2022.03.26 UP
僕が特に気に入っているのはレモンの絵柄。クッキーは味も酸っぱさが効いておいしいので、プレゼントによく使っています」
イラストレーターの三宅瑠人さんが選んだのは、洋菓子店〈ポモロジー〉のクッキー。実は彼こそが、同店のお菓子や果物の絵を描いている張本人だ。
「〈ポモロジー〉のパッケージデザインは、グラフィックデザイナーをしている僕の妻が働く会社が手がけているんです。お皿に乗せたクッキーの絵があったらかわいいかも…という彼女の着想から実現した仕事でした」
本物そっくりなのに、どこか温もりや愛嬌なども感じられる三宅さんの絵。本格的に絵を始めたのは大学時代だったそう。
「両親がデザイン関連の仕事で、僕もデザインを勉強しようと東京藝大を目指しました。ところが4浪もしてしまい、その間に絵を描くことに慣れてしまったんです(笑)」
在学中から友人のレコードレーベルや雑誌『ポパイ』などに絵を提供。一方で海外の図鑑の挿絵にも興味を惹かれるようになったとか。
2021年秋に発行された『Subject & Object 三宅瑠人作品 』(グラフィック社)には、850点を超えるドローイングが収録されている。
「主に昔のヨーロッパのもので、図鑑なのにアジのある絵が入っていたり、個性的で面白いんです。リアルに見えるけれど“正しさ”にこだわりすぎない。こういう絵を描くイラストレーターっていないかも…と思ったことが今につながっています」
〈グッチ〉の広告から大好きな鳥の図鑑まで、近年は海外からのオファーも多い三宅さん。菓子店に絵を提供したのは〈ポモロジー〉が初だ。
〈ポモロジー〉クッキーボックス レモン(39枚入)1,620円
伊勢丹新宿店地下1階 カフェ エ シュクレ
北海道産小麦とバターを使用した、レモンの風味と酸味を楽しめるクッキー。1缶に塩レモン、プレーン、アイシングレモンの3種類が詰め合わせてある。
2021年秋に新居へ引っ越したときは、ご近所への挨拶回りにこのクッキーを持参したそう。
「名刺がわりにいいかなと思って。後で“友達にもプレゼントした”と言ってもらえたりして好評でした」
生まれも育ちも東京・練馬区。新宿へのアクセスもよく伊勢丹新宿店もしばしば訪れるそう。
「電車ですぐの距離なので、子どものころからわりとなじみがありますね」
最近は本館地下2階のビューティアポセカリーでも、ナチュラルワインを買う。
「新居のオーブンで野菜を焼くのがブームで、それと一緒にワインを楽しんでいます。仕事柄アトリエにこもりがちなので、料理は大事な息抜きにもなっています。最近はその で珍しい野菜を見つけると、焼いたらどんな味がするかな…とつい想像してしまうようになりました」
近所の青果店で野菜とにらめっこする、気鋭のイラストレーター。飾らないマイペースな人柄こそ広く愛される絵を生み出す源泉なのかも。
自宅2階のアトリエには、デザインの仕事をしていたお母さまから譲り受けた大きな作業机。
同フロアにはデザイナーである奥さまの仕事スペースと緑豊かな中庭もある。
作業机のそばに置かれた活版印刷機。人から譲り受けたもので、ごくたまに使用する。
絵筆や画材は、種類ごとにざっと分けてそのまま広い作業机に置いている。
書棚には好きで収集してきた図鑑や画 などを収納。国内外で見つけたかわいい鳥の置物などがラフに添えられている。
果実や植物の色みをチェックするため絵の具でスケッチすることも多い。
「クッキーボックスレモン」を手にほっとひと息。創作のモチベーションを保つためにもブレイクタイムは大事なのだ。
北欧などで生まれた古い図鑑が好き。完璧すぎない、味わいのある挿絵に心惹かれる。
美しいコバルトブルーをまとうサザナミインコの「ダイアン」。創作をするデスクのそばで、その姿を見守る。幼少期から鳥に親しむ。
三宅瑠人
イラストレーター
みやけ・りゅうと。1988年東京生まれ。東京藝術大学デザイン科卒。在学中よりイラストレーターとしての活動を始める。雑誌、広告、ファッションブランドなどにイラストを提供するほか、デザイナーとしてもレコードレーベルや飲食店、フライヤー等のグラフィックを手がける。
写真:太田 生
取材・文:小堀真子