。今回の展示に対する思いのみならず、ブランド創設の経緯や素材への思い、今後の展望などについて幅広く訊いた。

イベント情報

<ナヤット>プロモーション

開催期間:2021年9月1日(水)~9月7日(火)
開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館2階 メンズクリエーターズ
三越伊勢丹オンラインストア
・カシミヤニットセーター商品受注期間:9月1日(水)午前10時頃~9月14日(火)午後8時頃
・スヌード販売期間:9月1日(水)午前10時頃~9月7日(火)午後8時頃
※スヌードは数に限りがございます。期間内でも完売の際は販売を終了させていただきます。予めご了承くださいませ。

一部事前にご依頼店予約を承っております。
ご希望の方はページ下記よりご確認くださいませ。
※ご自由にご来店いただけますが、混雑した際にはお待ちいただくこともございます。予めご了承くださいませ。
 

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ニットにハマるきっかけは<Yohji Yamamoto>と専門学校の教科書

――そもそも、洋服を作るに至ったきっかけ

「もともとファッションに興味があったわけではなく、衣食住の中から何か選んで、それを掘り下げていければなんでもいいという気持ちでした。服を選んだのも、高校卒業のタイミングでやりたいことがなかったので、好きなサッカーを観るためにとりあえず3カ月くらい海外で暮らしてみようと貯金をしていたのですが、ある日友人に専門学校の紹介リストを一緒に見ようと誘われて、何気なく置いてあった書籍を開けたら最初に出てきた「文化服装学院」の入学金と僕の貯金額が偶然一致したのがきっかけです。運命というと大袈裟ですが、直感で親に相談もせずに決めました。当時はニットのことはもちろん、ファッションのことも全く知ならい状態でした。」

――専門学校では何を学んだのですか?

「レディースのパターンを学んでいました。特別に思い入れがあったわけでなく、当時学校で一番難しいと噂されていた学科が「アパレル技術科」だったので、そこに進みました。卒業する時になってやりたいことが見つからなかったのでどうしようかぼんやりしていたら、友人から「<Yohji Yamamoto/ヨウジヤマモト>がパタンナー募集しているから応募すれば?」って言われて、そのまま応募してみました。運良く辿り着いた面接で「ニットでもいい?」と聞かれて、やはりそこも成り行きに任せてニットとカットソーの部署に入ることになりました。そこで初めてニットという仕事に携わりました。」
 

――何をきっかけに、ニットにのめり込んでいったのですか?

「すごくレベルが高い会社だったので挫折もしましたし、入社2〜3年目頃には、何をバックボーンにして服を作っていったらいいのかわからなくて悩んでいました。そんな時、学生時代に使っていた教科書に、繊維を顕微鏡で撮影した写真の説明文が掲載してあるのを見たんです。無数に触ってきた生地と、そのもととなるものの原理が全部繋がっていることがすごく面白かったと言いますか、目に見えないくらい細かな繊維の形状が集合することで、こんないろんな素材が生まれるというのが興味深くて、教科書を見てニヤニヤしていました(笑)。その辺から興味を抱いたのだと思います。」

――<ナヤット>のブランドコンセプトには“糸の多様性を嗜む”という言葉があります。”嗜む”という言葉使いは珍しいと思うのですが・・・

「もともと料理を作るのも食べるのも好きなのですが、<ナヤット>で行うこともそういう営みになるといいなと思いました。美味しい物を食べたいという“自分自身”のみに向いた純粋な欲求と食べる体験をより良いものにする為だけに無限に存在するレシピという名の知恵。それを服に置き換えるようなこと、自己顕示欲や所有欲から少し離れたところにあるそんな欲を満たすブランドにしたいと考えたときに、“嗜む”という言葉が最も近いと感じたので、コンセプトに選んでいます。」

数百本以上ある糸の中から毎回くまなくチェック

――ご自身が想う“糸”の魅力とは?

「それぞれ特性があるので、その特性が活かされた糸には全部に魅力がありますね。いわゆる繊維長が長くて細いものが繊維業界の中では品質の良いものとされていますが、天然繊維に限らず、化学繊維の中にも表情が面白いものもありますので、それらの繊維を使って自分で調理する感覚ですね。所謂“品質の良さ”だけでなく多角的に見たその“繊維らしさ”を大事にしています。」

――服を作るうえで意識していること、大事にしていること

「当たり前のことですが、購入してくれたお客さまに後悔をさせないということは一番考えています。セーター1着でも、いいホテル1泊分くらいの値段をお支払いいただくわけなので、それに見合うものと言いますか、良い体験ができたと感じられるようなものを提供したいと思っています。あとコレクションを作る際は、毎シーズンごとに繋がりのある糸屋さんのほぼ全ての糸帳を見てから作り始めます。」

「少なくとも数百種類は見て、その中から気になるものがあったらチェックしつつそこから派生したアイデアを膨らませて試作をします。各紡績会社が持っている糸の中には見たことのある糸もたくさんあるのですが、自分の見方も毎年変わっていっているので、同じ糸でもとりあえず毎回全部見せてもらっています。

今回紹介するのは、強撚によって無骨な雰囲気に仕上げられた3アイテムからなるカシミヤシリーズ

――今回の企画に合わせて、初めてカシミヤのアイテムを展開されるということですが、なぜ挑戦しようと思ったのですか?

「伊勢丹新宿店メンズ館には老若男女、国籍などさまざまな層の人が来館することを考えた時に、ポピュラーに支持されてきたもの、またどの年代にも寄り添ってくれる素材は何かと考えた時にカシミヤが浮かびました。ただ僕の中でカシミヤは魅力を引き出すのに最も難しい素材という印象があったので、今までやらなかったのですが、たくさんの人に見ていただけるこの機会にチャレンジをしようと思いました。」

――難しいというのは・・・?

「カシミヤって柔らかくて滑らかな風合いというのが一番の特徴ですが、純粋にそれを引き出すこと以外の答えを見つけられるかというのが一番のハードルでした。柔らかく、軽く、温かいという魅力は皆さん知っていることなので、それをわざわざ自分がやる必要はないというところで、じゃあどうやったらカシミヤの別の魅力を引き出せるかというのは本当に悩みました。」
 

「その中で生まれたアイデアが強撚という撚り(より=よじること)を強くする手法です。編み地を検討するために試作をするのですが、まず物性の限界点を探る為に極端に強くした撚り回数を2種類作り、番手(ばんて=糸の太さ)を3種類ほど作りました。ゲージ(編地の密度)と異なる撚り&番手をそれぞれ組み合わせつつ洗い方や仕上げ方法もさまざまな組み合わせで試すなど試行錯誤を繰り返して、その中で最も糸の動きや肌触りなどのバランスが取れたものを選びました。糸作りだけで1ヶ月程、編み地が決定するまでに3ヶ月程かかりました。


――今回販売する3アイテムについて

 

「いずれもかなり薄手の仕上がりになっています。まず、クルーネックのプルオーバー。」

<ナヤット>
セーター 61,600円
□伊勢丹新宿店メンズ館2階メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア
※店頭は9月1日(水)午前10時頃~9月7日(火)午後8時頃まで、三越伊勢丹オンラインストアは、9月1日(水)午前10時頃~14日(火)午後8時頃まで

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「クルーネックのプルオーバーニットには、裾のリブの両サイドにスリットが入っています。この部分(両スリットに渡った糸)にはカシミヤの糸でなく、芯部分に和紙が入っていてそこに羊毛を巻きつけた特殊な糸を使っています。この糸を使うことで、目の立ち方がすごくキレイに出るんです。カシミヤでやると毛羽が吹いてしまい、きれいに仕上がらないんです。」

「今回の3アイテムは、それぞれ一箇所ずつポイントとなる場所を作っています。」

「タートルネックはシンプルな形で、カシミヤならではの柔らかさとかしなやかさを損なわないよう、エルボー部分には薄く上質なラムスキンを使用しています。」

<ナヤット>
セーター 64,900円
□伊勢丹新宿店メンズ館2階メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア
店頭は9月1日(水)午前10時頃~9月7日(火)午後8時頃まで、三越伊勢丹オンラインストアは、9月1日(水)午前10時頃~14日(火)午後8時頃まで

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同色のレザーを使用し、異素材の組み合わせもスマートに。

 

「ジップブルゾンは、自然と目線がファスナーにくるので、他の要素を省いてシンプルにしています。」

<ナヤット>
セーター 70,400円
□伊勢丹新宿店メンズ館2階メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア
店頭は9月1日(水)午前10時頃~9月7日(火)午後8時頃まで、三越伊勢丹オンラインストアは、9月1日(水)午前10時頃~14日(火)午後8時頃まで

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「ボディがあまりに軽いので、通常の仕立てだと襟ぐりがファスナーの重さで落ちてしまうのですが、裏側を麻のテープにすることで軽く仕上げて綺麗な状態をキープしています。」

イベント期間中は建築家・中村竜治氏による特別な空間で直接接客

――今回の展示では、空間づくりにもこだわりがあるとのことですが、どのようなものを計画していますか?

「建築家の中村竜治さんに空間のデザインを依頼しました。今まで受注会などはありましたがこうして外部の方に空間を作っていただくことは今回が初めてなんです。というのも、今回の場で初めて<ナヤット>をご覧になる方が恐らく多い中で、自分以外の人が作るということ、他者性みたいなものが混ざることがいろいろな方に<ナヤット>を伝える上で大事なのではと感じたからです。自分以外で作られた<ナヤット>を見たいという欲もあったので、魅力を引き出してくれそうな中村さんにお願いしたところ快く承諾してくださりました。」

「いろいろな方をご提案いただいた中で、中村さんが1つのものを引き立てる際の、引き立て方がとてもシンプルでスマートだなと思いました。中村さんのホームページには1つの空間作りの中で感じたことや考えたことを文章にされているのですが、その文章のニュアンスが<ナヤット>に合いそうだと感じたことも決め手になりました。」

――今回の展示ではスヌードが先行発売!

「スヌードは、毎年9月の2週目くらいから<ナヤット>のオンラインストア上で販売するのですが、会期も近いってこともあって、今回はせっかくスペースもあるのでお客さまに実物を見てお色を選んでいただきたいと思い、準備をさせていただきました。」
 

オンライン受注の場合はオーダーから3週間程度でのお渡し。

「新色を含めて全4色での展開で2色ずつで、質感や重みも異なります。」

<ナヤット>
スヌード 20,900円
□伊勢丹新宿店メンズ館2階メンズクリエーターズ/三越伊勢丹オンラインストア
※店頭・三越伊勢丹オンラインストアともに、9月1日(水)午前10時時頃~9月7日(火)午後8時頃まで

商品を見る(OFF-WHITE/BLACK)
商品を見る(FAWN/BRONZE)

<ナヤット>が今あるのは、お客さま、そして制作に携わる工場の皆さんの愛情のおかげ

――最後の質問ですが、今後ブランドとしてどんな展開を望まれていますか?

「これはブランドを立ち上げた当初から身近な人にはずっと言っていることですが、世界一のニットデザイナーになるということです。売上高や知名度など、何をもって世界一かというのは難しいですが、僕の中での”世界一”というのはそういったことではありません。世界一愛されているニットブランドとか…。まあ、まずは「ニットといえば<ナヤット>だよね」という風に、みなさんに認知してもらえるようになりたいと思っています。」
 

「あとブランドを始めてもうすぐ5年目になるのですが、こうして自分が取り上げてもらうことができるのは、今まで<ナヤット>を支持してくださってきたお客さまと、いつも協力していただいている工場の皆さんのおかげだと思っています。この場を借りて御礼を申しあげます。いつも本当にありがとうございます。」

 

PROFILE

依田聖彦(よだ・まさひこ)

株式会社Nayhat 代表取締役。ヨウジヤマモト社でニット部門を担当後、2017年に独立し現職に。<ナヤット>は、毎年1月~3月に東京・京都・福岡などの全国各地での受注会やwebにて受注を受けた後、その年の9月以降に商品を配送する受注生産形式のDtoCブランド。Partnershipでは、企業や店舗との商品開発も行う。

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イベント情報

<ナヤット>プロモーション

開催期間:2021年9月1日(水)~9月7日(火)
開催場所:伊勢丹新宿店メンズ館2階 メンズクリエーターズ
三越伊勢丹オンラインストア
・カシミヤニットセーター商品受注期間:9月1日(水)午前10時頃~9月14日(火)午後8時頃
・スヌード販売期間:9月1日(水)午前10時頃~9月7日(火)午後8時頃
※スヌードは数に限りがございます。期間内でも完売の際は販売を終了させていただきます。予めご了承くださいませ。

ご来店の事前予約はこちらから
・事前予約はご予約いただいたお時間にスムーズに入場、優先的にデザイナーの依田氏から接客を受けることのできるサービスです。
・事前にご予約いただかなくても、プロモーションスペースへの入場及び商品の購入は可能です。ただし、混雑状況によって入場を制限させていただく場合があり、お待ちいただく可能性がございます。
・ニットセーターは受注生産となります。当日のお持ち帰りはできませんので、ご了承ください。
・スヌードは数に限りがございます。事前にご予約いただいても、ご購入いただけない場合がございます。
・ニットセーターの受注及びスヌードの発売は【三越伊勢丹オンラインストア】でも9月1日10時頃より行います。
 

伊勢丹新宿店メンズ館2階メンズクリエーターズInstagram:@isetanmens_creators
 

Text:Kei Osawa
Photograph:Natsuko Okada

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