2023.3.10 UP
とんかつ専門店として旗揚げして65年。<かつ工房和幸>はそれまでのとんかつのイメージを覆し、専門店でなければ決して出せないレベルに引き上げた。味わいはもちろんのこと、姿形にも<かつ工房和幸>のとんかつにはこだわりがつまっている。
<かつ工房和幸>のとんかつ、まずは衣のパン粉が極めて大きい。「剣立ち」と呼ばれる、衣が「花が咲いた」ように立ち上がる姿になるには、この大きさが重要である。そして、サクサクした食感は「挽きたての生のパン粉」でなければ生まれない。独自のレシピで作られた食パンを店舗で挽き、新鮮なうちに揚げるからこその食感なのだ。
店舗で使う分だけ挽くのでいつも新鮮なパン粉。パン粉にする食パンはそのまま食べても十分においしい。
もちろん主役である肉にもとことんこだわっている。サシの入り具合や肉質についてもさることながら、パン粉の存在感に対し絶妙のバランスを生み出すには肉そのものの味わいが要となる。淡白すぎるとパン粉に負けてしまうので、全国各地の銘柄豚から選び抜いた旨みのある豚を使う。しかも、豚特有のクセの少ない豚でなければならない。その点において「和豚もちぶた」はさっぱりとした中に旨みがしっかり感じられ、<かつ工房和幸>の目指す理想のとんかつに最適だという。
赤身と脂のバランス、サシの入り具合が美しいロース。定められた大きさ、重量に誤差なく切り出すのは経験を要する。
甘みのあるパン粉、旨みのある肉、この二つを繋ぐのが油だ。味わい明快なこの二つの素材を結びつけるには、極力軽く揚げる必要がある。油切れがよく、冷めても美味しく、サクサクの食感が失われない油を求めて試行錯誤を重ね、その結果たどり着いたのが、コーン油、大豆油、パーム油を独自の配合でブレンドした純正植物油。飽くなき探究心なくして、<かつ工房和幸>のとんかつは生まれ得なかったのだ。
冷めてもおいしいことを第一に開発したオリジナルの純正植物油を使用。さらに優れた油を求めて今も尚、試作研究を続けている。
こだわりの素材を集めただけでは、おいしいとんかつにはならない。選りすぐりの素材をさらなる高みに引き上げるには、職人による卓越した技が不可欠だ。<かつ工房和幸>では安定して高い品質のとんかつを作るために、調理技能検定試験を行っている。先達が編み出した技を継承し、さらなるレベルアップを図るのがその目的である。
1995年に始まったこの検定試験は食材の仕込みから調理に至るまでの工程を、仕上がり具合、技術の精度、調理時間などについて厳しく審査する。日々の仕事を重ねる中で、いかに正確に肉を切り、パン粉をしっかりとつけ、絶妙のタイミングで揚げるかを職人一人一人が身につけていく。それを試験することで、職人自らが問題点を解決し、技を磨いていくことに繋がる。この検定は3級に始まり、最高の1級に到達するには相当な鍛錬が必要だという。
例えば、パン粉つけにしても、粗挽きで粒の大きなパン粉はなかなか肉につかない。ようやくついたと思って揚げると、パン粉が肉から離れて油の中に散ってしまう。完璧なパン粉つけができるようになるには、経験を重ねるしかないのだという。こうした一つ一つの細かい仕事が完璧にこなせてようやくたどり着けるのが<かつ工房和幸>のとんかつなのだ。
とんかつに欠かせないキャベツは、お惣菜をお買い上げいただいたお客さまにはサービスでお付けする。季節に応じて産地を選び、より良い品質のものを提供するように心がけている。
さらに、とんかつだけでなく、付け合わせの千切りキャベツやご飯も産地を選りすぐり、常により良い品質、状態で提供することを使命と心得る。また、素材の質を追求するだけでなく、どうしたらおいしく味わうことができるか常に研究している。その一つがレストランで提供するとんかつの下に金網を潜ませること。キャベツの水分やドレッシングでせっかくのサクサク感が失われないようにと考えついた策だ。
パッケージにも工夫を凝らしている。温かいとんかつの蒸気をうまく逃すことが重要だが、さらに今後取り組んでいくのは、環境に配慮した包装の開発だ。機能性、デザイン、そして持続可能性。とんかつを軸に幅広い視野で進化を続ける<かつ工房和幸>だからこそなし得る、おいしさなのだ。
和豚もちぶたロースかつ(1人前)886円
全国から銘柄豚を取り寄せて吟味した結果選ばれた「和豚もちぶた」は、粗挽きでサクサクに揚がったパン粉の風味、存在感に負けない旨みが特徴。しかもクセがなく、しっとりとした食感も魅力。
棒ひれかつ弁当(1人前)897円
ひれ本来の形を生かした丸太のような一本揚げは、外側と芯の部分両方が均一に仕上がることが求められる。職人の巧みな技によって完璧な状態に揚がった棒ひれかつは、豚肉本来の旨みと柔らかさが堪能できる一品。
和豚もちぶた煮かつ重(ロース)(1人前)1,361円
旨みのしっかりした銘柄豚「和豚もちぶた」のロース肉とんかつを甘辛のタレでさっと煮、卵で閉じた煮かつ。添えられた半熟玉子を割って、肉にからめながら食べると卵の濃厚な味わいも加わって満足度もさらに上がる。
ひれかつサンド(レギュラー)597円
サンドイッチにするとんかつの場合、肉はもとより、パンの甘さ、衣の厚さなどいくつもの点に留意しながら試作を重ねた。その結果、パン粉は通常よりも粗めに挽き、さらにサンドイッチの食パン、ソースもかつサンド専用を使用することに。開発には2年を要したというこだわりのかつサンドだ。
和牛と黒豚のメンチかつ(1個)346円
ジューシーな味わいが特徴のメンチかつ。そのおいしさの秘密は、コクのある豚の脂の旨みと和牛ならではの深みある肉の旨みの融合。豚単体よりもさらに重層的で濃厚な味を楽しめる。
Text : Manami Ikeda
Photo : Yuya Wada