掘り出し物を見つけたい!プロに聞く、ヴィンテージアクセサリーの選び方

掘り出し物を見つけたい!プロに聞く、ヴィンテージアクセサリーの選び方

ヴィンテージアクセサリーに魅了された双子の日本人姉妹によるセレクトショップ、チロルヴィンテージ(CHIROL VINTAGE)。ロンドン在住の姉がバイイングを担当し、現地で買い付けたユニークかつ価値あるアイテムを取り揃えています。

今回は伊勢丹新宿店でのポップアップショップの開催に向け、チロルヴィンテージオーナーの太田良恵さんに、ヴィンテージ&アンティークアクセサリーの世界、その魅力をご案内いただきました。聞き手は伊勢丹新宿店のバイヤー上杉智恵。

〈チロルヴィンテージ〉オーナー 太田良恵
〈チロルヴィンテージ〉オーナー 太田良恵
10代後半から音楽業界に携わり、ヴィンテージレコードをこよなく愛し続けている。オンラインのレコードショップを立ち上げた経験を元に、2013年に〈チロルヴィンテージ〉をロンドン在住の双子の姉と共にスタート。ファッション好きにも見てもらえるオンラインショップを目指して活動の幅を広げている。

バイヤーがロンドン在住だからできる、妥協のないセレクト

上杉:チロルヴィンテージを始めたきっかけは何ですか?

太田: 私は古いものが好きで、もともとヴィンテージレコードショップを運営していたんです。 ヴィンテージ、アンティークジュエリーは、ファッションとして好きなだけだったのですが、あるときこれはすごく本質を追求できるものだと気づいて、オタク気質に火がつきました(笑)。それがきっかけですね。

上杉:買い付けは主にイギリスで?

太田:はい。ヴィンテージ、アンティークのジュエリーというのが、ヨーロッパの中でもイギリスに圧倒的に集まってくるんです。チェコやオーストリアのグラス(ガラス)って良いものが多いんですが、そういった国のものやアメリカのものもイギリスに入ってきます。

上杉:そうなんですね。チロルヴィンテージのアイテムは、蚤の市でよくあるちょっと「ミセス風」なものとは違って洗練されて見えるんですよね。

太田:私たちは、富裕層の方に向けた美術品としてのアンティークでなく、洋服と合わせてファッションとして楽しむアンティークということをテーマに掲げています。アンティークとファションというのは意識しないとなかなか交わらないんです。アンティークを意識しすぎるとどうしてもいまの時代に魅力的なデザインとは限らないですし、ファッションに特化しすぎるとモノ自体のクオリティーがおろそかになりがちで。

〈チロルヴィンテージ〉オーナー 太田良恵

上杉:仕入れもディーラーを通さず、直で買い付けられているそうですね。

太田:ディーラーさんと仲良くなり過ぎてしまうと、せっかく出向いたからにはこれぐらいは買わないとみたいなことが暗黙の了解として出てきてしまうんですね。私たちはセレクトショップとして、ハンドピックで自分たちが納得できるデザインとクオリティのものだけを仕入れたいので、ディーラーさんとはちょっと距離をとっています。通常のショップではどれだけディーラーさんと仲良くなって、良いものを出してもらうかということが大切だと思うんですが、チロルヴィンテージではバイヤーの姉がロンドンに在住しているからこそできることかもしれません。だから納得いかなかったら何も買わずに帰ることも可能なんです。

上杉:買い付けは頻繁に行うものなのですか?

太田:大きなマーケットから田舎町の小さなマーケットまで買い付けに出ている数はかなり多いです。ディーラーさんに頼らない分、他のヴィンテージショップにはないようなものをしっかりキャッチできるようにと思っています。

ヴィンテージアクセサリーで、最も注意すべきポイントは「コンディション」

上杉:買い付け時に気をつけていることは何ですか?

太田:私たちはすごくかわいいデザインを見つけても、コンディションがよくなかったら絶対に買いません。ネジがなめらかにまわるか、クリップのつけ心地はどうかとか、ひとつひとつきちんとチェックしています。 ヴィンテージってジャンク品でしょって思われたりもするんですが、私はそれがすごく嫌で。だからこそすごくクオリティにこだわるんです。すぐ壊れてしまうと「やっぱりヴィンテージだからね」と思われるのがすごく悔しい。だからコンディションとクオリティにこだわって、ひとつひとつをきちんとメンテナンスすることは徹底していますね。

上杉:お客さまもアイテムのコンディションをチェックすることで、いいショップとそうでないショップかがそこで判断できますね。使い心地が悪かったりすぐ壊れてしまったりすると、ヴィンテージに対して悪いイメージがついてしまいますよね。

太田:ほんとうにそうだと思います。チロルヴィンテージでは仕入れてそのまま販売するということはありませんし、そこは自信があります。

見つけたら手に入れたい。狙い目は「生き物モチーフ」

上杉:見つけたら「これは買い」というものはありますか?

太田:そうですね……虫のモチーフのアクセサリーは私たちも力を入れているところで、ずっと探していますね。虫モチーフはほんとうに古い時代からあったデザインで、そして作りが細かいじゃないですか。これは手しごとの良さが表れやすく、しかもファッションとしても個性が出てかわいい。

虫のモチーフのアクセサリー

上杉:細部まで作り込まれていて、じーっと見ていても飽きませんね。

太田:たとえばミル打ちといって、ジュエリーの周りに細かいカットがされているんですが、そのディテールで高級感や上品さがまったく違う印象になるところがおもしろいですよね。

上杉:虫モチーフの他におすすめのものはありますか?

太田:同じテイストでいうと、トカゲもすごく人気なんです。シュッとしたかたちやくねくねしたかたちなどすごくバリエーションがあって、作りも凝っています。それに、ユニセックスで使えるところもポイントです。また豆モチーフはアンティークの世界ではよくコレクションされるピースです。デザイナーズものとかで結構あったりするんですけど…結構高いんですよ(笑)。

豆モチーフのアクセサリー

上杉:それは狙い目ですね。

太田:モチーフものは全体的におすすめです。50年代以降のものだとポップでカジュアルな印象があるんですが、古いものはかわいさとしっかりとした作りが両立している。そのギャップがおもしろいんですよね。

上杉:アクセサリーの入っている箱もかわいいですよね。もともとついているものなんですか?

太田:いえ、違います。アクセサリーに合う箱を選んでいます。うんちくをいうと、小さな箱の方が年代が古く、価格も高くなることが多いんです。実はアクセサリーよりもケースの方が見つからないぐらい稀少です。昔の方はアクセサリーをオーダーで作ってもらって、箱もそれに合わせてわざわざ作ってもらってるんですね。アクセサリー自体も古いものだと、デザインに合わせてビーズから作り出す。それはアンティークだからこその手間ひまですよね。

上杉:いまだと考えられない贅沢さですね。太田さんの話を聞くと本当に引き込まれます。

チロルヴィンテージのオーナーが、自分用に買うなら?

上杉:今日用意していただいたアクセサリーの中で、太田さんが一番好きなものはどれですか?難しい質問ですよね。

太田:いえ、実はもうあるんです(笑)。この子が大好きなんです。何の虫なんですかね…トンボみたいな。お腹の部分が連なっているのが珍しくてかわいいなって。これなら男性がつけても素敵ですよね。

トンボのアクセサリー

上杉:たしかに。ジャケットのフラワーホールにつけて。

太田:とはいえ、どれも好きですけどね。愛が止まらない!

上杉:好きすぎて売ることに躊躇することもありますか?

太田:そこはポリシーがあって、自分がどんなに気に入ったものでもお客さまに先に出すようにしています。だからいつもめちゃくちゃガマンしています。自分がすごく欲しいとおもうものは100%売れてしまいますね。だから、お客さまからよく良いものがいっぱい手に入ってうらやましい商売だと言われるんですが、ぜったいお客さまの方が良いものを持っていると思います(笑)。

上杉:初めてのヴィンテージにおすすめのアイテムはありますか?

太田:イヤリングがおすすめですね。すごく種類が多くて選ぶのも楽しいですし、リングなどに比べるとお値段も控えめで自分のインスピレーションでパッと買いやすいので。

上杉:金属アレルギーのある方や肌につけるのに抵抗がある方は、今日私がつけさせていただいているようなブローチも良いですね。シャツにつけたり、ストールにつけたり、重ねづけしたり。顔の近くにつけると表情も変わってきますしね。

ヴィンテージ、アンティークジュエリー

伊勢丹新宿店でポップアップショップを開催

上杉:いま新型コロナの影響でお客さまのマインドの変化を考えたときに、自分にとって本当に必要なもの、本当に心を満たしてくれるものが求められていると思って、そうしたら1点物や手しごと、アートというキーワードが浮かんだんです。それでお客さまに今一度ファッションの楽しさを伝えたいと思い、太田さんにご相談させていただきました。今回の伊勢丹のポップアップショップでは、どのようなラインナップになりそうですか?

太田:先ほどお話しした生き物のモチーフは、稀少で高価なのであまり数が揃わないのですが、今回のイベントに向けてがんばって集めてストックしています。

上杉:ありがとうございます!価格帯も幅広いですよね。

太田:ヴィンテージ、アンティークジュエリーのセレクトショップとして、価格にとらわれることなく良いと思うものをセレクトしているので、3,000円台から50万円ぐらいまで本当に広いですね。

ヴィンテージ、アンティークジュエリー

上杉:では最後に、ヴィンテージを通して伝えたいことを教えてください。

太田:経年でしか生まれない風合い(パティーナ)の魅力はヴィンテージやアンティークだけのものなので、そこは伝えたいですね。たとえば現行のダイヤモンドだとどれだけ純度が高く輝いているかという判断基準があると思うのですが、アンティークの場合ちょっと変わっていて、例えばくすんでいたりしてもそれば個性として価値だと見なされたりもする。それがおもしろいところでもあります。ファッションが好きな方にとっては一点物という人とかぶらないところも魅力です。シンプルな洋服に、アンティークのブローチをつけるだけで洋服が安っぽく見えなくなる。デザインはいま見ても新鮮に感じられてすごく可能性があると思うのでぜひ取り入れていただきたいですね。

〈チロルヴィンテージ〉ポップアップショップ
□8月19日(水)〜25日(火)
□伊勢丹新宿店本館2階=イーストパーク/プロモーション