Featuring ARTIST―土取郁香
三越伊勢丹ラグジュアリーカタログ「エクセレントウーマン」にて、アート×ファッションをテーマにコラボレーションいただいた土取郁香さんにフォーカスしたスペシャルインタビュー。 代表作である2人の人物の作品シリーズや、抽象的なドローイング作品であれ、土取郁香さんが生み出す絵は、見る人の心を強くとらえ絶大な人気を誇ります。今回のインタビューでは、作品がどのように誕生するのか、その秘密にせまります。
三越伊勢丹ラグジュアリーカタログ「エクセレントウーマン」にて、アート×ファッションをテーマにコラボレーションいただいた土取郁香さんにフォーカスしたスペシャルインタビュー。 代表作である2人の人物の作品シリーズや、抽象的なドローイング作品であれ、土取郁香さんが生み出す絵は、見る人の心を強くとらえ絶大な人気を誇ります。今回のインタビューでは、作品がどのように誕生するのか、その秘密にせまります。
土取 絵が立ち上がる時は、コトバから始まる時も、イメージのモチーフそのものが出てくる時もあります。映画を観たり、本を読んだりすることが原動力となることも多いですね。モチーフの語源はモチベーション(動機)ですが、そういう動機が絵を描く時に大切だと思います。
土取 きっかけのひとつに、映画監督スタンリー・キューブリックの作品『アイズ・ワイド・シャット』があります。2人の人間が抱き合っているシーンがあって、そのシーンを絵に描いた時に、恋愛のシーンと襲われているシーンがほぼ同じで、区別がないことに気がついたんです。シーンとしては全く違うのに、絵としては前後関係が無くても成立する。それが絵の面白さだと気が付いたんです。
土取 私の絵を見て「愛」というコトバで語られることが多いですが、実は「愛」が何を内包しているかは簡単ではない。でも、絵でそれを考えさせるきっかけにできるかもしれない。
土取 そうですね、葛藤とか、人がどのように行動するかに興味があります。人と人ではなくても、人とモノとか、人と動物、人と記憶とか、自分と「何か」の心の動きに興味があるんです。
土取 「感情」ということは、「論理」に比べて退けられがちです。でも「感情」を大事にしたいと思っています。
土取 「肖像画」や「宗教画」もよく参考にします。ビザンチン美術とかをよく見ますね。私たちは「今」を生きています。「現在進行形」のことであっても、昔の人間も全く同じことに興味を持っていたことが分かる瞬間があるんですよ。
土取 表面的な流行や廃りはありますが、人間にとって服は不可欠なものです。ファッションデザイナーの中には、古さと新しさをリンクして考えている人もいて、そのようなデザイナーには興味があります。<グッチ>のアレッサンドロ・ミケーレとか。先日、映画監督のガス・ヴァン・サントとコラボレーションしていましたが、私もガス・ヴァン・サントの映画の中のセリフから作品のタイトルを付けたことがあって、ミケーレのセンスに共感するところがあります。
土取 『永遠の僕たち』という映画、その中のセリフでした。あと、私は絵の中に「柄」を取り入れることもあるので、ファッションはよく見ていますね。
土取 私はデッサンが好きなんですが、デッサンは時間や手間をかけたら、おのずと完成度は上がって、良い絵になるんです。しかし「手数」をかけると絵は「重く」なります。私は自分の発言についても「シンプル」で「端的」でありたいと考えているので、絵についても、一番シンプルな「手わざ」で完成させたいと思っています。「軽さ」「ラフ」「シンプル」を心がけていますね。
土取 そうです。かさねて重くするよりも、「ここだ」というところに手を入れる方が自分としては「かっこいい」と思います。
土取 色彩については厳格な決まりごとは作っていないんですが、シーズンによって変わります。夏は夏のパッションな色を重視しますし、冬になると落ち着いた色を使うようにしています。
土取 外光の具合によって変わります。冬は色が落ち着いていて、自分が絵の中に潜り込んでいくような気がします。夏は落ち着きがなくて(笑)。
土取 描いているよりも、画面を見ている時間の方が長いですね。下地を作りながら考えている間が一番長いかもしれません。描き始めると、ノッているときなら、2.3時間で描き終えるものもあります。終われない時は、ひとつの作品に1ヶ月半ほどかかったこともあります。私は学生からプロになろうと思ったときに、何でも描けるわけではない、だから何かしらのテーマをひとつ決めて描くことを心がけました。一番自分が興味があって続けられるもの。そこから、最初に話した「I and You」のシリーズも始まりました。
土取 「美しいもの」、難しいですね。でも、自分の感情が動いたら、それを「美しい」と呼んで良いと思っています。めちゃくちゃ感動したら、それが「美しい」ということだと思います。
個展「骨と皮(火を灯す・薔薇をみつけて来なければ)」
(WAITINGROOM/東京)撮影:Shintaro Yamaanaka(Qsyuml)
京都造形芸術大学院 修了展「愛のイメージ(ここはそこよりずっと明るい/ここはそこよりずっと暗い)」(京都造形芸術大学/京都)撮影:Alma Schanzer
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