
三越日本橋本店2階パーソナルオーダーサロンは、スーツ、シャツ、靴、革小物など、紳士のワードローブをトータルオーダーできる場所。サロンをプロデュースした鏡 陽介バイヤーは「ここでは服より個性を誂えてほしい」と話しています。
「オーダースーツは高級品だとか、手順が難しいだとか、思われているかもしれません。これが老舗のテーラーさんでは、ご紹介やご予約などが必要なところもございますが、日本橋三越オーダーサロンなら、いつでもふらっとお越しいただいて、お好みの一着を仕立てることができます。」
日本橋三越本店オーダーサロンは「なりたい自分」になれる場所
「一般的にオーダーされるのはスーツやジャケット、ワイシャツ、フォーマルウェアなどです。既製服では種類がないとかサイズが合わないとか、欲しい色柄がないという理由が多いと思います。でも実はオーダーって、普段使いできるカジュアルなジャケットやシャツもできますし、靴や鞄・革小物も作れるんです。三越日本橋本店のオーダーサロンでは、シンプルなネイビースーツや、白いシャツを仕立てるお客さまが多く、自分の着る服にもうちょっとだけこだわりたいというお客さまが、立ち寄られていかれるんです。」
実際に来店されたお客さまの中には、「愛用するスーツが傷んできたので同じような一着が欲しい」とか「映画の中で憧れた主人公のイメージになりたい」「海外在住ゆえ現地の気候に適した服が欲しい」という方もいらっしゃいます。オーダーする理由も希望もさまざまなのです。
鏡バイヤーによれば三越日本橋店パーソナルオーダーサロンは、伊勢丹新宿店メンズ館や銀座三越のオーダーサロンとは、ちょっと意味合いが違うといいます。
「どこにもない一着を仕立てるというよりも、ご自身がこうありたいと考えるスタイルを実現できる場所として、服というより着る人の個性をオーダーしていただきたいのです。」
お客さまのさまざまなニーズに応えるため、流行に左右されず、季節を問わないオーダーができるサロンには、三越オリジナルをはじめ、ロンドン、パリ、ミラノ、東京から一流のテーラーを揃えています。ここなら真夏の東京で、サヴィル・ロウの老舗が手掛ける10年後も着られるカシミヤコートを仕立てることも可能なのです。
「海外の有名テーラーの国内縫製のライセンスオーダーだけでなく、基本の型紙をベースに採寸・修正したものが本国で縫製される、いわゆるオウンメイクも提供しています。言わば“支店”がここに出店しているのと同じです。年に数回のオーダーフェアには本国からテーラーが来日して直接接客します。日本の著名なテーラーのメイドトゥメジャー(セミオーダー)も用意されていて、希望があればテーラーが自ら足を運んでくれます。」
この日は、荻窪の名店〈LID TAILOR/リッドテイラー〉のオーダー会が開催されていました。そこで今回、バイヤー鏡と〈リッドテイラー〉の代表・根本修さんのお二人に、最近のオーダー事情について語ってもらいました。
テーラーとバイヤーが考える、気負わず着られるオーダー服とは?
左:三越日本橋本店 紳士オーダーサロン バイヤー鏡 陽介
右:〈リッドテイラー〉代表 根本 修さん
鏡 服って、着る人のバランスに合わせなければ、どんなに流行りの色柄やブランドでも、思ったとおりのスタイルには仕上がりません。根本さんは、その機微をとてもよく理解された服作りをされますよね。
根本 自分自身、10年前だったらこっちのほうが好きだったな、こういう着方をしただろうな、というように、昔と好みが変わってきていることを実感しています。だからこそ5年後、10年後にも着られる服をとつねに考えているんです。
鏡 今日の僕のスーツは根本さんにオーダーしたものですが、これも10年後を見越してのものですか?
根本 グレイ掛かったカーキカラーのコットンギャバジンは、流行りのオリーブグリーンとはちょっと印象が違いますよね。
鏡 流行を追うならミリタリーっぽいカーキですが、あえてこのトーンを選ぶことでトレンドとは一線を引いていると感じられますよね。
根本 以前は、打ち込みの良い英国調のフランネルやツイードがお好きだったと思います。でもいまだと、ちょっと着づらいと感じませんか。これから先、もっと流行が変わっていったら尚更だと思うんです。
鏡 たしかにいまは軽い着心地で、あまり気負わず着たいと感じます。
今のオーダーするならグレーを基調にしたモノトーン
鏡 スーツの需要は減っていますが、男性が着る服の基本としてそれでもスーツは必需品です。でもこれだけスーツの需要が減っているなか、伝統的なサビィル・ロウの構築的なフォルムだけでは時代の流れに合いにくいと思います。
根本 イタリアのソフトコンシャスな仕立てが流行りましたが、そればかりでは飽きてくることもあります。
鏡 〈LID TAILOR/リッドテイラー〉はあえてハウススタイルを持たず、お客さまの希望に沿ってくれるんですよね。
根本 私自分の好みはありますが、できるだけお客さまの希望を形にしながら着心地の良い服を提供したいと思っているんです。
鏡 個人の思い描くスタイルを形にするのもオーダーサロンの役割。以前、海外で仕立てたスーツのパンツが傷んできたので、同じ生地でパンツだけオーダーしたいというお客さまがいらっしゃいました。色柄は似たようなものが見つかっても、やはりジャケットとは年季の入り方が違います。結局は上下オーダーいただきました。
根本 そういうご注文は、うちでもいただくことがあります。
鏡 個人的にはいまモノトーンのジャケットが気になっています。モノトーンって、流行に左右されずに、いつの時代もあるものじゃないですか。
根本 着方によって、時代感が表れる服ですね。真っ黒コーデの時代もあれば、黒と白のメリハリをつけて着ることもありますね。
鏡 いまなら中間色のトーンの生地で仕立てて、黒は靴や小物で引き締めて着たいと思ってるんです。
根本 フォックスのサマセットジャケッティングのバンチブックにいいものがありますよ。
鏡 そういうふうに提案してくれると助かりますよね。
根本 お客さまの漠然とした想いをかたちにするために、私たちがお手伝いするだけです。とくに初めてのお客さまには安心してオーダーしていただきたいので、どんなことでも気にせず何でも相談していただきたいです。
鏡 頑張って、肩肘張ってオーダーしにいくぞという感じではなく、既製服にないから相談に来ましたっていう感覚でお越しいただのがいいですね。
根本 そういう感じなら、仕上がった服が、いかにも「オーダーしました!」というものにはならないと思います。
鏡 人と会って、仕事の打ち合わせだったり、食事したり楽しく過ごした別れ際に「あれ? 気づかなかったけど、もしかしてその服ってオーダー?」と気づかれるぐらいが素敵だと思います。良い服ほど、さりげなく着ていただきたいですね。
三越日本橋本店オーダーサロンでいつまでも愛せる服を
鏡 スーツって時計と同じだと思うんです。スマホを見れば正確な時間がわかる時代に、腕時計には趣味性やステイタスが表れます。自分を表現するツールとしてスーツやシャツ、靴を仕立てることが、ごく自然にできる男性ってカッコいいと思うんです。パーソナルオーダーサロンは、そういう人のための場所でありたいと思っています。
根本 オーダーって、着飾ることが本質じゃないんですよね。
鏡 たとえば、いま古着が流行ってるじゃないですか。昔のテーラードのジャケットやコートを若い人が着てますよね。でもやっぱりサイズやフォルムがご本人に合ってないなと思うことがあります。でも、ああいう服を再現して、自分らしく着たいというお客さまもいらっしゃいます。そういう声にも応えていきたいんです。
根本 じつは僕、今、昔の〈ブルックス ブラザーズ〉みたいなダブルのネイビージャケットを自分用に仕立てているんです。古着じゃなくて、ちゃんと今着られるようにアレンジしてるんです。この仕事をはじめた頃、〈ブルックス ブラザーズ〉からは、とても多くのことを学ばせてもらいました。今の服からは感じられない、気負わず着られて、年齢を重ねてもかっこいい服の原点があるように思っているので、いま改めて着てみたいな、と。
鏡 オーダーに期待するものは、お客さまによってさまざまです。これからも多くの「期待」と「着たい」を、叶えていきたいと思っています。
根本 同感です。
パーソナルオーダーサロンでは、サイズ展開が幅広く細かな体系補正が可能な「メイドトゥメジャー」、お客さまだけの型紙をおこす「オーダーメイド」などを承っております。さまざまなご要望やお悩みをお聞きしながら、最適な一着をお作りいたします。
PHOTO:Taku Fujii
TEXT:Yasuyuki Ikeda
ご予約・お問合せ
日本橋三越本館2階 紳士ファッション/ビスポーク・メイド トゥ メジャー
03-3274-8953(直通)