2025.3.12 UP
春になると頭に「新」がつく食べ物が出回ります。新にんじん、新じゃがいも、新ごぼう……そのなかでも人気なのが「新玉ねぎ」。今の季節だけのごちそうです。
年間を通して流通している玉ねぎは、収穫後に乾燥させたもの。一方、新玉ねぎは収穫後、すぐに出荷されたものです。乾燥工程を挟んでいないので、やわらかさと瑞々しさが特徴です。
まずは生食しやすい、という特性を生かして、オニオンスライスにしてたっぷり味わいましょう。切った新玉ねぎは三杯酢で和えるだけでもおいしいですが、今日は鶏のもも肉を合わせてみました。ボリューム感が出て、ごはんのおかずにもなります。
◼️鶏もも肉のグリル 新玉ねぎの三杯酢
<材料>
鶏もも肉 1枚(250g前後)
塩 適量
新玉ねぎ 1/2〜1個
みょうが 2本
大葉 10枚
三杯酢
米酢 50ml
砂糖 大さじ1
塩 小さじ1/4
薄口醤油 小さじ1/4(濃口醤油でも可)
玉ねぎのスライス、みょうが、大葉に三杯酢という組み合わせ。どこかで見たことがある、という人もいるかもしれません。そう、実はこの料理は鰹の叩きのアレンジ。鶏もも肉の代わりにもちろん鰹でもいいですし、表面をさっと焼いたマグロもよくあいます。あるいは牛肉をステーキにして、同様に料理してもいいでしょう。
鶏もも肉は15分ほど常温に戻し、両面に薄く塩を振ります。分量は鶏もも肉の重量の0.5%が目安。薄塩を振ることで味が整います。
魚焼きグリルを中火で2分予熱してから、皮を上にした鶏もも肉を置き、8分目安に焼いていきます。片面焼きの場合は6分経った段階で裏返し、さらに4分焼いてください。
肉を焼いているあいだに新玉ねぎの準備です。新玉ねぎは表面の皮を剥き、根本を切り落としてから半分に切り、薄切りにします。繊維を残す形で薄切りにするとシャキシャキした食感になります。
みょうがも同じように薄切りに、大葉は千切りにしましょう。
三杯酢は米酢に砂糖と醤油を混ぜるだけです。オイルが入らないのでさっぱりとした仕上がりになります。
8分経った状態がこちら。魚焼きグリルがない場合は中火にかけたフライパンで皮目から5〜6分焼き、皮目に焼色がついたら裏返し反対側を2〜3分焼きます。火を止めて3分ほど休ませれば中心まで火が通っているはずです。
魚焼きグリルはフライパンよりもずっと高温なので、皮目から脂が落ち、パリッと焼けます。
お皿に切った鶏肉を並べ、新玉ねぎ、みょうがと重ねていきます。
大葉を散らし、三杯酢をたっぷりとかけたら出来上がり。
しっかりとした鶏もも肉にさっぱりとした新玉ねぎを絡ませながらいただきます。三杯酢の酸味と新玉ねぎの甘味があわさると驚くほどおいしくなります。新玉ねぎがたくさん食べられる料理です。
新玉ねぎの良さは生食できることですが、そのやわらかさは加熱しても生きてきます。通常の玉ねぎよりも甘く、とろけるようなテクスチャーになるのです。次に紹介する料理は新玉ねぎの風呂吹きです。
◼️新玉ねぎの風呂吹き
<材料>
新玉ねぎ 1個
昆布 5cm角くらい
水 500ml
白みそ 50g
牛乳 大さじ1
新玉ねぎは頭と根本を切り落とし、皮を剥きますが、風呂吹きにする場合はさらに一枚剥くことでさらにやわらかく食べられます。
縦ではなく、横半分に切ります。
昆布を鍋に敷き、水を注ぎます。鍋が大きい場合は分量にさらに水を足してください。
目安はひたひたくらい。新玉ねぎから水分が出るのでこれで大丈夫です。落し蓋をして、中火にかけます。
沸いてきたら火を弱火にし、30分炊きます。この工程で新玉ねぎから出汁が出て昆布の味わいと混ざり合います。
出来上がりの状態がこちら。新玉ねぎに透明感が出てきたら煮えた証拠。甘い香りが漂います。このまま塩と胡椒を添えて食べるのもいいですが、今日はさらにひと工夫して、白みそのタレをつくります。
ここでいう白みそとは西京みそに代表される甘口のみそのことです。麹が多く、塩分が控えめなみそで、様々な料理に活躍します。
日本料理の世界では白みそに酒を加え、弱火で1時間ほど練りながら加熱した”炊きみそ”というベースをつくり、そこに卵黄を加えて「玉みそ」にしたり、酢を加えて「酢みそ」にしたり、と展開します。白みそが持っている麹の香りを抑えつつ、加熱によってまろやかな味わいを引き出すためですが、長時間加熱するのも大変ですし、せっかくの白みそのフレッシュ感もなくなってしまうので、ここでは牛乳を加えることにしました。牛乳を加えることで香りがマスキングされ、まろやかな味わいになるからです。
白みそに牛乳を加えたらゴムベラで混ぜながら弱火にかけ、みそが温まれば出来上がりです。
炊きあがった新玉ねぎに白みそのタレを添えたら出来上がり。山椒の葉があれば添えるとより春らしい雰囲気が出て、味わいが引き締まります。とはいえ、なにも加えず白い食材で丸くまとめるのも乙なもの。まだまだ肌寒い春の夜、とろけるような新玉ねぎで暖まるのもいいでしょう。
Text & Photo:Naoya Higuchi