<土井志ば漬本舗>大原伝統のちりめん赤紫蘇が香る しっとりと優しい食感の志ば漬。

2024.9.13 UP

しば漬は、すぐき漬や千枚漬とならぶ京の三大漬物のひとつ。今から1000年ほど前、大原の里人が地元の赤紫蘇で作った漬物が、今日まで大切に受け継がれてきたものだ。<土井志ば漬本舗>の「志ば漬」は、その製法からこだわりを持ち、昔ながらのしば漬の味を今に伝えている。

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大原の里山で守られてきた伝統野菜と漬物。

茄子と赤紫蘇を乳酸発酵させて作る、鮮やかな赤紫色の漬物。京土産の定番として親しまれるしば漬は、今から1000年以上前に、大原に住む里人たちが作った伝統食といわれている。平安末期に壇ノ浦の戦いで平家が敗れたことからこの地へ逃れ、尼となって大原の寂光院へと移り住んだ建礼門院(平徳子)が、これを「紫葉漬=しば漬」と名付けたという興味深い伝承が残っている。

 

特徴的な赤紫色は、大原の地で昔から栽培されているちりめん赤紫蘇に由来する。香り高く色濃い大原産のちりめん赤紫蘇は、ある研究によると、古来中国より伝来した紫蘇の原種に近いことがわかっている。周囲を山に囲まれた盆地に位置する大原では、種の交雑が起こりにくかったのだろう。ちりめん赤紫蘇は京の伝統野菜の一種として、今日まで大切に受け継がれてきた。

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山裾に広がる、<土井志ば漬本舗>のちりめん赤紫蘇畑。6月ごろから夏にかけて、大原のあちこちでこのような光景が見られる。

このしば漬を世に広く知らしめんと、1901年に大原で創業したのが<土井志ば漬本舗>だ。「志ば漬(=志を漬ける)」の当て字は、創業者の土井清太郎氏が考案したもの。そこには大原の里山を育み、守り続けてきた里人たちへの敬意と、自らの商いや人生に対する強い想いが込められているという。

 

<土井志ば漬本舗>の本社敷地内には、ちりめん赤紫蘇を栽培する広大な自社農園がある。2月に種をまき、春になったら社員総出で畑へ苗を植え付けるのが毎年の慣わしだ。夏を迎えるころには朝夕の寒暖差も大きくなり、赤紫蘇は山の冷気を含んだ水分を吸って瑞々しく生育する。そして6月下旬になると、いよいよ刈り入れがスタート。ここから8月初旬ごろまでが、<土井志ば漬本舗>の繁忙期。年に1度、昔ながらの手法で漬ける「土井の生志ば漬」づくりが始まる。

 

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本社敷地内の建物には、創業間もない頃に使用されていた看板が今も掲げられている。

 

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孫子の代まで商いを続けていけるように……そんな想いで創業者が書き遺した伝書。同社のもの作りに強い影響を与えている。

 

ちりめん赤紫蘇と、京都周辺で採れた茄子、そして塩。「土井の生志ば漬」の原材料はとてもシンプルだ。漬け込みに使用するのは木製の大きな漬樽。ここに人の手でカットされた茄子やちりめん紫蘇を敷き詰め、木蓋をしたら、その上に重石を乗せる。あくまで職人の手で行うアナログな作業ゆえ、巨大な樽の中身にまんべんなく圧を加えるためには、バランスを見ながら重石をいくつも積み上げなければならない。重石のセットが済んだら、あとは樽内や空気中に存在する乳酸菌が発酵を促してくれる。約1ヶ月後、祇園祭が終わるころには、その年の最初の色鮮やかな生志ば漬が店頭に届く。

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茄子は主に京都産。自社畑のちりめん赤紫蘇は、その日漬け込む量だけを刈り取って使用する。

 

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木蓋に重石を積み上げている職人の姿。巨大な漬樽は、創業時より市内の酒蔵から代々譲り受けているという。

 

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漬樽と石を使用し、職人の勘で漬け込む手法は古から大原で受け継がれてきたもの。同社では創業時から現在まで同じ手法を貫いている。

 

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約1ヶ月後、赤紫色の生志ば漬が完成。木肌に接する部分は変質しやすいため、パッケージする際は丁寧に取り除かれるという。

 

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土井の生志ば漬(108g)594円

独特のしっとりとした食感で「京ブランド食品」にも認定。伝統的な自然熟成法で発酵させているから、酸味がほどよく食べやすい。毎年7月下旬から出荷され、売り切れ次第終了となる。

 

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「生志ば漬」はそのまま食べるのはもちろん、刻んでタルタルソースに混ぜたり、炒飯に加えたりと様々な料理にも活用できる。写真はほんのり効いた酸味がたまらない、志ば漬入りのコロッケ。

 

地元の伝統食から、京を代表するお土産品へ。

<土井志ば漬本舗>は、大原の伝統的なしば漬づくりを守ってきた一方で、京土産としての製品づくりにも昔から積極的に取り組んできた。たとえば戦後の高度経済成長期に新幹線が開通すると、漬物の土産需要の高まりに応えるべく、袋メーカーとの協働で自動キャップマシンによる真空熱処理と真空パック技術を開発。漬物を電車で持ち帰る際にも匂いが気にならず、日持ちもするという消費者目線の製品づくりが支持され、いつしか<土井志ば漬本舗>の漬物は京土産の定番になった。その代表的な味をいくつかご紹介したい。

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志そ漬きゅうり(105g)540円

ちりめん赤紫蘇ときゅうり、ピリリとした生姜をあわせ漬けした白飯の友は、カリッと弾けるような食感でファンが多いとか。生姜の風味も食欲を誘う。

 

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すぐききざみ(105g)540円

“すぐき菜”を使用した、京の三大漬物のひとつ。乳酸菌発酵による爽やかな酸味があり、シャキッとした食感も特徴的。炒飯に混ぜると程よいアクセントになる。

 

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はんなり漬大根(1袋)702円

半割りにした大根に昆布の風味を加えた浅漬けは、大根の甘みとシャキシャキ感が際立つあっさり味。お好みで醤油を垂らしたり、酒のつまみにも重宝する。

 

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はんなり漬茄子(1袋2本入)702円

茄子を丸ごと一本使用し、昆布の旨みを加えてさっぱりとした浅漬けに。“はんなり”の言葉に違わず、瑞々しくまろやかな味わいがじゅわっと広がる。

 

しば漬は今や全国区の知名度がある漬物で、巷には茄子に限らず、きゅうりやみょうがなどを使用した様々なバリエーションが存在する。しかし大原のしば漬のスタンダードはあくまで、地元のちりめん赤紫蘇と茄子で作る、酸味まろやかでしっとりとした歯応えの漬物のことだ。この基本の味を、ぜひ覚えておきたい。

 

Text : Mako Kobori

Photo : Yuya Wada

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