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深める・拡げる-拡張する伝統工芸展 ピックアップアーティスト② 小川郁子氏

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硝子工芸作家・小川郁子氏に、作家となるきっかけや出品作品についてうかがいました。

 

―硝子工芸作家となるきっかけを教えて下さい。

 

ガラス工芸は、キラキラしていて見るのが好きで元々興味がありました。地元の産業でもありますしね。

ちょうど、大学入学の時期に、母から「区報に江戸切子教室の案内が掲載されているよ!」と聞き申込みました。かなり人気があったようですが、抽選に当選して入会。この江戸切子教室の講師が、後に私の師匠となる小林英夫先生でした。

 

教室は週1回ありましたが、とても楽しく、大学4年間在学中、通い続けました。友達からの飲み会の誘いも断っていたほどです。

 

ちょうど就職活動の時期がいわゆる就職氷河期始まりの頃で、公務員試験(心理職)を目指していましたが、心ここに在らず、切子を極めたい気持ちが強くなっていきました。

当時は、職業として硝子工芸作家になりたいというよりは、良い作品を作りたい、修行をしたいと思っていたのです。

 

小林先生には、何度も弟子入りを志願しましたが、断られ続けました。

そうこうしているうちに大学卒業を迎え、先生より「遊びに来てみるか」と仰っていただき、先生の工房に毎日通うようになりました。

先生に来客があった際、最初の頃は「弟子のデ」だと紹介され、通い始めて2年後位からようやく「弟子」として紹介していただきました。

 

―江戸切子教室に申込・当選、小林英夫先生との出会い、運命的なご縁で、目には見えない道が開けていくようですね。

 

―今回の出品作「被硝子切子花瓶『冬慈』」について、技法や制作工程を教えて下さい。

 

・被硝子(きせがらす)

色を着せている(被(かぶ)せている)という意味です。

型に色ガラスの種を吹きつけた後、透明ガラスの種を吹きつけると、外側が色ガラス・内側が透明な形が成形されます。表面の色ガラスを1~2mm削ると透明な部分が出てきます。

 

オパール色は、ムラになりがちなため、扱いが難しいですが、光によって表情が変化し、個性が際立つ素材です。

 

私が考える良い素材とは、色々なことにチャレンジしたくなる素材です。素材を見ると、『こういう形にしたい!』と情景が頭に浮かんできます。ちょっと癖のある素材や苦手だなと思う素材も、思い切って取り組む中で、新たな表現が生まれることもあります。

画像

・作品名『冬慈』(とうじ)

“とうじ”は造語です。

生まれ育った東京を離れて東北に引っ越したのですが、東北に通い始めた頃、豪雪の中で露天風呂のお湯が、エメラルドグリーン色に揺らめくたおやかな情景を目にし、厳しい寒さの中で感じるぬくもりや自然の恵みをイメージしました。

 

この作品は、約2か月をかけて制作し、重さが6キロほど(※)あります。

制作工程は、デザインのアウトラインを考えながら、素材に直接ラインを書き込みます。ガラスは透明で向こう側が見えるので、(向こう側を見ながら)手前側のデザインを書いていき、その後、カットし始めます。

カットは、口元から始め、まず口元を仕上げてから胴部分のデザインをカットしていきます。

その後、研いていきます。

※カット前6.4kg → 仕上がり5.8㎏

 

―重さ6キロと言うと、お米の袋と同じ位ですね。先生の華奢な二の腕で抱えてカットしていくなんて!

はい、そうなんです。作品が完成した頃には、二の腕や首の付け根が筋肉ムキムキになるほどでした。

大きい作品を制作する際は、これまでの自分を超えて前に進んでいくように、覚悟を持って挑みます。

心身ともに大変ではありますが、大きい作品にじっくり向き合い、チャレンジを続ける中で、創造力や表現力が磨かれていくと思います。

 

画像

         素材にカットして取り除く泡などの個所を記したところ。

         ※画像の作品は本展出品作品とは異なります。

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         瓶/素材にカットを施しているところ。

         ※画像の作品は本展出品作品とは異なります。

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         帯どめ/素材からカットを施すことで徐々に成型していく工程。

         素材の色や形状から、最も良い表情が出る箇所にカットを施していきます。

         ※画像の作品は本展出品作品とは異なります。

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         帯どめ/カットを終え、研磨していく工程

         長さ3cm、厚さ5mmほどの帯どめを高速に回転する研磨機で慎重に研いで

         いきます。

         ※画像の作品は、本展出品作品とは異なります。

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         帯どめ/研磨を終え、金具を付け完成。

         ※画像の作品は、本展出品作品とは異なります。

 

―本展の「深める・拡げる」テーマより、今後の制作の方向性や伝統工芸との関わり方について、聞かせて下さい。

 

「こうやった方が上手くいくだろうな、ステキだろうな」と思っても、回顧的な事を続けていくと成長していかないと思います。

苦手なことを克服して技術を磨き続け、新しい表現に何か月もかけてチャレンジしていきたいです。

 

作品には、制作者の人間性が表れていると思います。

硝子工芸のことだけではなく、色々なことに興味をもって吸収し、感性を磨いていく。

 

師匠の小林先生をはじめ、熱心に研究を重ねて人生を捧げて制作に取り組む人を見ると、制作活動はまさに修行だなと思いますが、

その厳しさの中に、喜びや充実感がある、自分も頑張らなければと思います。

 

※数量に限りがある商品もございますので、品切れの際はご容赦ください。
※価格はすべて、税込です。

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