「ファッションにできること」

「ファッションにできること」

「Noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)」という言葉をご存知でしょうか。騎士がいた中世のフランスに起源する、”高貴なる者の義務”という意味の言葉です。世界が危機に瀕したこの一年、ヨーロッパの歴史とともに人々に愛されてきたラグジュアリーブランドとそれを率いるディレクターたちは、中世から続くこの理念に基づき、率先して行動を起こしました。
確かに、多くの企業は常日頃からCSR(企業の社会的責任)に取り組んでいます。しかし、この状況におけるラグジュアリーブランドたちの行動は、単なる社会貢献ではなく、明確な意思のあるもので、私の目に彼らは世界を救うナイト(騎士)に写りました。

ナイトたちの活躍

2020年2月、中国で新型コロナウィルスが流行し始めたころ、<ジョルジオ アルマーニ>はコレクションのランウェイの最後を、当初の計画にないオリエンタルなルックで締めくくり、当時苦しい状況にあった中国にエールを送りました。

その後、新型コロナウィルスは世界中に流行が広がり、ヨーロッパも危機的な状況に陥ります。すると、<ジョルジオ アルマーニ>や<バーバリー>、<クロエ>などのラグジュアリーブランドたちは、自分たちのもつ最高の工場を使って、医療用のガウンやマスクを生産し、医療従事者たちに提供しました。

<バーバリー>のガウン。トレンチコートを製造する工場を利用して製作された。

<アライア>や<アクリス>、<ラルフ ローレン>を筆頭に、ブランドならではのファッション性の高いマスクを発売し、その売上金額を用いて医療の分野などに寄付したブランドは数え切れません。

<アライア>のマスクカバー。マスクカバー売上の一部は、遺伝子疾患の研究や治療などを行うIMAGINE INSTITUTEに寄付される。

そしてロックダウンが長期化するにつれて、学校に通えない子供たちの存在が明らかになった時に立ち上がったのが<ロジェ ヴィヴィエ>や<ロロ・ピアーナ>です。<ロジェ ヴィヴィエ>は国際NGOプラン・インターナショナルとパートナーシップを組み、途上国の子供たちが教育を受けられるような体制づくりをサポート。カメルーンとベナンでは、体温計やマスク、殺菌ジェルをはじめとする必需品が学校に供給されました。<ロロ・ピアーナ>はセーブ・ザ・チルドレンと提携し、北米のオンラインショップの購入1回につき再利用繊維で作られたブランケット1枚を寄付しました。

ファッションが本来持つクリエーションを利用した画期的な取り組みは、以前にご紹介した<ヴァレンティノ>の 「#ValentinoEmpathy」や、<プラダ>の 「Tools of Memory」だけではありません。<フェンディ>は「ANIMA MUNDI」と題し、美しいものは世界を一つにまとめる力になるという理念の下、イタリア、日本、中国、韓国において、フェンディを装った各国の若手演奏家とともにオンライン演奏会を配信し、人々に勇気を与えました。そして先日、ジュリアード音楽院の6人の若手ジャズミュージシャンとの取り組みを発表するなど、取り組みは更に広がっています。

ファッションにできることに限界はない。ラグジュアリーブランドたちは、立場はそれぞれ違っても、強い意志があればどんな問題にも取り組んでいける、その可能性を体現してくれました。お気に入りの服を大切に着る、共感するブランドを応援する、明るい服を着て街を歩く。私たち消費者でも、意思を持ったファッションは、きっと社会を良くしてくれます。ファッションにできること-ファッションを楽しむすべての人が、世界を明るい方向に導くナイトでありますように。

三越伊勢丹 婦人マーチャンダイザー 髙木隆人

ISETAN MITSUKOSHI LUXURY
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