【インタビュー】ハンサムな女性たちが着たくなる服を|<バジーレ28>ブランドマネージャー 原口 晴美

【インタビュー】ハンサムな女性たちが着たくなる服を|<バジーレ28>ブランドマネージャー 原口 晴美のメインビジュアル

伊勢丹新宿店 本館3階のトラストスタイルの<BASILE28/バジーレヴェントット>は、長年愛し続けているファンがいるブランドのひとつ。ブランドマネージャーの原口 晴美さんは「ようやく自分がやりたかった<バジーレヴェントット>に辿り着いた」と語ります。ブランドとしてこれから大切にしていきたいという「ハンサムな女性」のための服作りについてお話を伺いました。

TRUST STYLE/トラストスタイル

「いま」の大人の女性に「信頼」と「確かさ」を備えた洗練されたクラス感にあふれるファッションをご提案するゾーン。旬をほどよく取り入れたデザインと上質な素材にこだわった、大人の女性のライフシーンをアップデートさせるファッションスタイルが揃います。
□1月31日(水) リフレッシュオープン
□伊勢丹新宿店 本館3階トラストスタイル

ショーに感動して目指したファッションデザイナーの道

─原点のような質問になりますが、原口さんがファッションをお仕事に選んだ理由を教えてもらえますか。

原口さんの画像

原口:母がスタイリストをしていたこともあって、私にとってファッションは幼い頃からとても身近なものでした。子供が着る服も母が手作りしてくれていた影響で、私が初めてミシンで服を作ったのは中学生のときでした。そのときに作った服は今でも大切に持っていますよ。

─服を自分で製作するとなるとパターンなどを学ぶ必要もありますよね。

原口:もちろん母からも教えてもらいましたし、その頃によく購入していたファッション雑誌は型紙は付録だったこともあったので、それをベースに作りました。中学生の頃から生地屋さんに通っていましたよ。服と同じぐらい音楽も好きだったのでどちらか迷った時期もありましたが、「自分が一生を共にできるものは」と考えたときに、やっぱりファッションだったんですよね。

服を作るのが本当に好きだったのですね。

原口:それもそうですけど、デザイナーという職業を強く意識したのはショーでした。当時は東京コレクションの全盛期で、ショーを観たときにスペクタクルな演出に大感動したんです。もう全身の毛が総立ちになるぐらいでした(笑)。それで自分でもショーをやるファッションデザイナーになりたいと決意しました。服を作るのが本当に好きだったんですね。

<バジーレヴェントット>をやりたいと自らを売り込み

─ご自身でブランドを手がけるようになったきっかけはなんだったのでしょうか。

<バジーレヴェントット>イメージ画像

原口:アメリカファッションブランドが日本で人気を博していた頃に、某アメリカブランドが日本に上陸するということでそのチーフデザイナーに抜擢されたんです。私のデザインポートフォリオを目にしたブランド担当者が「あなたの感性は私たちのブランドにフィットしそうだ」と声をかけてくれたんです。それが30歳のときでした。

─そこから<バジーレヴェントット>のブランドマネージャーに就任するまでにはいろいろありそうですね。

原口:ブランドの編集やプロデュースは得意だったので、ブランドを建て直してほしいというオファーは多かったですし、実際に引き受けて結果も出してきました。<バジーレヴェントット>の前はキッズラインを10年近く手がけていたのですが、自分がやりたかったこととブレているような気がしてレディースに戻りたいという気持ちが湧いてきたんです。そこで伊勢丹新宿店を訪れました。

─とてもありがたいことですが、どうして伊勢丹新宿店だったのでしょうか。

原口:「私がファッションでやりたかったことは」と、自分の原点に立ち返るためです。すべての人の変身願望を叶えてくれるような伊勢丹新宿店のキラキラとしたブランドラインナップが大好きで、たくさんのブランドを見てまわりました。そのときに「もっともっと素敵になれるはず」とポテンシャルを感じたブランドのひとつが<バジーレヴェントット>だったんです。そこで「自分にやらせてくれないか」と<バジーレヴェントット>に打診しました。当時のブランドマネージャーと面談もあったのですが、その方は私のスタイリングを見て「あなたの雰囲気が好きだから、そのままの感性でうちでやってほしい」と言ってくれたんです。うれしかったですね。

─現在は原口さんがブランドマネージャーですが前任の方から引き継いで何年目でしょうか。

<バジーレヴェントット>イメージ画像

原口:3年目になります。社内に<バジーレヴェントット>を本当に愛してくださる女性専務がいて、「私たちが理想とする<バジーレヴェントット>とは」をとにかく話し合いました。ブランドが誕生して34年目ですが一時期は方向性を見失っているときもありました。なのであらためてどんな服を作れば長年のファンも喜んでくれるのか、自分たちも納得できるかを突き詰めたんです。私はブランドマネージャーに就任して3年ですが、最初の2年間はその話し合いに費やしました。結果として2024年の3年目に発表できたコレクションはひとつの答えが出せたと思っています。もちろんまだまだ突き詰めていくことはできると思っていますけどね。

ファッション経験値の高い「ハンサムな女性」のために

─原口さんが目指した<バジーレヴェントット>はどんな女性のための服でしょうか。

原口さんの画像

原口:私が思い描く<バジーレヴェントット>を着ている女性はさまざまな服に袖を通してきて、上質な服もいくつも所有しているようなファッションに関しては成熟している方々です。自分のライフワークにおいて何が必要か、必要ではないかをミニマムに編集できる。強さを秘めつつ、柔軟性もある。そんな女性像をチームで言語化するときは「ハンサムな女性」と表現しています。

─「ハンサムな女性」というのをファッションで表現するとき、原口さんはどこにこだわっていますか。

原口:<バジーレヴェントット>というブランドは元々はフィレンツェの仕立て屋さんからスタートしているのでテーラリング精神こそがブランドの真髄です。なので仕立て屋ゆえの上質な素材、美しい縫製というのにはこだわっています。例えばジャケットも肩掛けでもずり落ちることもない、なおかつその姿までもが美しくあるべきだと考えています。ときにはジャージーのような素材で快適さを追求することもありますが、それでもテーラーリングに基づく構築的なパターンメイキングを崩すことはありません。

─テーラードであることは<バジーレヴェントット>らしいのですが、今回のコレクションからはこれまでにないモードな雰囲気も感じています。

原口さんの画像

原口:私たちはそれを「遊び」と呼んでいます。<バジーレヴェントット>のジャケットを着ているのは会社でも部下がいるような方が多いのですが、仕事が終われば一緒に飲みに行くこともあるでしょうし、お友達と食事の約束もあるかもしれない。上司にふさわしいクラス感がありながら抜け感が漂うことも意識しています。構築的なテーラードジャケットに合わせられるのあるフェミニンなドレスやスカートがまだ足りていないと思っているので、そこは次の構想として練っているところです。休日出勤のときはインナーはニットでジャケットも少しラフに着こなす、スタイリングはそのままでもパンプスからスニーカーに履き替えてジムに行く、そんなハンサムな女性の日常を想像しながらアイテムを増やしていきたいです。

デザイナーキャリアとしての集大成として取り組みたい

─伊勢丹新宿店としても「<バジーレヴェントット>が変わっている」ということがお客さまに伝わるような環境づくりをしていかないといけないですね。

原口:伊勢丹新宿店は足を踏み入れた瞬間に「今はこれなんです」というが押し寄せてくる感じです。<バジーレヴェントット>のショップもそれがきちんとできているかと、定期的に伊勢丹新宿店にパトロールに行ってますよ(笑)。私の意見で店頭のディスプレイを変更することもありますし、ショップスタッフから「こんなアイテムを作ってほしい」と要望をいただくこともあります。ほかのブランドショップにはできていることが自分たちはできていないという
気づきもありますし、店頭を訪れることは勉強になります。

─今回は新しい<バジーレヴェントット>を象徴するようなアイテムとして、「Re:ception Jacket Style」をテーマに製作をお願いしました。どんな一着でしょうか。

ジャケットの画像

原口:ハンサムであることを意識してコンパクトな着丈にノーボタンというミニマムなデザインに仕上げました。さらに生地にもこだわりがあってイタリアのテックスモーダ社のものですが、紡績技術がまだ未熟だった頃に織られた生地の復刻版です。ローテクなのでいい意味で織りにムラがあり、染色にも揺らぎが生まれています。<バジーレヴェントット>のジャケットはすべて左前というメンズ仕立てなんですが、上司が着ているジャケットが隙がなさすぎると部下も緊張が解けないですよね(笑)。それが奥行きのある生地の表情によって、リラックスしたムードも生まれます。しかもこちらは袖のないケープ風なのできちんと感もエレガントさもあり、レセプションにもぴったりではないでしょうか。

─いろいろとお話を聞いていると、これからも原口さんは<バジーレヴェントット>の理想像を追い求めていくんだろうな、と感じます。

原口さんの画像

原口:<バジーレヴェントット>は私のデザイナーキャリアとしての集大成になるんだろうなと感じています。今は10年後も、20年後も愛され続ける<バジーレヴェントット>にしていくことしか考えていないです。そのためには自分が頑張ることは当然ですが、後継者を育てることもミッションのひとつでもあると思っています。いつの時代でもハンサムな女性たちから「着たい」と思われるようなブランドになることが私の夢です。