春にはアルザス産のフルーツを使ったジャムのスタートを飾るルバーブとルバーブを使ったヴァリエイション。初夏にはグリオット(さくらんぼ)やラズベリー、夏はアプリコットや桃、秋になると洋梨やマロン、林檎と続きます。ジャムはすべて直径50cmの銅鍋でつくられます。果物の状態を見極めながら、ひとつひとつの工程を手作業で行います。そうすることによりフルーツの持つ果肉感、香りや色合いをそのままに、しっかりとした食感のあるジャムが生まれます。 |
真っ赤で、香りの良いいちごを、早朝または夕方に摘んでいます。お菓子を作る人たちの中でもこのいちごがとても好まれています。この旬のいちごを使い、春一番のタルトを作ります。サブレの生地にアーモンドクリームを塗り、ライム風味のクリームの上にいちごを並べたら「タルト フリポンヌ」ができあがります。
クエッチの収穫は秋の始まりをつげます。「ドルンカッチャ」という名の木を、マリークリスタバデール氏とポーレットメイアー氏が育てています。セピア色のアルザス産クエッチは、実が小さく下膨れていて、9月末の収穫するころには、オレンジがかった黄色の果肉は軽いカラメルの味がします。秋は、マルトおばあちゃんのタルトを思い出します。それはとても美味しく、ヘーゼルナッツとプラリネ風味のサブレ生地に、アーモンドクリームと果物をのせていました。その時々に異なるタルトを作り、タルトの上にかける砂糖には、オレンジやレモンのおろした皮を足したりしました。クエッチはパイ生地にのせ、シナモン風味の砂糖をかけ、9月のキッチンにいい香りを漂わせました。クエッチのタルトは今でも私の一番のお気にいりです。私のキッチンでは、コンフィチュールはもちろん、クエッチのシロップ漬けもつくります。収穫時期の終わり頃に採れるクエッチは冬の保存食用に乾燥させます。
フレデリック・オベール氏が、ヴァランスの畑の一番良いアプリコットを収穫してくれます。ニーデルモルシュヴィルに収穫が届くと、ぶどう栽培者が、長旅をしてきたアプリコットを一晩休ませる為に、カーヴの扉を開けてくれます。アプリコットがカーヴの中でコンフィチュールの夢を見ている間に、私はいそいそと味見をしたり、アプリコットのフラン(卵・牛乳・砂糖・小麦を合せた生地をタルト型に流して焼いたお菓子)を作ったりします。コンフィチュールを作る手順は、まずはアプリコットを流水ですすぎ、四分割にして種を取り除き、銅の鍋に入れます。グラニュー糖とレモン汁を加えて、やさしく混ぜ、ぐつぐつと沸騰直前まで火にかけます。これをボールに流し込み、上に硫酸紙をかけ、一晩寝かせます。翌日、コンフィチュールを5分間くらい沸騰させ、出来上がった状態を確認し、瓶に詰めます。アプリコットのコンフィチュールは世界で最も好まれて食べられているコンフィチュールです。
私が使っているルバーブはブルーシュヴィッカースハイム地方のジャン グルベール氏が栽培しています。第一回目の収穫は4月の中旬頃。この時期のルバーブは歯ごたえと酸味があり、シーズンの中で一番状態の良いものです。ジャンの収穫したルバーブは火を入れると青みが冴えてきます。私は色が好きで、いつでも自分が使う野菜や果物の天然の色を保ちたいと思っています。ルバーブはデリケートな果物なので、コンフィチュールの中にきれいな賽の目の形が残るように丁寧に作っています。降雨量によって、ルバーブの収穫が左右されますが、4月〜6月にかけてルバーブを素材にコンフィチュールを作っています。
「コンフィチュールの妖精」と呼ばれるクリスティーヌ・フェルベールは、生まれ故郷であるフランス・アルザス地方のニーデルモルシュヴィルで活躍中のパティシエール(菓子職人)です。クリスティーヌ・フェルベールが作るジャムはパリの有名シェフの間でも一目置かれているほどの存在です。 フランス北東部、ドイツ国境近くに位置するアルザス地方のニーデルモルシュヴィル村に <クリスティーヌ・フェルベール>があります。人口300人の村は、フランスのみならずドイツ文化も吸収し独自の文化を形成しています。その文化と大地の中でクリスティーヌ・フェルベールは育ち、誇り高くコンフィチュールを作り続けています。 |