【インタビュー】ファッションを感じる仕事服としての選択肢に|<ブールジュ>山地 敏子

伊勢丹新宿店の本館3階でデビュー時からお取扱いをしている<BOURGE/ブールジュ>。<Leilian/レリアン>が「大人のためのモードテイストの仕事服」として2022年にスタートさせた背景には、実は伊勢丹新宿店もブランドの立ち上げに携わっていました。
今回はブランド誕生の経緯なども含めて企画部門長の山地 敏子さんにインタビュー。クリーンでどこかクールな<ブールジュ>のコレクションには、山地さんが最も大切にしている「今の世代の自分だから着たい」というリアルな目線が活かされていました。
TRUST STYLE/トラストスタイル
「いま」の大人の女性に「信頼」と「確かさ」を備えた洗練されたクラス感にあふれるファッションをご提案するゾーン。旬をほどよく取り入れたデザインと上質な素材にこだわった、大人の女性のライフシーンをアップデートさせるファッションスタイルが揃います。
□1月31日(水) リフレッシュオープン
□伊勢丹新宿店 本館3階トラストスタイル
50代女性のリアルな声をデザインに落とし込むのが役割
─肩書は企画部門長ということですが、山地さんは<ブールジュ>でどのような役割なのでしょうか。
山地:私はデザイナー出身ではないので洋服のデザインではなくてブランディングの領域を担当しています。<ブールジュ>のアイテム構成をどうしていくかを検討したり、ターゲットやマーケットのニーズはどうなっているのかを調査したりしています。役割としてはこれがいちばん大きいのかもしれませんが、自分がちょうど<ブールジュ>のお客さまと同じ世代でもあるので、その世代の女性が着たいのはどんな服なのか、そんなリアルな声をデザインの現場に落としています。
─<ブールジュ>はまだ新しいブランドですが、<レリアン>としてはどのような想いで立ち上げたのでしょうか。
山地:スタートは2022年秋冬のカプセルコレクションからです。<ブールジュ>の誕生のきっかけは、よくご存知だとは思いますが伊勢丹新宿店からのアドバイスでした。

当時、伊勢丹新宿店で<レリアン>を担当されていた方がお客さまのご要望やご意見を吸い上げたうえで大人世代のライフスタイルにフィットするデザインや感度、アイテムを提案できるブランドを<レリアン>として新たに立ち上げてはいかがでしょうと言ってくださったんです。私としても自分の世代が着たくなるようなモードテイストの仕事服が世の中に足りない、選択肢が少ないと感じていたこともあったので、伊勢丹新宿店のアドバイスに賛同して<ブールジュ>をスタートさせました。
─伊勢丹新宿店で仕事服を選ばれる方は管理職も多く、同世代の山地さんの意見が反映された<ブールジュ>はきっと選びやすいと思います。
山地:デザイナーとは別の角度の視点というのは必要ですし、私はデザインを勉強してきたわけではないのでむしろそれしかできないです。働いている時間は一日のなかでも長くて、そこで自分が好きだと思える服を着られないのはすごいジレンマでもあります。
<ブールジュ>は伊勢丹新宿店 本館3階のトラストスタイルでの展開ですが、まさに「トラスト」という相手からの信頼を得ながら個性も楽しめる、それを両立させていきたいです。そのため、ブランドの主軸としてはジャケットになりますが着心地だけでなく、気持ちも上がるようなシルエットやディテールにこだわっています。
─伊勢丹新宿店としてはこれからは<ブールジュ>のプロモーションなどを定期的にやっていきたいと考えています。

山地:アイテムラインナップもようやく増えてきたこともあり、<ブールジュ>に対するお客さまの声が聞こえてくるのはこれからではないでしょうか。私はアパレルの会社で働いてきたので仕事でも服装は比較的自由に楽しんでいたのですが50代になると商談ではジャケットは不可欠だと思うようになりました。<ブールジュ>は個人の感性にフィットするようなブランドでありたいと思っているので、お客さま一人ひとりからどのような意見が寄せられるのかが楽しみでもあります。
女性らしいディテールでも辛口の素材感でモード寄りへ
─山地さんはずっとアパレルに携わってるのでしょうか。これまでのキャリアについて教えてもらえますか。

山地:新卒で入社した会社から現在の<レリアン>までずっと変わらずアパレルです。最初の会社では百貨店営業の担当をしていたのですが、企画職への異動を機に大阪から東京へ出てきました。その後転職したんですが、そのときのきっかけが現在の<ブールジュ>での役割につながるような動機で、自分が着たいと思えるブランドに携わりたかったからです。
最初に大阪で担当したブランドは当時の自分の年齢では着ないようなテイストでした。転職後に担当したのはモード系ではありながらリアルクローズでもあり、40代の自分にとって好みの服だったので仕事面だけでなく私服としても存分に楽しませてもらいました(笑)。そのブランドも年齢を重ねたことで自分のリアルな感覚を役立てることができなくなってきて、そこで現在の<レリアン>へと移りました。<レリアン>を選んだのは縁もありましたが、自分がこれから経験するライフステージの洋服を手掛けている企業だからです。
─服が好きだからアパレル業界を選ばれたのだと思いますが、山地さんにとっては仕事においても「自分が着たい」と思うかどうかがかなり重要なんですね。
山地:転職のタイミングは人それぞれだとは思いますが、私にとっては担当しているブランドに対してズレを感じたら仕事の環境を変えるときです。それはライフスタイルの変化もあるでしょうし、自身が年齢を重ねたことにも関係はあると思います。ブランドを育てていく側の人間ではありますが消費者としての目線もずっと大切にしていますね。
─山地さんの世代が好むファッションってどんな感じだと考えていますか。

山地:エレガンスやフェミニンを好む層と辛口なモードを好む層と、どちらも混ざり合って存在する世代のような気がしています。そんな傾向を受けて<ブールジュ>ではモードに軸足を置いていて、削ぎ落とすときはバッサリといきますが、女性らしいフォルムを生み出すことにもこだわるというのはすべてのアイテムに共通していることです。
私が着ているブラウスもパフ袖のようなフェミニンなデザインを取り入れていますが、それをクールなスーツ生地で仕立てることでモード寄りにしています。同生地のパンツとのセットアップならスーツの延長のような感覚で仕事服としても着こなせます。オールインワンも同様で、きちんと見えする生地やクリーンなシルエットなどにこだわっているのでビジネスシーンでも浮かず、商談にも着ていけるオールインワンとして緻密に計算しています。どのアイテムも甘さは抑えたいので、辛口な素材感が主体になっています。
仕事だけではなくオフにもかっこよく着こなしてほしい
─山地さんがイメージする<ブールジュ>を着こなしている女性像などはありますか。

山地:会社では役職に就かれているような大人の女性で、仕事服でも少しだけ個性が許されるような職種の方たちというイメージは持っています。なので<ブールジュ>としては「ここまでなら仕事服として大丈夫」というギリギリのところをデザインやディテールで攻めている感じです。初期は本当にすっきりシンプルという服ばかりでした。現在のコレクションもブランドのスタート時から雰囲気は大きく変わっていないのですが、<ブールジュ>の世界観から飛び出さないように気をつけながらも、年々どこかにアクセントを加えたりしています。
─ビジネスにも対応するこなれた服は増えてきていますが、まだ選択肢が少ないというのが伊勢丹新宿店のお客さまの本音でもあります。
山地:役職に就いている方、または会社の代表に就任するような方の仕事服は周囲が勝手にイメージしているところもあると思っています。「きっとこんな服装だろう」と。そのイメージから逸脱しないようにしようとするとどうしてもベーシックになりがちです。それでもどこかに少しだけでもファッションを感じさせるような服を選択肢にしてあげたいです。それが<ブールジュ>の想いです。
─<ブールジュ>はこれからが本番ではありますが、どのようなブランドにしていきたいですか。
山地:現時点では先のことは未知数というのが本音です。ただ、お客さまのリアルな声からモノづくりをスタートさせるマーケットインのやり方は<ブールジュ>らしさのひとつとして続けていきたいですし、私も消費者の目線というのはずっと持ち続けていたいです。
ずっと「仕事服」と言い続けてきましたが<ブールジュ>の服は緊張感も程よいので、オフの日も着ていただけたらと思っています。トップスは<ブールジュ>のブラウスでもボトムスをカジュアルにしたり、ワイドパンツなどはスニーカー合わせにもぴったりです。こちらが想像をしていなかったようなスタイリングを自由に、かっこよく楽しんでもらえたらと思います。