Design Contemporaries
デザイン・コンテンポラリーズ

デザイン・コンテンポラリーズメインビジュアル

ユニークピースやリミテッドエディションという言葉は、長らくアート市場で使われてきました。しかし近年はデザイナーによる作品に、アートと同じような希少価値を認める動きが盛んになっています。こうしたデザインの多くは家具のような機能をそなえていますが、少量生産を前提とするため特別な素材や高度な技術が用いられています。さらに大切なのは、発想の原点に独自のコンセプトがあること。時には先鋭的なメッセージや、社会に対する問題提起を意図した作品もあります。
「デザイン・コンテンポラリーズ」展では、このムーブメントに位置づけられる同時代性をもつ多様なデザインをご紹介いたします。

Design Contemporaries

□2024年2月3日(土)~2月13日(火)
□伊勢丹新宿店 本館5階 センターパーク/ザ・ステージ#5

<we+>
Refoam

  • <we+>Reformの画像

    photo by Masayuki Hayashi

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

<we+>は、林 登志也と安藤 北斗が2013年に設立したコンテンポラリーデザインスタジオです。当初からオルタナティブなデザインを志向してきた彼らは、マスプロダクトの制作にこだわることなく、リミテッドエディションの家具や、インスタレーション作品を数多く手がけてきました。デザイナーの感性を生かした入念なリサーチに基づく、自然・社会・人々の営みを問い直すような作品には、独特のメッセージが込められています。
今回、展示される「Refoam」「Haze」「Remains」は、都市に遍在するマテリアルに注目し、その循環を視野に入れながら、手作業によって新しい機能を与えたものです。

<本多 沙映>
「Anthropophyta」シリーズ

  • <本多沙映>「Anthropophyta」シリーズの画像

    ※画像はイメージです。
    ※一部、店頭のみお取扱いとなります。

日本で家具のデザインを、オランダでジュエリーのデザインを学んだ本多 沙映。現在はそのバックグラウンドの延長線上に、リサーチを重視した興味深いプロジェクトをいくつも進めています。彼女の作風に一貫しているのは、自然と人工の境界線の曖昧さを独自の視点で捉え、魅力的な手法によって表現することです。「Anthropophyta」では、世界中で多様なものが流通している造花を、自然界の植物に対するのと同様に観察し、分類し、命名しています。
そのアプローチはどこかユーモアを感じさせますが、人と自然環境との複雑化する関係性に思いを馳せるきっかけをつくるのです。

<Sho Ota>
According to the Grain

  • photo by Yuta Sawamura

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

日本の家具会社を経て、オランダのデザインアカデミー・アイントホーフェンで学んだSho Otaは、2018年に同校を卒業してからもアイントホーフェンを拠点に活動しています。
このアカデミーは先進的な教育を行うことで広く知られる、コンテンポラリーデザインの重要な発信地のひとつ。Otaの作風は、日本の木工技術と、コンセプトを重視するオランダのデザインのミクスチャーを思わせるものです。「According to the Grain」は、節のある木材の表面を、節だけを残して削って制作します。こうすることで、節とは単に平面的なパターンではなく、木という生きた素材の成長と切り離せないことを可視化しています。

<辰野 しずか>
sky

  • <辰野 しずか> Skyの画像

    photo by Aya Kawachi

    ※画像はイメージです。
    ※一部店頭のみお取扱いとなります。

英国・ロンドンのキングストン大学などで学んだ辰野 しずかは、プロダクトデザインを軸に工芸などのアプローチも取り入れ、表現性の豊かな作品を手がけています。その繊細にして研ぎ澄まされた感覚は、工業的な素材を用いる場合も変わらず発揮されます。「sky」はステンレスの板にさまざまな方法で加工や彩色を施したミラーで、この素材に秘められたポテンシャルを引き出しました。ネーミングが伝える通り、空と結びついた光や大気などの景色がデザインのモチーフになっています。

<坂下 麦>
SUKI_1

  • <坂下 麦> SUKI_1の画像

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

坂下 麦は、医学部を卒業した後にデザインを学び直し、スイスのローザンヌ美術大学(ECAL)に留学したという経歴の持ち主。2017年にECALを修了する際、卒業制作としてデザインした照明器具が、「SUKI」の原型になりました。これは彫刻家のイサム・ノグチによる名作照明「AKARI」を再解釈したもので、和紙のシェードで光源を包む代わりに、障子のように枠に張って浮遊させています。日本の伝統的な美的感覚とクラフツマンシップを、現代的にアップデートしたものと位置づけられます。

<AtMa>
「RECLAIMED FURNITURE」シリーズ

  • <AtMa> 「RECLAIMED FURNITURE」シリーズの画像

    photo by Kenta Hasegawa

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

鈴木 良と小山 あゆみが2013年に設立した<AtMa>は、店舗などのインテリアデザインと並行して、社会に対するメッセージや提案性をもつデザインを手がけています。ふたりの問題意識のひとつの背景には、普段の仕事の中で目にする未活用のマテリアルや、短いサイクルで廃棄されてしまう建設資材などの存在がありました。「RECLAIMED FURNITURE」シリーズは、そのような素材を用いて構成を工夫し、家具としての機能を付加しています。単にアップサイクルを行うのではなく、自分たちの気づきを共有し、意外な魅力を新たに創出することに、このプロジェクトの意味があります。

<So Tanaka>
vnsh _II

  • <So Tanaka> vnsh _IIのが画像

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

20代にして国際的なアワードを受賞するなど実績をあげている<So Tanaka>は、哲学やアートなどにも造詣が深いデザイナーです。その作風はミニマリズムを思わせる一方、他者との関係性をあらゆる点で意識した面をもっています。「ヴァニッシュ」は、ベース部分から斜めに伸びた直線が壁面を照らす作品。この作品自体が光の中で1本の影になり、実在感を失っていきます。無と有の不思議な関係が、照明によって提示されているのです。

<西本 良太>
「木の多面体」・「ノコ目」シリーズ

  • <西本 良太> 「木の多面体」・「ノコ目」シリーズの画像

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    ※一部、店頭のみお取扱いとなります。

西本 良太の作品には、いつまでもじっとしているような寡黙さがあります。しかし同時に、心地よい何かを感じるのはなぜでしょうか。木工作家として活動しながら、時に塩ビ管・漆・レゴブロックなども素材に用いる彼の作風。そこには職人気質の真面目さと、アートに通じる意外性が、独特の作法でミックスされています。「木の多面体」は、木の塊を削り出して、稜線に焦げ目を入れたもの。「ノコ目」シリーズはノコギリでパターンを施し、色彩も用いています。いずれも工芸的なものづくりの価値観を手際よく覆すような発想が光ります。

<h220430>
Balloon Lantern

  • <h220430> Balloon Lanternの画像

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

建築家の板坂 諭が2010年に始めたデザインレーベル、<h220430>。彼はこのレーベルを通して、ジャンルを超えた活動を実践するとともに、現代社会の課題や問題を解釈した作品を発表しています。<h220430>では以前から、世代を超えて人々を笑顔にするような、浮かぶ風船をモチーフにした家具をつくってきました。新作の「バルーン・ランタン」は、イタリア・ヴェネツィアのムラーノガラスの職人と協業して完成した照明作品で、本物と見紛うようなフォルムをガラスによって実現。ポエティックな表現の中に、高度なクラフツマンシップと実用性を融合しています。

<井上 隆夫>
Broken Tulip 2020

  • <井上 隆夫> Broken Tulipの画像

    photo by Takao Inoue

    ※画像はイメージです。
    ※店頭のみお取扱いとなります。

シネマトグラファーとして多くの映画やCMの撮影を手がける一方、デザイナーの倉俣 史朗の研究家として活動する井上 隆夫。倉俣作品に触発されてつくりはじめた、透明なアクリルの中に本物の花を封入したオブジェは、その花のあり方にメッセージが込められています。「ブロークンチューリップ」は、17世紀のオランダなどで珍重されながら、現在は取引が禁止されているという、特殊な縞模様のチューリップ「センペル・アウグストゥス」がモチーフ。この縞模様はウイルスが原因だといいます。移ろうことのない花の姿が、絶え間なく変動する社会とのコントラストを感じさせます。

text by Takahiro Tsuchida