
2023年3月21日(火・祝)から開催される「第78回春の院展」に合わせ、日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊では「日本美術院同人小品展」がスタート。日本画壇を代表する同人の先生方の最新作約30点が並びます。半世紀以上にわたって続く催しの成り立ちや、今年の見どころをご紹介します。
春の院展はじまりの地、日本橋三越本店と同人小品展
「春の院展」は昭和20年11月に日本橋三越本店で開催された「第1回日本美術院小品展」をはじまりとする、現代日本画の展覧会。昭和34年に「日本美術院春季展覧会」、昭和45年に現在の「春の院展」と改称され、今年で78回目を迎えます。その「春の院展」に合わせて開催されているのが「日本美術院同人小品展」。
同人(どうにん)とは、日本美術院のトップであり、現代日本画壇を代表する作家のこと。毎年秋に現同人の推挙により新同人が決定されます。「春の院展」の作品サイズが約50号に対し、「同人小品展」の作品は6号と比較的手頃なサイズ。巨匠たちの作品を、ご自宅にも飾りやすいサイズでご紹介する催しです。美術の造詣が深い日本橋三越本店のお客さまへ、今年も素晴らしい作品をご紹介します。
バイヤーがセレクトした3作品をご紹介

2022年秋に日本美術院の同人となった武部雅子氏は、三越のカルチャーサロンでも長年講師を勤め、日本画の魅力や技法を広く教える作家。「置き手紙」と題したこの作品は、どこかセンチメンタルで、観る人の想像力を掻き立てるような情緒あふれる作品になっています。岩絵具を厚く重ねることによるマットな質感と、アンニュイな人物の表情が特徴的。抑制された色調がアンティークのような風合いを醸し出し、被写体の大胆な構図もあいまって、伝統的な日本画の画材を用いながらもどこか西洋のモダンさを感じさせます。

鮮やかな白とほんのり淡いピンクのグラデーションで、あでやかな牡丹を描いた作品。透き通るシルクを思わせる繊細な花びらは、貝殻を砕いて作られた胡粉という伝統的な日本画の絵具で描かれています。牡丹は、齋藤満栄氏の代表的なモチーフのひとつ。岩絵具の濃淡で表現された優雅でふくよかな花姿は、花言葉である「風格」や「富貴」を連想させます。

松村公嗣氏は愛知県立芸術大学在学時、片岡球子に師事し、日本画の基礎を学びました。その母校で半世紀にわたり後進の育成に携わり、片岡氏の教えを受け継いだ功労者です。松村氏の数ある代表作のうちの一つ「ほたる」をモチーフにした本作。 制作において取材を大切にする松村氏が、7月初めの水田でほたるの乱舞に出会い、その一瞬を捉えた作品です。目の前に夜空が広がり、いくつもの星々が幻想的に光るような光景。自然の風景と対峙した際に感じた感動と、生命の神秘性、静謐さが表現された特徴的な作品です。
ご紹介した3作品をはじめ、約30点を展示販売する「日本美術院同人小品展」。数百年来続く歴史をもち、いまなお“岩絵具”という伝統的な画材が用いられる日本画。奥が深く魅力的な日本画の世界に、気軽に触れていただける機会となっております。ぜひその美しさをご体感ください。
日本美術院同人小品展
□2023年3月21日(火・祝)〜4月3日(月)[最終日午後5時終了]
□日本橋三越本店 本館6階 美術特選画廊
日本美術院同人小品展の詳細はこちらをご覧ください。
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