
2021年には25周年という歴史があり、伊勢丹新宿店を代表するセレクトショップであるリ・スタイルが2020年8月19日(水)に生まれ変わります。「なりたい自分」や「リアルな自分」を追求するお客さまに愛されてきたショップとして、いまどのような提案がふさわしいのか。「アウトプットのやり方を見直した」というリフレッシュオープンの意図を店長の田中慎一郎とバイヤーの神谷将太が語ります
リ・スタイルバイヤー 神谷将太(左)、リ・スタイル店長 田中慎一郎(右)
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ヒトの想いをのせてメッセージを伝える

田中:時代もお客さまも変わってきて、これだけ売り手である自分たちと、買い手であるお客さまの情報差がなくなってくると「これがトレンドです」、「これが世界の最先端です」ではお客さまの心を響かせることができないのが現実です。特にリ・スタイルは伊勢丹新宿店の中なかでも感性が豊かで、ファッション偏差値の高いお客さまが多く訪れるショップです。そのお客さまもファッションの表現は千差万別で、そんな多様性に対してきちんとプレゼンテーションできるショップにならなければという思いがずっとありました。それが今回のリフレッシュオープンにつながっています。今後、自分たちリ・スタイルはどうあるべきか、存在意義や方向性をあらためて見直したともいえます。
神谷:もうお客さまをひと括りにはできないです。「このファッションなら多くの人が受け入れてくれるだろうな」という考えが通用しないですから、これまで通りの発想での仕掛けを見直す必要があります。お客さまがファッションに求める部分、共感する部分がトレンドではなくて「自分がどうありたいか」になっていると確実に感じます。より一層ショップやブランドのフィロソフィーやスタンスに気持ちを動かされるというお客さまが多くなっているのでファッション提案のやり方、アウトプットそのものを変える必要があると思いました。
田中:リ・スタイルだけではないですが、百貨店のショップはシーズンでお客さまに提供するモノがある程度決まっていて、「今季はこのトレンドアイテムをクローズアップしよう」という一辺倒な提案になりがちでした。提案すべきことをシーズンというターム、ショップという単位で固定することは、多様性が損なわれるだけでなく、「今日はこうだったけど、明日はこうしたい」みたいな柔軟な生き方が選ばれている時代と逆行していると思うんです。なので新しいリ・スタイルで取り入れていくのが「ヒトというフィルターを通したキュレーション」です。ヒトは社内のスタイリストやバイヤー、アシスタントバイヤーであったり、社外のデザイナーさんだったりいろいろですが、ヒトの想いをのせてモノを編集し、空間を演出することで共感や発見が生まれるのではないかと考えています。

神谷:もちろんこれまで通りブランドのコレクションも揃えますし、新しいブランドへのチャレンジも積極的に行っていきますが、ブランドラインナップを大きく入れ替えるということもありません。リ・スタイルとしてファッションやメッセージの届け方を変えるという感じですね。
個性を尊重した自由なキューレーション
田中:リフレッシュオープンのキーワードとしてチームで共有しているのが「100人、100通り」という言葉です。社内のスタイリストに担当してもらう時は個性を追求し、尊重して、いかにそれを伝えるかを意見やアイデアを出し合ってカタチにしていきます。リ・スタイルは自主編集として伊勢丹新宿店のなかでも歴史があるのでお客さまもある程度のショップイメージはあると思いますが、そのショップにどんなスタッフが携わっているのかイメージできるお客さまは少ないと思います。ブランドや商品だけでなく、スタイリストやバイヤー、アシスタントバイヤーなどのメンバーもリ・スタイルらしくあり続けるための大切な要素のひとつです。個性を尊重したキュレーションを打ち出すことでリ・スタイルのメンバーひとりひとりが多様性に富んでいることを知ってもらえれば、共感も生まれるのではないかと思います。

神谷:極端に言うとひとつひとつの共感は小さくてもいいんです。それよりも「共感」の数を積みあげていくために自分の感性で自由にキュレーションして、さまざまな視点のたくさんの提案をお客さまにとどけることが大切だと考えています。提案が多いということは、それだけお客さまとの接点が生まれるということですから。
田中:リフレッシュオープンをしたらショップの印象が大きく変わるかといえば実はそんなこともありません。ショップ内の装飾や環境を作り込んで大きく変化させたとしても、1カ月も経てば新鮮さはきっと失われますよね。リフレッシュオープンの大きな目的は見た目の変化ではなく、いまの時代のお客さまとつながれるようにファッションやメッセージの届け方を変えることなので、それを実現しやすいフレキシブルな環境を目指しました。





キュレーション編集
・THE POWER OF CHOICE
8月19日(水)〜9月1日(火)
スタイリスト編集
・make my week cureted by Mana Yamazaki
8月19日(水)〜9月1日(火)
デザイナー編集
・PHOTOCOPIEU
8月19日(水)〜9月1日(火)
デザイナーも100人、100通りの「THE POWER OF CHOICE」
神谷:リフレッシュオープンにあわせて「THE POWER OF CHOICE」というイベントも開催しますが、テーマは「私の考えるサステナビリティ」です。サステナビリティはファッションのスタンダードになりつつありますけど、「これが正しい」という絶対的なものはなく、現代の多様性を象徴するひとつだと思います。イベント名に「CHOICE」という言葉を使ったのは、サステナビリティにとっていちばん大切なのは「選ぶ勇気、力」だと思うんです。それは作り手であるブランドやデザイナーもそうですし、バイヤー、そして受け手であるお客さまもそうではないかと。デザイナーのサステナビリティの捉え方を並べてみると、なかには相反する考えもあったりするんです。あるデザイナーはコレをチョイスした、あるデザイナーはアレをチョイスした、そんないろいろな考え方が集合したイベントにしたかったんです。「POWER」という言葉には「あらゆる考え方が集合した大きな力」という想いも込めています。デザイナーも「100人、100通り」ということを伝えて、新生リ・スタイルの方向性を感じ取ってもらえればと思っています。

田中:最終的に「THE POWER OF CHOICE」には15ブランドが参加してリ・スタイルだけの限定品を作ってくれました。テーマが「私の考えるサステナビリティ」なので、こちらから「こういうものを作ってください」とリクエストなどはしていません。
神谷:「サステナブル」だから共感して買ってくださいとはもちろん思っていません。それぞれのデザイナーが「サステナブル」というテーマと自由に思いのままに向き合ってステキなファッションアイテムが完成したので、「これ好きだな」って純粋に思える服との出逢いがあればそれがいちばんうれしいです。リ・スタイルでは今回のイベントを機に、ビンテージアイテムの常設展開もスタートさせていくので、そちらも注目してもらえればと思います。
田中:「THE POWER OF CHOICE」もリ・スタイルが考えるキュレーションのひとつです。今後はカワイイやカッコイイというテイスト以外のところで今のお客さまがどこに興味や関心を持っているかというのを繊細に見極めて、リ・スタイルらしいメッセージが伝わるようなイベントを企画していきたいと思っています。


〈ROKH〉トレンチコート 149,600円 ※伊勢丹新宿店限定
□伊勢丹新宿店本館3階=リ・スタイル 商品を見る<


〈Mame Kurogouchi〉ドレス 64,900円 ※伊勢丹新宿店限定
□伊勢丹新宿店本館3階=リ・スタイル
個人的な発信であっても「正直」「本気」であれば届くはず

田中:リ・スタイルのお客さまのなかには「自己表現になにが必要か」ということだけを突き詰めている方もいらして、求めているのは「運命的な出逢い」や「発見」です。自己表現を突き詰めているからといって頑なかといえばそんなこともなくて、信頼のおける相手からの提案に「驚き」や「共感」があったら素直に歓迎してくださるんです。そのお客さまは「自分の感性を理解してくれたうえで、新しい提案をしてくれるスタイリストさんがいるからリ・スタイルに来ている」とおっしゃってくれました。そんなお客さまの期待にお応えするためにもリ・スタイルのマインドを理解したスタイリスト視点の提案がこれからは必要になるはずなんです。
神谷:思ってもなかった服や人との出逢いという「偶然」があって、「共感」もあるという。そんな高揚感のある体験や経験は、リアルな店舗の強みのひとつですね。
田中:キュレーション編集はリ・スタイルのファッションアイテムだけを展開するつもりはありません。編集方針にビューティアポセカリーのナチュラルコスメやリビングのプレートが適していれば同時に展開しますし、場合によってはキュレーターの愛用品、私物もあわせてディスプレイし、唯一無二の世界観を生み出していきます。お客さまは服を探しにリ・スタイルに訪れたつもりでも思いがけないアイテムと触れることにもなって、そこに偶発的な出逢いが生まれるんじゃないかなと思います。必ずしも複合型のライフスタイル提案でなくても、キュレーターが「コレを紹介したい!」という特化型キュレーションでもいいと思っています。大切なことは正直で本気なことで、「私の絶対のおすすめだから試してほしい!」の想いがあればお客さまに届くはずです。リ・スタイルはそういうアウトプットから生まれる「発見」と「出逢い」と「驚き」、そして「共感」があふれるショップになっていこうと思っています。
神谷:リ・スタイルがこれまでとまったく違ったショップになるわけではありません。これまで通り、スタイリングやブランドの提案も続けていきますが、「ヒト」を軸とした「キュレーション」という考え方を取り入れることでよりお客さまの琴線に触れるようなストーリー性のある提案を心がけたいです。ファッションの多面性のようなものを楽しんでほしいですね。

THE POWER OF CHOICE
□8月19日(水)〜9月1日(火)
□伊勢丹新宿店本館3階=リ・スタイル
販売方法はこちらから
〈AKANE UTSUNOMIYA/アカネ ウツノミヤ〉
〈AKIRA NAKA/アキラナカ〉
〈CECILIE BAHNSEN/セシリー バンセン〉
〈CHIKA KISADA/チカ キサダ〉
〈les Briqu'a braque/レブリカブラック〉
〈leur logette/ルール ロジェット〉
〈MAISON EUREKA/メゾン エウレカ〉
〈Mame Kurogouchi/マメ〉
〈MARINE SERRE/マリーンセル〉
〈Merlette/マーレット〉
〈mister it./ミスターイット〉
〈PHOTOCOPIEU/フォトコピュー〉
〈ROKH/ロク〉
〈Situatiounist/シチュエイショニスト〉
〈SUPER YAYA/スーパーヤヤ〉
「THE POWER OF CHOICE」にご参加いただいたブランド、デザイナーよりメッセージをいただきました。