2024.5.12.UP
数あるデパートの中のひとつじゃなくて、〝伊勢丹と、ほかのデパート〟です。私の中では」
自他共に認めるイセタンラヴァー、清水ミチコさんのお買物は、7階のイートパラダイスから始まる。
「まずお蕎麦を食べて身を清めます。食後にゆっくりお茶を飲んでいると、私はこの伊勢丹のお嬢さん、全館が自分のもの…といった余裕が出てくる。そうしたらエムアイカードのポイントでお会計して(笑)、上から全フロアを回ります。荷物は必ず地下のロッカーへ。身軽なほうが〝伊勢丹慣れ〟して見えますからね」
買物は月に2回。ひとりで来る。
「目当ては主に洋服。ライブ前に衣装を見ることもあります。一気に全部は揃えません。今日は洋服、次はアクセサリーという感じで分けて、行く回数を増やします(笑)」
終着点はいつも食料品フロア。
「必ず見るのは、エレベーター近くでやっている週替わりのフェア。この前のフェアでは、おすすめの缶詰を買いました。ただ、食べ物は人にあげるほうが多いかな。知人の舞台に〈有職〉のちまき寿司を差し入れたり、お中元やお歳暮も毎年注文するので家にカタログが届きます。あと、前に日本武道館でライブをしたとき松任谷由実さんがコメントを寄せてくださって、そのお礼にワインを買ったこともありました」
取材日は東京でのツアー公演日。清水さんのモノマネといえば、やっぱりユーミンというファンも多い。
「店員さんに『ワイン通な方に差し上げたくて…』と話したら、奥(ヴィンテージセラー)に案内されてびっくりして。ほかのお客さんはあの部屋で慣れた顔で買物していて、世の中はスゴイなと思ったものです」
おめでたい日には〈紫野和久傳〉の「れんこん菓子 西湖」を買う。
「2021年に伊丹十三賞を受賞したときにも買いました。知ったのは10年くらい前かな。和菓子好きな所ジョージさんからいただいて以来、好きな味です」
<紫野和久傳>れんこん菓子 西湖(せいこ) 竹籠入り(8本入)4,104円
伊勢丹新宿店 本館地下1階 粋の座・和酒
蓮根のでんぷん“蓮粉”と和三盆糖を練り上げ、笹の葉で包んだ繊細な生菓子。あっさりした甘みともちもちとした口当たりに、爽やかな笹の葉の香りを感じる。
コロナ禍の間にユーチューブ活動を始め、笑いの幅を広げたことが評価されて伊丹十三賞を受賞。ライブでも幅広い世代を笑いの渦に巻き込んでいる。
「当時は、伊勢丹のビルを『どうか頑張って営業を続けてほしい』と祈るような気持ちで見上げた日もありました」
行けば何かと出会い、心ときめく。伊勢丹での買物は、清水さんの大切なストレス発散法なのだとか。
「買物ついでに映画を観て、ちょっと足を延ばして公園を散歩して帰れたなら、もう最高。気分はまさに〝新宿三丁目の女王〟ですね」
2月に東京・八王子で行われたライブ「清水ミチコアワー〜ひとり祝賀会〜」にて、リハーサルの様子。
ツアー中盤ということもあってか、スタッフ間のやりとりもスムーズ。
主に自分へのご褒美に購入するという「れんこん菓子 西湖」。甘いものは和洋を問わず好きで、差し入れ等に選ぶ品も大体決まっているとか。
カラフルなステージ衣装で登場。独特のファッションセンスも清水さんの魅力のひとつ。
定番のモノマネでつなぐジョン・レノンの「イマジン」から、時事ネタを盛り込んだブラックな笑いまで、芸の幅広さに圧倒される。
MCでは観客とのコミュニケーションや、景品がもらえる○×クイズなどのコーナーも。笑いを挟みつつも終始なごやかなムードが印象的だった。
ライブには、地元の岐阜で喫茶店を経営する実弟の清水イチロウさんが登場。清水さんと同様、独学で楽器に親しんだイチロウさんのピアノをバックに、ユーミンのモノマネを披露する。
世間で話題の面白ネタを次々とキャッチして料理する、その絶妙のセンスとスピード感が、観客を笑いの渦へと引き込む。
大歓声に「気持ちいい!」と満足げな表情を浮かべていた清水さん。誰よりも当人がこの時間を楽しんでいる気持ちが伝わる。
スタッフが着ているのはツアーTシャツ。
今回のツアービジュアルの清水ミチコさんのイラストは、漫画家・田中圭一氏によるもの。
タレント
清水ミチコ
岐阜県生まれ。1983年にラジオ構成作家としてキャリアをスタート。1987年『冗談画報』(フジテレビ)にてテレビデビュー。バラエティー番組をはじめドラマや映画でも活躍。執筆も行い近著は『カニカマ人生論』(幻冬舎)。
写真:太田隆生
取材・文:小堀真子