【小川 糸さん連載】ときめく贈りもの。 第5章 人生の大先輩に贈るお月見のお供

2022.9.22 UP

9月になり、ようやく朝晩の風に涼しさを感じるようになってきましたね。長坂さんは、夏バテなど、されていらっしゃいませんか?

唐突なのですが、先日ふと気になって、長坂さんとのお付き合いがどのくらいになるのか数えてみました。驚いたことに、なんと、もう四半世紀も経つんです。光陰矢のごとし、って本当ですね。年々、時間の経過が早く感じられます。

これまでも折に触れて告白してきたことですが、なんて素敵なかっこいい女性がいるんだろう、というのが、長坂さんを初めてお見かけした時の第一印象でした。

白髪混じりのふわふわの髪の毛に、ものすっごくお似合いの真っ白いTシャツを着て、サンダルから覗くグレーのペディキュアが印象的でした。

当時、私はまだ駆け出しのひよっこでしたし、自分から話しかけるのはおそれ多くて。長坂さんは、遠くから見るだけの憧れの存在でした。

そんな私を、長坂さんがランチに誘ってくださったんですよね。そこから、少しずつお付き合いさせていただくようになりました。

以来、私はずっと、長坂さんの背中を見て、その姿をお手本としてきました。長坂さんはいつも、直接的な言葉ではなく、やんわりと、ご自身の態度や行動で、未熟な私に人生の機微を教えてくださったように感じます。長坂さんと出会えたことが、どれだけ私の人生を豊かにしてくれたことでしょう。

実際の年齢なんて、全く関係ないですね。幾つになっても、やっぱり長坂さんは素敵でかっこいい、魅力的な女性です。長坂さんの颯爽とした生き方を拝見していると、歳を重ねることが怖くなくなるというか、むしろ、とても楽しく美しいことなのだと、大きな勇気をいただきます。

実は、空に浮かぶ月を見ると、私、長坂さんのことを思い出すんです。私にとって、長坂さんは、いつもどこかで私を遠くから見守ってくれている、まるでお月様のような存在なので。一瞬でも、夜空に浮かぶ月の姿が目に入ると、安心します。

もうすぐ、中秋の名月がやってきますね。最近はお一人でお月見を楽しまれているそうですね。毎年この日に向けて、丸い食べ物を探すのが楽しみになりました。ここ2年はお菓子が続いたので、今年は趣向を変えて甘くないものにしてみました。玉ねぎのお漬物です。お口に合いますかどうか。長坂さんのお好きな日本酒を飲みながら、秋の夜長を心ゆくまで楽しんでいただけますと幸いです。

どうかいつまでもお元気でいてください。道標となって、私の人生を照らし続けてくださいね。

 

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〈土井志ば漬本舗〉お玉はん(1個)594円

伊勢丹新宿店本館地下1階 粋の座

鰹の風味が香る醤油ベースのたれに玉ねぎを丸ごと漬けたお漬物。程よい塩気と玉ねぎが持つ甘みのハーモニー、シャキシャキとした食感が楽しめる。

小川糸

おがわ・いと/作家。

2008年『食堂かたつむり』でデビュー。多くの作品が英語、中国語などに翻訳されている。近著は『とわの庭』。

文:小川糸 

写真:清水奈緒 

スタイリスト:野村奈央

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