2019.10.18 UP
2020年7月、東京・日本橋兜町に「Pâtisserie ease(パティスリー イーズ)」がオープンしました。シェフパティシエの大山恵介(おおやまけいすけ)氏は1986年生まれ。“予約の取れないレストラン”として知られる千駄ヶ谷のフレンチ「Sincere(シンシア)」で2016年のオープニングからシェフパティシエを務めた、今、注目の若手です。独立開業は多くのファンの間で話題となり、日々、お店も賑わっています。そんな大山氏による新ブランド店舗「repos by Pâtisserie ease」が、この9月23日、伊勢丹新宿店にオープン! 新たな展開に、ますます目が離せません。
「Pâtisserie ease」はレストランのような広いオープンキッチンを備え、カウンター席で生菓子をいただくことも出来る。
大山氏が生み出すお菓子は、国内外のレストランパティシエとして培った感性を活かしたフレッシュさや、繊細さが持ち味。素材の組合わせや香り・余韻にこだわり、他に無い個性に富んでいます。
けれども、決して、高級で敷居の高いものではありません。店名の「ease」は英語で「安心」や「気楽」さの意味。“肩肘を張らずに安心して食べられるお菓子を提供する”という作り手の想いと共に、子供も大人も構えることなくお店を訪れて欲しいという想いが込められています。
「repos」というフランス語は、「休憩、休息」といった意味。その名のとおり、伊勢丹新宿店の「repos by Pâtisserie ease」には、これまで以上に、幅広い年齢層のお客さまに親しみやすいスタンダードなお菓子が登場します。
茶 (1個) 670円
ネーミングもストレートな「茶」は、大山氏がこれまで学び携わってきた “フランス菓子”というカテゴリーに縛られず、「repos」のために考案したロールケーキです。「今後も、『ease』に並ぶことはありません」とのことで、伊勢丹新宿店でしか味わえない品となります。黄色の濃い生地は、栃木のブランド卵「那須御養卵」を使用。卵黄と卵白を別々に立てる製法で、しっかりと存在感がありつつきめ細やかでふんわりした質感で、中のクリームを受け止めます。
玉露をブレンドした淡いグリーンの生クリームは、ごく軽い印象。玉露ならではの奥深い甘さと後口のすっきり感で、砂糖の甘さはかなり控えめに感じられます。中心の濃い緑色のクリームは、抹茶味のカスタードクリームと生クリームを合わせたもので、ほろ苦さがアクセントに。
「今はまだ、お茶の産地や茶園までこだわるということはしていませんが、今後も、日本のお茶を使ったお菓子を出していきたいです」と大山氏。
次に紹介するのもまさに、お茶を使った「repos流プリン」とも言うべき新作です。
ほうじ茶のクレムー (1個) 670円
これまで「プリン」を出したことのない「Pâtisserie ease」でしたが、伊勢丹新宿店のみで販売する「クレムー」は、卵黄のみを使いトロトロの食感になるようじんわりと焼き上げた、「プリン」を彷彿とさせる一品です。牛乳だけでなく生クリームも入っていて、クレームブリュレのようになめらかな舌触りですが、より後味が軽くすっきりしていて、中にとけ込んだほうじ茶の風味や香りが引き立ちます。
甘さをくどく感じさせないため、カラメルを底に敷かず、ゆるく泡立てた無糖の生クリームで表面を覆っています。コーヒー豆を細かく挽いたパウダーを振りかけてあり、それがほうじ茶のクレムーの香りと相まって、ふくよかさを引き出してくれるのだそう。今後、他のフレーバーも登場する予定だそうです。
ナッツとドライフルーツとキャラメルのタルト (1個) 735円
そして、「repos by Pâtisserie ease」の看板商品となるのは、「タルト」類。旬のフルーツなどを使ったタルトが、常時5-6種類ほど並びます。直径20cmサイズのホールを10カットした大きさで、食べ応えも充分!
「ナッツとドライフルーツとキャラメルのタルト」は、その中でも、季節を問わず並ぶ予定の定番品です。トッピングはくるみ、ピスタチオ、アーモンド、カシューナッツの糖衣がけ。カリカリ食感と香ばしさに、ドライレーズンとクランベリーが甘酸っぱさを添えます。土台のアーモンドクリーム入りタルトと、カスタードとバタークリームとピスタチオペーストを合わせた濃厚なクレーム・ムースリーヌの間には、ほろ苦いキャラメルソースを忍ばせて。
注目は、底生地のパートシュクレの、アーモンドクリームに接した内側の部分。ここがしっかりときつね色になっているのは、器状の土台の生地に中身を入れる前に、一度、「空焼き(からやき)」しているためです。その後、中にクリームを絞ってもう一度焼くため、サクサクの香ばしい食感と、食欲をそそる色に仕上がります。その分、時間も手間隙もかかりますが、大山氏にとって妥協できないこだわりです。
また、水分がしみて土台のサクサク感を損なわないよう、アーモンドクリームにカスタードを混ぜたしっとりしたクリームにすることで、焼き上がりにシロップを塗らなくてもいいようにしています。
フレッシュのフルーツ類を盛り付ける時に形が崩れないよう、バターが入りしっかり冷え固まるクリームをベースにするのもポイント。フルーツも単体ではなく、複数を組み合わせることで抑揚を与え、それぞれのよさを引き出したいという大山氏。イチジクのタルトにはフランボワーズとカシス、蜂蜜を合わせて。ぶどうのタルトには異なる品種を織り交ぜてライムをアクセントに。りんごのタルトにはコーヒー味のクリームと黒胡椒を合わせるなど、独自の感性で「repos」のタルトの世界を生み出します。
フロマージュバニーユ (1個) 692円
こちらも見逃せない、「repos」でしか味わえない“ベイクドチーズケーキ”です。グラハムクラッカーやクランブルなどの生地を土台に敷いたり、上に飾ったりということもなく、シンプルイズベストの一本勝負。
やや高めの温度のオーブンでじっくり焼いているため、表面はいかにも食欲をそそる焼き色ですが、中はしっとりやわらかな、レア感覚の焼き上がりです。
卵は泡立てることなく合わせるので、ふわふわのスフレ風にはならず、質感はねっとりクリーミー。けれども、クリームチーズだけでなくリコッタチーズを使用しているため、チーズ感は濃厚でもずっしり重たい訳ではなく、見た目以上にあっさりしています。そこにバニラの香りが重なり、心和むようなやさしい甘さを奏でます。
アマゾンカカオのシュークリーム (1個) 501円
「Pâtisserie ease」で大山氏の代名詞的存在となっている「アマゾンカカオのシュークリーム」も登場。ペルーの奥地、アマゾン川流域で採れるカカオに惚れ込んだ料理人・太田哲雄氏が日本に独自輸入した野性味に富んだカカオを、前職のレストラン時代からデザート等に使ってきた大山氏。ゴツゴツとした塊状の「アマゾンカカオ」は、ガツンとした香りのインパクトがあり、フルーツのような酸味にも驚かされます。
そんな「アマゾンカカオ」を、生地にも中のクリームにも使ったシュークリーム。ゴツゴツとしたクッキー生地の上掛けが見た目もワイルドで、ザクザクした食感と皮の香ばしさをより強調します。
味のためだけでなく、このカカオを使うことで、アマゾン地域で暮らす方々の生活が向上し、彼らがアマゾンの自然を守りながらカカオ栽培を続けていかれるようにという思いも込めて選ばれた、サスティナブル(持続可能)な素材なのです。
焼き菓子は「Pâtisserie ease」で購入できるのと同じ各種が揃います。しっとり焼き上げるドゥミセック類は、きび糖を使用したやさしい味わい。中でも、「フィナンシェ」は見逃せないスペシャリテです。
このお菓子はフランス語で「金融家」を意味するとおり、パリの町の証券取引所周辺の金融街で、背広姿のビジネスマン達に手軽に食べてもらえるように考案されたと伝えられ、金塊をイメージした四角く平たい形が特徴です。
一方、東京の金融街・日本橋兜町ならではの「フィナンシェ」は、小判形が特徴。抹茶や大納言小豆といった和素材を使っているだけではなく、白あんを練り込むことで、食感もよりしっとりさせています。
ケーク類は、大きなサイズと小さなサイズを展開。小さなサイズは、大きなサイズのカット売りをせずに、小さな1人分サイズを作って販売しています。
最近、こういった小さな焼き菓子は、耐熱シリコン製のシート状の型でまとめて焼く店も増えていますが、大山氏は、「やはり焼き色が違う」と、今やメーカーでもあまり作らない1個ずつ別々の金属製の型を特注で入手。手入れや準備にも手間がかかりますが、それも又、職人としてのこだわりなのです。
様々な経験を経て、素材との向き合い方や、味づくりの考え方など、独自の感性を磨いてきた大山氏。「repos by Pâtisserie ease」というステージで、さらなる新たな一面を披露してくれるに違いありません。
[大山恵介氏プロフィール]
専門学校卒業後、東京・京橋「イデミスギノ」や埼玉・浦和「アカシエ」などのパティスリーやレストランで経験を積み渡仏。フランス各地のレストランでデザートと料理を学び、帰国後、銀座「アルジェントASO」、代官山「リストランテASO」でデザートを担当し、複数の店でシェフパティシエを歴任した。2016年、千駄ヶ谷「Sincere」オープニングよりシェフパティシエに就任。2018年、料理人コンペディションRED-U35にてパティシエとして唯一シルバーエッグ獲得。
イチジクのタルト(1個) 821円
アーモンドクリーム入りタルトの上に、クレーム・ムースリーヌと生クリーム、イチジクとフワンボワーズ。ベリーソースの甘酸っぱさと蜂蜜の香りがアクセント。中にも色鮮やかなカシスのクリーム。
シャインマスカットとナガノパープルのタルト(1個) 886円
皮が緑のシャインマスカットと黒のナガノパープルが、まるで宝石のようにきらめくタルト。濃厚なクレーム・ムースリーヌに、ぶどうの爽やかさとライム果肉の酸味のメリハリが効いている。
フィナンシェ 各種(各1個) 281円
※左上から時計回りに「フィナンシェ・抹茶・カシス」、「フィナンシェ・大納言」、「フィナンシェ・ミエル」、「フィナンシェ・ショコラ・ノワゼット」
ベーシックな蜂蜜味の「ミエル」の他、和素材を加えるなど独自のアレンジを加えたスペシャリテの焼き菓子。
フィナンシェ 4種8個セット 2,571円
「抹茶・カシス」、「大納言」、「ミエル」、「ショコラ・ノワゼット」の4種のフィナンシェが各2個ずつ入り。
ケーク・オランジュ・フロマージュ 大 2,913円
上に振りかけられたカマンベールチーズパウダーの塩味が、自家製オレンジピールの甘さと香りを引き立てる。「ease」のロゴ入り巻紙に紐をかけたパッケージは、環境への配慮から小さく畳みやすい。
ケーク 小 各種
※左上から時計回りに
「ケーク・キャトルキャール・ブルトン」小(1個) 281円、
「ケーク・シトロン・ショコラ」小(1個) 314円、
「ケーク・ショコラ・プリュンヌ」小(1個) 324円、
「ケーク・オランジュ・フロマージュ」小(1個) 314円
自家製レモンピールとチョコチップ入り生地にヘーゼルナッツをのせた「シトロン・ショコラ」や、チョコチップ入りチョコレート生地にコニャック漬けドライプラムと胡桃をのせた「ショコラ・プリュンヌ」など。大サイズと同じ材料を使っていても、焼きの入った表面積が多く、食べた印象が異なる。
ディアマン 各種(1本5枚入) 各918円
※左から「ディアマン・抹茶」、「ディアマン・シナモン」、「ディアマン・ショコラ」、「ディアマン・バニラ」、「ディアマン・チーズ」
一般的には円形に作られるフランスの厚焼きクッキーを、大きめサイズの四角形に。抹茶にはカシューナッツ、シナモン(カネル)にはピーナッツ、ショコラにはアーモンド入り。チーズにはパルメザンチーズと黒胡椒入り。
※左から
「クランベリーショコラ」(1本) 1,998円
「マカダミアナッツショコラ」(1本) 1,998円、
「プラリネカフェ」(1本) 1,167円、
「ブルーベリーショコラ」(1本) 1,998円
ナッツやドライフルーツのチョコレートがけを粉糖やココアパウダーでコーティングしたシリーズや、アーモンドをコーヒー風味のキャラメルがけにした「プラリネカフェ」は、おつまみにもぴったり。
ジャム各種(1個200g) 各1,350円
※左から、「ブルーベリーヴァンルージュ」、「プラム」、「イチゴミルク」
季節のフルーツのジャムも登場。「イチゴミルク」は国産苺と生クリームを炊いて作る、どこか懐かしい味わい。
プチアソート4個セット(1袋) 1,307円
「フィナンシェ」と「ケーク」小の詰合せ
ease box(1箱) 4,623円
代表的な焼き菓子のアソートボックス。「フィナンシェ」4種と「ケーク」小4種、「ディアマン」2種の詰め合わせ。
<repos by Pâtisserie ease>
伊勢丹新宿店本館地下1階=カフェ エ シュクレ
Text : Rio Hiraiwa
Photo : Yu Nakaniwa