次世代の歌舞伎を担う若手花形、中村 隼人さんに今の想いを語っていただきました。
群を抜く華やかさや零れるような愛嬌のなかに、どこか憂いを帯びた表情も併せもち、見る人の心を掴んでいく中村 隼人さん。次世代の歌舞伎を担っていく若手花形として、古典作品でも新作でも幅広い役柄を勤め、近年は歌舞伎以外の舞台や映像にも活躍の場を広げています。三十歳を迎える今年、主役として一座を率いる立場も多くなってきた中村 隼人さんに、今の思いをうかがいました。
古いものを大事にしながら、新しくしていく。僕の中の重要なテーマです。
<フェラガモ>の淡い色のコートを身にまとった中村 隼人さんが颯爽と現れると、スタジオのあちこちから「美しい」という溜息がもれました。三越伊勢丹ラグジュアリーマガジン「エクセレントウーマン」の撮影の一コマでのことです。
中村 隼人×フェラガモ
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<FERRAGAMO/フェラガモ>
コート 979,000円
□伊勢丹新宿店 本館4階 インターナショナルラグジュアリー
※その他は、参考商品です。
※店頭のみお取扱いとなります。
※コートはレディースアイテムとなります。
あのコートを着た時は、ビビッときました。久しぶりのファッション撮影でわくわくしましたし、いつもとは違うスイッチが入りました。それぞれの服に求められている表情や空間に合う動き、カメラマンさんのもつイメージ、そういうものを探りながら、着替えるたびにいろいろな自分になれた感覚です。自分であるけれど自分ではないような、演じている感覚に近いかもしれません。
大人の色気を漂わせたり、少年のような微笑みを見せたり、その衣裳のイメージを体現する姿は確かに、舞台に通じます。大役に抜擢されることが多くなってきた近年、古典作品での転機になった舞台は?
毎回、意識が変わっていくので、たくさんありすぎて・・・とても悩みますが、『寺子屋』の源蔵は大きい経験でしたね。菅原 道真の悲劇とそれに翻弄される人々の運命を描いた作品で、源蔵は道真の子を密かに匿い、自身の「寺子屋」にやってきた子を身代わりに討つ苦渋の選択を迫られる役です。2020年1月の『新春浅草歌舞伎』で勤めさせていただきました。八歳の時の初舞台が『寺子屋』の小太郎(身代わりとして討たれる役)で、源蔵は子役時代に出た演目に大人の役で出演する初めての機会だったんです。いろいろな思い出がよみがえってきて、その感慨深さもありましたね。
(片岡)仁左衛門のおじさまに教えていただき、源蔵というお役を通して、「心が大事だよ」という言葉が改めて心に響きました。歌舞伎はもちろん様式美やそれを支える型も重要ですが、心がないとお客さまに伝わりません。心がある役者が演じてきたからこそ、400年残ってきたんですよね。ただやはり、心だけでもダメで、型があっての心で、心あっての型なのが歌舞伎です。そして、古典は基本的に演出が変わらず伝承されていますが、仁左衛門のおじさまは「古典でも変わっていかないといけないところもある」とおっしゃっています。
今の時代に合わせた解釈というのでしょうか。おじさまの舞台を拝見していますと、現代のお客さまに伝わるような演技や演出を採り入れているような感じがします。ある作品ではすごく写実に、リアルに表現していらっしゃいました。その舞台に圧倒されましたが、僕のような若手がリアルに演じると、現代劇に近くなってしまうと思うんです。おじさまのように古典の味が身体から滲み出るくらいの経験を積んでいかないと、あの境地には辿り着けません。その時までは古典は古典として、変えずに演じていきたい。
中村 隼人×ジョルジオ アルマーニ
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<GIORGIO ARMANI/ジョルジオ アルマーニ>
ジャケット 374,000円
パンツ 214,500円
□伊勢丹新宿店 本館4階 インターナショナルラグジュアリー
Tシャツ 88,000円
シューズ 170,500円
□伊勢丹新宿店 メンズ館4階 メンズラグジュアリー
※店頭のみお取扱いとなります。
※ジャケット・パンツはレディースアイテムとなります。
いくつもの時代を越えてきた古典は普遍的なものだと信じているんです。自分が70、80歳になった時にもしかしたら、手を入れることがあるかもしれないけれど、今は、先輩方に教えていただいたことを忠実にしっかりと受け継いでいきたいと思っています。
中村 隼人×ヴァレンティノ
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<VALENTINO/ヴァレンティノ>
セーター 500,500円
シャツ 225,500円
<VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ>
ネクタイ 60,500円
□伊勢丹新宿店 本館4階 インターナショナルラグジュアリー
※店頭のみお取扱いとなります。
※すべて9月下旬販売予定。
※すべてレディースアイテムとなります。
※その他は、参考商品です。
古典に対して、転機になった新作は何ですか。
『ワンピース』ですね。尾田 栄一郎さんの漫画「ONE PIECE」を原作に、スーパー歌舞伎Ⅱとして、その世界観を歌舞伎ならではの手法や最先端の技術を駆使して表現した作品です。2015年10月に新橋演舞場で初演され、僕は原作でも人気のあるキャラクター、サンジとイナズマの二役を勤めさせていただきました。初めての新作で、僕自身も大好きな漫画だっただけに、嬉しさとともに不安もありました。原作ファンの気持ちが身をもってわかるので、あの世界を歌舞伎にできるのかなと。古典には先人たちがつくり上げてきた素晴らしい見本があるけれど、この作品ではすべてゼロから。創作過程の生みの苦しみ、難しさを知りました。自分からアイディアをどんどん出していかないといけないし、古典とは違う自分の見せ方があることにも気がつきました。この作品で僕のことを知ってくださった方も多いと思いますので、そういう意味でもターニングポイントですね。この作品が次の新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』にも繋がっていきました。
中村 隼人×エムエム6 メゾン マルジェラ
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<MM6 Maison Margiela/エムエム6 メゾン マルジェラ>
ジャケット 211,200円
ジレ 157,300円
トップス 51,700円
パンツ 86,900円
バッグ (牛革/27×44×18cm) 159,500円
ブーツ 132,000円
□伊勢丹新宿店 本館3階 インターナショナルデザイナーズ・イースト
※ブーツは、10月上旬販売予定。
※店頭のみお取扱いとなります。
※すべてレディースアイテムとなります。
『NARUTO -ナルト-』をはじめ、花形公演以外でも主役を演じる機会が増え、今年4月の歌舞伎座『新·陰陽師』では、タイトルロールとなる安倍 晴明を勤めました。
歌舞伎役者になった時から、いつか歌舞伎座で主演の舞台を勤めたいと思っていたので、任せていただけたことは嬉しかったです。今まで応援してくださった方々、支えてくださった皆さまに少し恩返しができたのかなと。夢がひとつ叶ったわけですが、実際、初日の舞台に立った時に自分がどう感じるだろうと思っていました。結果は、夢が叶った嬉しさではなく、“ここからだな”という感情が湧き上がってきて、やっとスタートラインに立てた、と強く感じたんです。これまでもゴールだと思っていたところが、いざゴールに行き着くと、そこがスタートラインだったことに気づかされることがあり、本当に途方もない世界です。舞台の芯に立つ責任もすごく大きく、正直に言えば精神的にきついこともあります。先輩方はこの重圧と毎回戦ってきたんだなと、尊敬の念を深くしています。
中村 隼人×ミキモト
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<MIKIMOTO/ミキモト>
左
ペンダント (K18WG・アコヤパール6.2mm玉/チェーン長さ約43cm/K18WGはブラックロジウム加工) 198,000円
M Code Liberté ネックレス (SV・アコヤパール7.0~7.4mm玉/長さ約57cm) 561,000円
ネックレス (アコヤパール8.0~8.4mm玉/長さ約120cm) 4,118,400円
M Code ネックレス (K18WG・アコヤパール6.5~6.7mm玉/長さ約83cm) 792,000円
ネックレス (アコヤパール5.5~8.7mm玉/長さ約83cm) 959,200円
右
イヤーカフ (K18WG・アコヤパール5.5mm玉・ダイヤモンド) 275,000円
イヤーカフ (K18WG・ダイヤモンド) 148,500円
M Code Liberté パール ネックレス (SV・黒蝶パール8.0~10.9mm玉/長さ約62cm) 1,430,000円
□伊勢丹新宿店 本館4階 ジュエリー
※店頭のみお取扱いとなります。
8月は歌舞伎座、9月は南座で『新・水滸伝』の主役、林冲を演じます。梁山泊に集結した個性溢れる豪傑たちが腐敗した権力に立ち向かっていく物語。
個の力が集まっていけば、大きい力とも戦っていけるような、人と人の繋がり、絆が描かれていて、今の時代に合った作品だと思います。僕自身も俺が俺がと前に出て引っ張っていくより、周りに支えられて自分の力が発揮できるようなところがあるので、こういう群像劇に共感をもちます。もちろん皆がついていきたいと思う林冲でないといけませんが、今回も心強い先輩方がいてくださいますので、頼れるところは頼って、全員でいいお芝居をつくっていきたいです。
歌舞伎座は、ほかに類を見ないくらい舞台が大きいんですよ。古典の場合はそれが効果的に働くことが多いのですが、新作ではその余白が物足りなさを感じさせてしまうことがあります。そういった舞台機構も考えつつ作っていきたいですね。ですから、9月は南座に合った作品にブラッシュアップする課題が出てくると思います。
中村 隼人×モロー・パリ
次々と大役に挑んでいる隼人さんですが、その出演作における古典と新作のバランスがとてもいい印象を受けています。
それは嬉しい!そのバランスはとても大切にしているんです。新作のほうで皆さんに知っていただいたと思うのですが、伝統があってこその革新ですから。どちらかに偏ってはいけないと強く意識してきました。温故知新で、古いものを大事にしながら新しくしていくということは、僕の中の重要なテーマです。
中村 隼人(なかむら はやと)
1993年、二代目中村 錦之助の長男として東京都で生まれる。2002年2月歌舞伎座『寺子屋』の松王丸一子小太郎役で初舞台。古典歌舞伎への舞台出演を重ねる中、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』や『新版 オグリ』など新作歌舞伎にも多数出演。歌舞伎以外でもドラマや情報番組、CMなどで活躍。
主な出演作には、TBS『せいせいするほど、愛してる』、大河ドラマ『龍馬伝』『八重の桜』などがある。NHK『大富豪同心』シリーズでは主演を務めている。
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