2021年1月13日(水)から伊勢丹新宿店では3回目となるポップアップイベントを開催する〈atelier KEISUZUKI/アトリエ ケイスズキ〉。エディターの白澤貴子さんがデザイナーの鈴木圭さんに個人的にオーダーした一着をモデルにした「ヘレナ」は、SNSで爆発的に話題となり若い女性たちの憧れのドレスに。そんな「ヘレナ」の誕生のきっかけやおふたりでスタートさせた新ラインの〈KEISUZUKI avec H/ケイスズキ アッシュ〉 についてお話しを伺いました。
※ポップアップは終了いたしました。
—白澤さんが鈴木さんにドレスをオーダーしたのが「ヘレナ」誕生のきっかけだと思いますが、オーダーしようと思った理由は?
白澤:圭くんとは共通の友だちを通じて知り合いになったんです。
鈴木:自分からしたらファッションの世界でエディターとして活躍している白澤さんは雲の上の存在だったんで「白澤さんに会えるんだ!」って感じでした。
白澤:そこで圭くんが洋服を作っていることを知ったんですが、だからといってその場では特に盛りあがらず(笑)。私も人見知りなのもので。
鈴木:会って1、2回目のときは洋服の話しもしなかったですよね。それで僕が日本橋でポップアップを開催したときに白澤さんを誘ったら、髪をショートにしたらこれまで着ていたドレスが似合わなくなったって言っていたんです。ちょうど友人の結婚式に着ていくドレスを探していたんだよね。
白澤:ドレスは色々なものを持っていたのですが髪型の変化でどれもしっくりこなくなって、そんなときに圭くんがポップアップをやるからって誘ってくれたんです。それで〈アトリエ ケイスズキ〉のホームページを初めて見て、まさに私がいま着たいと思っているクラシカルなドレスを作ってくれるかもって思ったんです。圭くんからは欲しいドレスのイメージはもちろん、私自身のライフスタイルや好きなモノまでさまざまなことを深掘りして聞かれました。でも、それがドレスを作るうえでイメージの膨らませ方なんだなって思って、そのアプローチもすごく好感を持ちました。
鈴木:いつものオーダーはある程度のカタチが決まったドレスをベースにお客さまの要望を加えていくやり方で、白澤さんのときのようにほぼフルオーダーで作ったのは初めてでした。だから白澤さんと自分の「好き」の共通点みたいなものを探すためにいろいろ聞いたんです。それが見つけられないとその人のために自分の手が自然と動かないんです。
白澤:そのときのドレスが「ヘレナ」なんですが、トワルを見た時は興奮しましたね。あのスカートのふわっとした広がりで掛けたりしなくてもそのまま自立しますから。
鈴木:自分としても興奮しましたし、日常のなかでの最高のドレスができたという確信がありました。
〈ケイスズキ アッシュ〉ドレス「ジジ」 90,200円
「ジジ」はくるみボタンが端正で、日常でも取り入れやすいシャツスタイルのジャージードレス。 背面のファスナー使いでウエストまでぴったりと締め上げるため、 ドレッシーな気分にしてくれます。 露出が少ないため一見すると大人しく見えますが、スカートのたっぷりの生地使いが〈ケイスズキ アッシュ〉らしいエレガントさを演出します。
—おふたりで興奮と感動を共感されたんですね。白澤さんにとっても特別なドレスが誕生したって実感はありましたか?
白澤:これまでもいろんな洋服を着てきたつもりですが、鏡を見て自分の姿にこんなに高揚感を感じたのは「ヘレナ」が初めてでした。自分が自分以上になれた気がしました。
鈴木:僕は本を出しているんですけど、その出版パーティに白澤さんも招待したんです。会場には本に掲載しているドレスを展示していたんですけど、知人とのおしゃべりや食べたり飲んだりで興味を示す人は少なかったんです。それでも白澤さんは会場に着くなり「圭くん、ドレスどこ?」って展示していた場所に向かってくれて、しかもその場でそのドレスに着替えてくれたんです。試着室もないのに(笑)。白澤さんは服が好きで、それをフリーランスとしてお仕事にしていますけど、好きなことを仕事にするにはこれぐらいの勢いがないとダメなんだなって刺激を受けました。そんな白澤さんのためのドレス製作だったので、自分でも「どうしたら素敵になるか?」をとことんまで考え抜きました。
白澤:「今年はこれがファッションの流行です」というのを発信するのが自分の仕事のひとつなんですが、私たちの発信をただ追いかけているだけの女性たちを素敵だと思えない時期があったんです。でも、そんな女性を生み出しているのは私たちという葛藤があって。そんなモヤモヤを解決してくれたのは好きな服の方向性が一致した圭くんと一緒に始めた〈ケイスズキ アッシュ〉 というドレスのラインでした。若い女性のなかには「ヘレナを買うために貯金しています」って言ってくださる方もいて、それは1シーズンで終わることなく、私たちが存在する限りオーダーできることと、流行に左右されないデザインのドレスだからだと思うんです。最初から意識したわけではないですが、自分たちがやっていることは結果として「サステナブル」にも繋がるのかなって思っています。
鈴木:白澤さんは表現がダイレクトじゃないところがあるんです。言葉よりも「背中で語る!」みたいな。自分の想いを伝えるのに安易な言葉は使わないんですよね。だからこそ自分の想いを表現するのに服が必要なんだろうなって感じます。
白澤:まわりからは「勘違いされやすいよね」ってよく言われますよ。
鈴木:「サステナブルって大事です」って平たい言葉で発信すればわかりやすいんですけどそれを選ばない。行動で示すタイプだから、それが〈ケイスズキ アッシュ〉で表現されていると一緒にやっていてすごく思います。
—白澤さんのための一着だった「ヘレナ」を、一般の方にもオーダードレスとして届けようというのはどちらの考えだったんですか?
白澤:私が圭くんに提案しました。友だちの結婚式当日の夜に「ヘレナ」を着ていた自分を投稿したら、翌朝には反響が大変なことになっていました。こんなに素敵だと言ってくれる人がいるならこのドレスを着たとき感じたあの高揚感をみんなに届けたいんだけど、どう思うって言いました。
鈴木:白澤さんはその反響に対して「自分が純粋に好きだと思ったモノを素直に表現して、みんなが素敵だとおもってくれることってなんてうれしいことなんだろう」って言ってましたよね。
白澤:そうだったかな(笑)
鈴木:確かに言ってましたよ。だから、これからは自分が好きだと思えることをやっていきたいって。それで商品化するなら名前を付けようって白澤さんはミドルネームをお持ちなので、それの発音だけを変えて「ヘレナ」になりました。そこから自分と白澤さんのコラボレーションラインの〈ケイスズキ アッシュ〉の立ち上げにつながったんです。
白澤:圭くんとは服だけでなく、写真や絵なんかも「これ素敵だね」って感じるポイントが同じなんですよね。感性として重なる部分がすごく多いから一緒に作りあげることが本当に楽しい。〈ケイスズキ アッシュ〉に関してはデザイナーが圭くんで、私はクリエイティブディレクターです。
〈ケイスズキ アッシュ〉ドレス「ヘレナ」 108,900円
「ヘレナ」の新色ダークチャコール。せっかくのドレスアップが台無しにならないようにと、白澤さんが考案した共布のマスクカバーはドレスをオーダーされた方のみがオーダー可能となります。
—〈ケイスズキ アッシュ〉のドレス製作は鈴木さんと白澤さんのおふたりで、どのように進められているんですか?
白澤:まず大切なのは服に対する愛ですし、服を着ることによってグッとあがる気持ちですよね。なので〈ケイスズキ アッシュ〉のドレスについては「一般ウケするのはこっちかもしれないけど自分たちがあがるのはこっちだよね」と私たちの“好き”に忠実にいることが大きな柱です。
鈴木:マーケティングとか計算ではなく、「こんなのを作りたい」という衝動からですね。「ヘレナ」がまさにそうでしたから。
白澤:いまも新作に取りかかっているんですが、ふたりの気分次第で話しが一気に盛りあがることもあれば、まったく進まないこともあります。
鈴木:新作は「女性が着るタキシード」がテーマなんです。メンズライクを多少意識していますし、スカート部分は「ヘレナ」に通じる要素も取り入れています。
白澤:日本の女性がもっともっとドレスアップを楽しむようになって、そんなコミュニティができたらうれしいので、新作に取りかかるときにまずふたりで考えているのは「ヘレナ」を着ている女性の横にはどんなドレスを着たお友だちが立っているだろうということです。大人の女性のかっこよさを引き出してくれる甘くないドレスを目指しています。
鈴木:実際に着るのは女性ですけど、客観的に美しく見えるように仕上げることが自分の役割なので、脚が長く見えるかウエストがキュッと細く見えるかという部分にはこだわっています。この新作は伊勢丹新宿店のポップアップが初お披露目です。
—伊勢丹新宿店のお客さまで〈アトリエ ケイスズキ〉のポップアップでドレスを選んでいるのはパーティ慣れしている方が多い気がします
鈴木:一着が10万円前後というのは20代の方たちだとちょっと高いかもしれないですけど、ドレスを着慣れている方たちからすると「この仕上がりで、この値段はお買得」って声をよくいただきます。
白澤:若い方も憧れてくれて、着慣れている方も選んでくれて、その幅の広さはやっぱりうれしいです。〈ケイスズキ アッシュ〉のドレスも着る人の年齢などは特にイメージして作っていないので、いろいろな方に着ていただきたいですね。
鈴木:それはありますね。
白澤:自分自身が30年後でも背筋をピンとして「ヘレナ」を堂々と着られる自分でいたいと思っていますから。今はどうしても家にいる時間が増えていますけど、それでもドレスアップの場は自分の工夫次第で増やせると思います。例えば家族の記念日にリビングにたくさんのキャンドルを置いていつもと違う雰囲気に変え、ドレスアップしてホームパーティをするとか。日常を非日常にするって楽しいことですよね。
鈴木:大人数でパーティとか難しい時期ですから、日常のなかにもドレスアップしたくなるような特別な場面を作っていきたいですよね。
—〈ケイスズキ アッシュ〉のラインとは別のお話となりますが、今回のポップアップのために鈴木さんが取り組んでくれた伊勢丹新宿店限定ドレスはまさに「家の中でのドレスアップ」がテーマですよね
鈴木:「見た目は晴れの日なんですけど着心地はカジュアル」というドレスは自分にとっても初めての試みでした。いつもはハリ感のある素材を使いますが、そこが家で着るということで生地はまったく新しい基準で選定しました。足元の想定もヒールではなく、ルームシューズでも美しいドレス姿のために、ウエスト位置や丈感は微妙な調整が必要でした。伊勢丹新宿店のお客さまは皆さんおしゃれですから、そんな方に着ていただけたらうれしいです(笑)。どこかに出かけたくなるのがドレスの魅力ですが、こちらは「友人を家に招きたくなるドレス」になってくれたら思っています。
〈アトリエ ケイスズキ〉My dress is…
□2021年1月13日(水)〜2021年1月19日(火)
□伊勢丹新宿店 本館2階 センターパーク/ザ・ステージ#2
※ポップアップは終了いたしました。