
年末年始になるとパーティーや食事会など、お客さまを迎える機会が増えてきます。そんな特別なひとときも、基本的なテーブルマナーや作法を実践すれば、より食事を楽しむことができ、充実した時間になるはず。そこで、マナーアドバイザーの山木理代さんに、大人として知っておきたい洋食の基本的なマナーを伺いました。一つひとつ実践しながら覚えていき、美しい食事の所作を身に付けてみてはいかがですか。
マナーとは、その人の教養と礼儀のあらわれ

「テーブルマナーは、世界に通用する儀礼(プロトコール(protocol))です。どんな場面においてもマナーや身のこなしを見れば、自然とその人の品格や教養が垣間見えるのです」。マナーアドバイザーの山木さんは、テーブルマナーの必要性を3つの視点から紐解きます。
「ひとつ目は、周りの人に不快感を与えないという気遣い。ふたつ目は料理を美味しく美しくいただく所作。最後にお店が施してくれるサービスへの敬意と感謝です」。
その場にいるすべての人々が楽しく美味しく食事をして、心地よい時間を過ごすという面で必要不可欠なテーブルマナー。大切なのは、お店のコンセプトに合わせた柔軟な応用力と、周りのお客さまに合わせて節度をわきまえることだといいます。
第一印象がアップする入店から着席まで

レストランに入店するタイミングからさまざまなマナーが存在します。クロークがあるレストランでは、コートや大きめの鞄などがある場合は、クロークに預けるのが基本。大きな物をお席に持ち込むと、お店の雰囲気も崩れますし、料理を運ぶ際にもスタッフの邪魔になってしまいます。また、男性と女性の2人でお店を訪れる際には、男性はレディファーストの精神を忘れずにと山木さん。
「ドアを開けて女性を先に通すなど、女性をしっかりエスコートしてください。女性のコートや大きな鞄等は、男性が受け取ってクロークのスタッフに預けるのも基本です」。
お店に予約をしている場合は、受付で名前を伝えるのも男性の役割だといいます。
「受付後、席へ案内してもらう際もスタッフ、女性、男性の順に並ぶように店内へ入りましょう。座る席は女性がお店の入り口から一番遠い上席に。スタッフがイスを引いて座る位置をキープしてくれますので、女性が座ったのを確認した後、男性も座るようにします。男女問わず、イスは左側から着席するのが基本のマナー。退席のときも同じです。女性のハンドバッグやクラッチバッグは、イスの背もたれ部分もしくはひざの上に置くようにします。着席や席を離れるときにも、決してテーブルの上に置いたり、イスにかけたりしないように意識しましょう。料理やグラスなどが並ぶテーブルの上には物を置かないのがポイントです」。
アイコンタクトでスタッフとコミュニケーション

引き続き、男性へのアドバイスは続きます。
「注文時には女性に食べたいものを聞き、男性がまとめて注文するようにします。間違っても大きな声で呼ぶようなことはせず、スタッフの方に顔を向けてアイコンタクトで合図しましょう。もしスタッフが気づかない場合は、さりげなく小さく手を上げて呼ぶようにするのがスマートです。注文はアペリティフ(食前酒)、料理、食事中のドリンクの順番で聞かれます。料理やワインなど、メニュー表を見て分からない場合は、恥ずかしがらずスタッフにどんな内容なのかを積極的に聞いてみてはいかがでしょうか。『これはどんな料理ですか?』と、ひと言聞くだけでもお店側とのコミュニケーションにもつながるはずです」。
そしてグラスにお酒が注がれたら、相手の目を見ながら、自分のグラスを目の高さに上げて互いのグラスを当てないように乾杯するといいとのこと。
「ワイングラスは薄くて繊細な作りなので割れやすい為、グラス同士を当てることは避けましょう。グラスを軽く持ち上げて静かに乾杯(サイレントトースト(silent toast))をするのがマナーです」。
ナプキンの使い方で伝わるサインとタブー

続いてはナプキンについて。
「お皿の上に置かれたナプキンは、食前酒や料理が出る前に手に取り、少しずらして2つ折りにしてから折り目を自分側に向けるようにしてひざの上に置きます。ナプキンは食事中、衣服を汚さないために置くことはもちろん、口を拭くのと手を拭く時にも使います。2つ折りにしている内側上部を使うようにしましょう。なお、用意されたナプキンではなく自分のハンカチやティッシュを使う行為は『お店のナプキンは汚くて使えない』という意味に伝わりますので、遠慮せずナプキンを使ってください」。
食事の途中に中座する場合や食事後にはどうすれば良いのでしょうか。
「中座の場合には自分が座っているイスの上に、食事が終わった後は無造作に軽くたたんでテーブルに置くようにします。食事後にナプキンをきれいに畳むということは、お店側に対して『食事が美味しくなかった』『サービスが悪かった』という不満の意思表示に受け取られます。世界共通のサインですので、ぜひ配慮してください」。
2つの形式があるカトラリーの使い方

皆さまはカトラリーの使い方をご存知でしょうか。お皿の右側にナイフやスプーン、左側にフォークが並びますが、外側のカトラリーから内側へ順番に使います。食事中に手を休める時や、食事終了のサインもナイフとフォークで表現します。
「食事の途中にはフォークとナイフをお皿の上にカタカナの“ハ”の字に置きます。フォークは左、ナイフは右に。このときにナイフの刃は手前に向けておくようにします。食事を食べ終わったサインは、フランス式はお皿の3時の位置に、英国式では6時の位置にナイフとフォークを揃えるようにします。3時から6時の間にナイフとフォークを揃えて置けば終了、とサービスの方も理解くださいます。またスープを味わうときには、スプーンを手前から奥に向かうようにすくい上げて口に運ぶのが英国式、奥から手前にすくうのがフランス式。スープは音を立ててすすらないように気を付けましょう。スプーンでスープをすくったら下唇にスプーンを当て、口の中に流し込むようにすると静かにいただけます。稀にスープにパンを浸して食べる方がいますが、これは美しいことではありません」。
日本ではテーブルマナーにおいて、いろいろな見解がありますが、皇室でも基本は英国式が取り入れられています。そもそも明治期の文明開化に伴い西洋文化が流入し、その時お手本にしたのは英国王室のマナーだったといわれているのだそう。
肉と魚料理では持ち方が違うナイフ

最後にナイフとフォークの使い方について解説します。
「背筋を伸ばして両脇を締め、人差し指と親指が前を向くようにナイフフォークを持つのが基本です。ナイフフォークの先を人や上に向けることは絶対してはなりません。
お肉料理は、しっかりフォークでお肉を刺し、ナイフの刃先を意識して切ると綺麗に切ることができます。また、料理によって持ち方や切り方を使い分けましょう。サラダの葉物などはナイフで壁を作ってフォークで刺したり、魚料理はペンのようにナイフを持って切り分けます。口に入れるものは一寸(約3cm)のひと口サイズに切って口に運ぶようにすれば食べやすく、そして相手からも美しく見えます」。
少し意識を変えてテーブルマナーを身につけることは自分の自信にも繋がります。その場、その場に応じた気遣いや場の空気に合わせること、そして食事中の相手やお店に対しての心遣い。それがテーブルマナーの真髄といえるかもしれませんね。
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今回ご紹介したマナーを意識しつつ、楽しいお食事をお楽しみください。