【初心者向け】ウイスキーの基礎知識&飲み方をプロが解説

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近年、世界的に人気が高まり続ける蒸留酒「ウイスキー」。個性豊かで奥深いウイスキーの世界に足を踏み入れる前に、知っておくことでより楽しめる基礎知識や飲み方とは?ウイスキーの最難関資格である「マスター・オブ・ウイスキー」を史上最年少で取得した「BAR 新宿ウイスキーサロン」のオーナーバーテンダー静谷 和典氏と、ソムリエやウイスキープロフェッショナルの資格を持つ、ウイスキー輸入代理業務を行う澤藤 雄輝氏のお二人にお聞きしました。

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BAR 新宿ウイスキーサロンの店内

1. ウイスキーの基礎知識

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ウイスキーとは?

ウイスキーの定義は国や地域で異なりますが、一般的には「穀物を原料に蒸留をして樽で熟成させたもの」がウイスキーと呼ばれています。

ウイスキーの原料は?

ウイスキーの原料にはさまざまな穀物が使用されています。ジャパニーズウイスキー・スコッチウイスキー・アイリッシュウイスキーなどでは、発芽した大麦の麦芽を使用することが多いです。アメリカンウイスキーの場合はトウモロコシやライ麦・小麦や大麦など幅広く使用されています。ほかの原料にはオーツ麦・キビなどもあり、生産国それぞれの文化や伝統に基づいたルールに基づいて使用されています。

モルトウイスキーとグレーンウイスキーの違いは?

スコッチウイスキーには大きく分けてモルトウイスキーとグレーンウイスキーの2種類があり、原料や蒸留器、味わいに違いがあります。モルトウイスキーの原料は大麦を発芽させた麦芽。砕いて水と混ぜることで酵素が働き、デンプンを糖化します。これを濾過した麦汁を発酵させたアルコール度数約7%の液体を「単式蒸留器」という蒸留器で2回、もしくは3回蒸留。蒸留直後の原液は、「ニューポット(ニューメイク)」と呼ばれ、無色透明、アルコール度数60~70%です。そしてその原液を樽熟成します。
グレーンウイスキーの製造工程もモルトウイスキーと同じですが、トウモロコシやライ麦・小麦などの穀類が主原料で、「連続式蒸留機」という蒸留器で蒸留することが特徴です。モルトウイスキーが個性的な風味から「ラウドスピリッツ」と呼ばれるのに対し、グレーンウイスキーはおだやかな風味から「サイレントスピリッツ」と呼ばれています。グレーンウイスキーは単体で飲まれることは少なく、モルトウイスキーとブレンドすることで味や香りのバランスがとれて口当たりの良いブレンデッドウイスキーとなります。

ウイスキーと焼酎の違いは?

穀物から造られる蒸留酒という点では焼酎とウイスキーは似ていますが、焼酎は麹によってアルコールを発生させ、ウイスキーは穀物の糖化酵素を用い、さらに酵母を添加することによってアルコールを発生させるという違いがあります。また焼酎も樽熟成されることがありますが、着色度はウイスキーの5分の1程度まででなければならないと規制されています。

ウイスキーを熟成するのはなぜ?

無色透明の「ニューポット(ニューメイク)」は、樽での熟成を経て琥珀色に変化していきます。熟成することで樽からアルコールが蒸散し、非常にマイルドな味わいになり、複雑で豊かな香りの成分が出てきます。
たとえばスコッチウイスキーの場合、スコットランド内でオークの樽を用いて最低3年間以上熟成させる必要があると定められています。オーク樽のほかにもミズナラ樽・バーボン樽・シェリー樽などもあり、樽材によって味わいも大きく変化します。長期のものでは70年熟成のウイスキーが発売されたこともあります。ちなみにウイスキーはボトルで購入し保存しても、瓶内で熟成が進むことはありません。

ウイスキーのアルコール度数は?

「ニューポット(ニューメイク)」のアルコール度数は60~70%程度ですが、一般的には加水することで40~43%程度で販売されることが多いです。アルコールの刺激を抑えることで鼻が香りを感じ取りやすく、ストレート・ロック・ハイボールと、さまざまな飲み方でバランス良く楽しめるといわれています。
アルコール度数は蒸留所の考え方でも異なり、たとえば日本最小の蒸留所として有名な滋賀県の長濱蒸溜所のウイスキーはモルトの風味が強いので、その力強さを表現するためには高めのアルコール度数が適していると考えて47%以上にこだわっています。

ウイスキーは低カロリー?

ウイスキーにもカロリーはありますが、ワインやビール・日本酒などの醸造酒と比べると低いといえるでしょう。糖質やプリン体を気にして、晩酌をビールからハイボールに変えたという方も多いようです。

ウイスキーのブレンドって?

単一の樽で熟成されたウイスキーをボトリングした「シングルカスク」「シングルバレル」を除き、ウイスキーはブレンドにより造られます。ブレンドが必要なウイスキーとして主に、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドした「ブレンデッドウイスキー」、複数の蒸留所のモルト原酒をブレンドした「ブレンデッドモルト」、単一蒸留所のモルト原酒をブレンドした「シングルモルト」の3種類。ブレンドをすることで、ロットに関わらず品質を均一に保つことと、一方で新しい味わいを生み出すことが可能になります。
ウイスキーのブレンディングは、蒸留所の最高責任者である「マスターブレンダー」が、オーケストラの実力を引き出す指揮者さながらにブレンドに用いる樽をききわけていきます。マスターブレンダーが移籍することで、その蒸留所自体の評価が変わることも少なくありません。

世界5大ウイスキーとは?

現在では世界中でウイスキーが造られていますが、世界的に高い評価を受ける生産国として世界5大ウイスキーが知られています。ちなみにウイスキーの綴(スペル)は、アイルランドとアメリカではwhiskeyと表記されることが多く、そのほかの生産国ではwhiskyと表記されることが一般的です。

【スコッチウイスキー】
世界で最も生産量が多いスコットランド産のウイスキー。麦芽を乾燥させる際に使用するピート(泥炭)由来のスモーキーな香りが特徴です。(ノンピートのものもあります)

【アイリッシュウイスキー】
ウイスキー発祥の地とされるアイルランド産のウイスキー。年間の気温差が小さく、冷涼で程よい湿度があるアイルランドの気候はウイスキーの製造に適しています。

【アメリカンウイスキー】
アメリカ東海岸に植民したスコットランド人やアイルランド人がウイスキーの蒸留を開始。ケンタッキー州を中心に造られているバーボンウイスキーが有名です。近年では、温暖な気候のワシントン州・オレゴン州などのアメリカンシングルモルトが注目を集めています。

【カナディアンウイスキー】
カナダ産ウイスキーは、アメリカの禁酒法の時代に生産量を拡大しました。フレーバリングウイスキーとベースウイスキーの2タイプの原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキーが主流。比較的ライトな酒質が特徴です。

【ジャパニーズウイスキー】
日本ウイスキーの父と呼ばれる竹鶴 政孝が1918年にスコットランドへ留学してウイスキー製造を学んだため、スコッチウイスキーの製造スタイルが踏襲されています。

ジャパニーズウイスキーはなぜ人気?

大手メーカーだけでなくクラフトウイスキーのメーカーも急増し、国際的にも評価が高まり続けるのがジャパニーズウイスキーです。蒸留所の規模によって、それぞれ強みがあります。大手メーカーの場合、一社で何種類もの酒質を造り分けることができ、そのバラエティー豊かな酒質をブレンドした多様なウイスキーが造れます。一方、小規模なクラフトウイスキーのメーカーは、風土を活かした酒造りと、フットワーク軽くさまざまな挑戦がしやすいことがメリットです。
そしてワイン造りなどと異なり、ウイスキーの原料となる麦芽は基本的に輸入となるため、原料の質でなく造り手の技術力ができあがりの品質に大きく反映されます。既存の技術を洗練させることが得意で、丁寧な仕事と繊細な味覚を備えた日本人の気質に、ウイスキー造りは合っているのかもしれません。また日本在住であれば、日本各地の蒸留所を訪れるウイスキーツーリズムが気軽に楽しめることも醍醐味だといえるでしょう。

2. ウイスキーの飲み方・楽しみ方

ストレート

造り手が構成した味わいをダイレクトに堪能できる飲み方です。初めて飲むウイスキーは、ぜひストレートで味わってみてください。時間の経過とともに変化していく香りをゆっくりと楽しめます。グラスは繊細な風味を感じやすいテイスティンググラスがおすすめです。

ストレートのイメージ画像

トワイスアップ

ウイスキーと水を1:1で割る飲み方です。一般的に香りを感じやすいアルコール度数は20%程度だとされており、トワイスアップにすると香りが取りやすくなるといわれています。ただしアルコール度数やその感じ方はウイスキーによって異なるため、ストレートに水を少しずつ足しながら飲み進めるのもおすすめです。テイスティンググラス、または小ぶりなワイングラスでお楽しみください。

トワイスアップのイメージ画像

オン・ザ・ロック

ロックグラスに大きめの氷を入れ、ウイスキーを注いでステア(軽くかき混ぜること)します。ストレートに比べて爽やかで飲みやすく、徐々に氷が溶けていくことで味わいの変化を楽しめます。あとは見た目がかっこいい、氷を指で回すことや氷の触れ合う音が好きだという方も多いです。

オン・ザ・ロックのイメージ画像

ハイボール

タンブラーに氷を入れ、ウイスキーをソーダで割ってステアする飲み方です。一般的な割合は、ウイスキー1に対してソーダ3。日本では1940~50年代に流行し、2009年前後から「角ハイボール」をきっかけに再流行しました。食事とも合わせやすく、ビールに代わる最初の1杯にもおすすめです。

ハイボールのイメージ画像

水割り

タンブラーに氷を入れ、ウイスキーを水で割ってステアする昔ながらの飲み方です。ウイスキー1に対してミネラルウオーター2の割合が一般的です。炭酸のきいたハイボールよりもすいすい飲みやすく、食事と一緒に楽しむ方にもおすすめです。

水割りのイメージ画像

ウイスキーと食事のマリアージュは?

ウイスキーのおつまみといえばチョコレート・ドライフルーツ・ナッツと合わせることが一般的ですが、「BAR 新宿ウイスキーサロン」では、たとえば焼きマシュマロや、ピクルス・柚子ジャム・ミントを乗せたクラッカーなど、ウイスキーと合わせることで相乗効果が楽しめるフードの提案に力を入れています。
また近年はハイボールブームもあり、食中にウイスキーを楽しむ方も増えてきました。国際的にはハイボール以外にもウイスキーベースのカクテルが流行していることもあり、ウイスキーベースのカクテルが日本で定着することでフードとのペアリングの可能性もさらに広がっていくように感じています。

静谷和典さんの顔写真
静谷 和典/シズヤ カズノリ
株式会社ロイヤルマイル代表取締役
新宿三丁目「BAR LIVET」、「Shinjuku Whisky Salon」オーナーバーテンダー。1985年栃木県生まれ。高校時代は競歩の選手として活躍。大学卒業後、アパレル業界を経てバーテンダーに。28歳の若さで新宿にバーをオープンし、2019年には2022年時点で日本にたった10人しかいないウイスキーの最難関資格である「マスター・オブ・ウイスキー」を史上最年少で取得。ウイスキー検定3階級全国1位の達成や長和町ブラインドテイスティング大会2年連続優勝などその受賞歴は数えきれない。現在は雑誌『Whisky Galore』のテイスターとしても活躍中。また、TikTokでは“しずたにえん”として30万人を超えるフォロワーを持つ。
澤藤雄輝さん顔写真
澤藤 雄輝/サワフジ ユウキ
株式会社都光常務取締役/社団法人日本ソムリエ協会認定ソムリエ/株式会社ウイスキー文化研究所認定ウイスキープロフェッショナル
1981年埼玉県生まれ。大学卒業後、新卒で株式会社成城石井に入社。酒類や食品の販売や営業、バイヤー業務、輸入業務を経験。2017年に洋酒の老舗インポーター(輸入商社)である株式会社都光(東京都台東区)に営業部長として入社。2019年より現職。
今回の取材場所
BAR 新宿ウイスキーサロンの店内画像

Shinjuku Whisky Salon/BAR 新宿ウイスキーサロン
東京都新宿区新宿3-12-1 佐藤ビル3F
電話 03-3353-5888
営業時間 午後6時から
※状況に応じて営業時間は変更になります。