【COLUMN コラム】
会期:1月22日(水)~1月27日(月)
各日午前10時~午後7時[最終日 午後6時終了]
会場:本館7階 催物会場
独自のセンスと審美眼で世界を飛び回るショップオーナーの皆さま。買い付け先での印象的なエピソードを、それぞれの目線で、現地の風景や日常の一コマを切り取ったお写真とともに伺いました。
買い付けでは思いもかけぬことが起こり、話は尽きません
ストライキの苦労だったり、借りたアパルマンの鍵を持たず出かけて閉め出されてしまったり
などなど
先日の買い付けでは
朝早い蚤の市で欲しかったお皿を目の前で買われてしまう
と言う残念なことがありました
蚤の市風景
ガラクタばかりの通り
だけど私の好きなものをたまに持ってる若いマダムのブースがあるのです
その朝も1番に訪ねると好みのものが目の前で既に抱え込まれたばかりのところ
あと1分早ければ、、、
抱え込んでる人の背中越しに商品が見え
「あ〜、あれは欲しかったな」と悔やむ事しきり
欲しそうにするとかえって買われてしまうので
いやまだ手放すかも、と思い
未練がましく少し周りをうろうろしたけどもうお金を払い始めていたのですごすご撤退しました
気持ちはすぐに切り替えないと後の買い付けに響きます
アトリエ入り口の可愛い赤いドア
そのあと色々地方を回って
1週間後にパリに戻り、懇意のディーラーさんとのランデブーでお家を訪ねました
ドアを抜けてまたコードを押して扉開けると中庭
中庭があるNapoléon3世時代のお宅に優雅に住む彼女 アトリエには天窓もあり
訪ねるのが楽しみなお家
扉開けると中庭
ところが
会った途端に彼女はなんと
いの一番にあの買いそびれたお皿を見せてくれたのです
あの背中の人は彼女だったのです
彼女はアクセサリーのディーラーさんで普段はお皿を扱っていません
何故に?
彼女曰く
このお皿を見た時あなたを思い出したの
絶対好きだろう
絶対気に入ってくれる!
と
あゝ私のことなんて思いださないでくれて良かったのに
私はにっこり
merci
でも思い出さないでいてくれていたらもっとmerciだったのに と
思い出してくれて嬉しいような
思い出してくれて悲しいようなお話でした
もちろんお皿は買わせていただきました
ミュゲ(すずらん)のお皿
そのお皿がこちら
ガラスのスズランのお皿
8枚です
今回のフェアに初出しでお持ちします 会場でご覧ください
Profile
<シャドリュンヌ>オーナー 福士カヨ
青山にあったフランス専門のアンティークショップでオーナーと一緒に買い付けに行くという貴重な体験を10年積まさせていただいたのち独立
その縁あって今もフランス中心の買い付けをしてます
ショートカットで背も高めなせいかフランスに行くとよく「ムッシュ」と声掛けられます
生まれも育ちも横浜!
小学校は昔の寺子屋。中学、高校も山手の丘、宣教師が始めた歴史のある学び舎。大学も含めてほとんど同年配のアンティーク。就職した先も映画のセットに使われるような古い建物。
父と母も身の回りの物を大切に使い、壊れたら修理をする人でしたから、古い物の美しさ、素晴らしさ、機能的な魅力にどっぷり浸かって大人になりました。今も子供の頃から大切にしてきたものに囲まれて暮らしを楽しんでいます。
ようこそ、ケイティー邸へ!
就職以来の営業職から子供の頃から好きで習っていた花の仕事にシフト。
実践をホテルの生花店で学び、日常の中で息づく「花のある暮らし」を提案する仕事を始めたのですが、私の持っている古い食器や家具に魅力を感じたお客様や生徒さんから「このお皿は譲ってもらえるのですか?」と聞かれるようになりました。
それならアンティークと花のある素敵な暮らしをご提案、仕事にと思いKATY'S HAYAMAがスタートしました。
花はいつも身近に
今までどれほど英国に買い付けに行ったでしょう?
そのたびに新しい発見や嬉しい出来事に遭遇するのですが、あちらで出会うアンティークディーラーの人たちはもう顔なじみ。行くところ行くところで「ケイティー、元気だった?」とみんなとてもフレンドりーで良い人たち。
私が行かない時も「ケイティーはどうしてる?今度いつ来るの?」と夫に必ず尋ねてくれます。私と同年配の彼らですが、私同様に若くて元気いっぱいです。
買い付けの合間のティータイム
私からみんなへのお土産はウエハースを重ねてチョコレートでコーティングした菓子のキットカット。キットカットは英国出身ですが、日本ほどのバリエーションがありません。
空港で抹茶やイチゴ味、わさび味などをたっぷり仕入れ、アンティークフェアーで再会を喜びながらチョコたちを配るのがいつもの楽しみです。私が訪れる田舎のアンティークフェアーで出会う人たちはみんな人柄の良い、キュートな人たちです。
長い付き合いのディーラーに会うのも楽しみ
彼らからの品々にはその時の笑顔やジョークも一緒。帰国して荷物を整理しながら、楽しいやり取りの時間を思い出しニヤリ!
英国でのアンティークハンティングは毎日がわくわくどきどき。お客さまや生徒さんに頼まれた物に全然ご縁がなく、やたらと何か他の物が目に入る時があります。私に向かって「Take me home!」と呟いている子は迷わずゲット。この世界はご縁!えにしのある子はきっと日本に帰っても誰かを喜ばせてくれるものですから。
ふと目に飛び込んでくる素敵なものたち
多忙な買い付けの毎日でもこれだけは!ナショナルトラスト管理のカントリーハウスを訪れ、在りし日の貴族の生活を垣間見るのは楽しみ。
海外、特に中国や日本の文化や芸術品に憧れ、手に入れていた貴族たち貯蔵の伊万里屋の九谷の焼き物を見るたびに感動を覚えます。日本と英国の歴史を読み返したり、当時の映画を観たりして納得!
我が家でも英国のアンティークと伊万里や九谷たちを一緒に使って、毎日の暮らしを楽しんでいます。
在りし日の貴族の生活を感じるカントリーハウス
私の肩書はトータルライフコーディネーター。その名の通りライフスタイルにかかわるすべてをクラスやワークショップを通して教えたり、アンティークやビンテージ、私お勧めの品を販売しています。
英国各地からやって来た品々は日本の塗り物やお皿ともほどよくマッチ、地域や時代を超えて美しいハーモニーを奏でます。KATY'S HAYAMA はそんな古き良き物を紹介し、毎日の暮らしの中でお洒落に活かす豊かな生活を提案しています。
地域や時代を超えたハーモニーを楽しむ
Profile
<KATY'S HAYAMA ケイティーズハヤマ>オーナー ケイティー恩田
大学卒業後、営業職の傍らマミフラワーのディプロマ取得。日比谷花壇を経て米海軍横須賀基地を2005年に退職。並行して続けていた英国生活骨董KATY’S HAYAMAを有限会社として本業化。トータルライフコーディネーター、骨董商、フラワーデザイナー、料理家として活躍中。
<マムール>はインテリアショップやアンティーク&ビンテージを扱うお店が点在する目黒通りにあるため、様々なスタイルのお客様にお越しいただいています。
好きな物は十人十色ですが、現行品にはないデザイン、素材感、個性的な雰囲気を求める、コレクションする楽しみをお持ちということです。
多くのお客様はそのアンティークに「価値があるか」ということも気にされます。もちろん私達もそこは重要なポイントではありますが、多くの物に触れて過ごしてきた経験値から今は、その価値は自分で決められるという境地に立っています。
フランスのアンティーク屋さんや蚤の市に行くと、「そんな物まで売ってるの?!」と驚くことがありますが、そこに価値を見つけ、また物としての価値を蘇らせることができるのがアンティーク&ビンテージのステキなところ。
私のフランスの友人達もそんなアンティーク&ビンテージを自分の価値感でコレクションし生活を楽しんでいるので少しご紹介します。
マムール店内
私がかつて仕事をしていたフランスのインテリアブランドのスタッフのひとりイザベル。
何年もかけてノルマンディーのお家を彼女好みの「ロマンティックカンパーニュ」に仕上げていきました。
イザベルのお家 外観
アンティークのボトルドライヤーには素焼きの鉢が。
ボトルドライヤーは元々ワインの瓶を乾かすのに使われていました。
彼女は実用重視に使っていますが
私にはどれもとてもステキなディスプレイに見えました。
ボトルドライヤー
空間の使い方が上手なのは、フランスの方にとって大事なことは
広さ大きさよりも、小さなスペースでも
そこをどれだけ自分らしく魅力的に見せるかが重要事項だから。
キッチンの天井にはたくさんのコレクションアイテムであるバスケットがかけてあります。
アンティークやビンテージのバスケットはコンディションの見極めが大事。
古くて雰囲気が良くても全く使えないもの、よく見たらカビだらけなんていうものも少なくありません。
棚と天井からのバスケット
以前訪れた時には2枚ぐらいだった暖炉上のフレームが今や壁いっぱいのステキなコレクションになっていました。
私達の会話はいつも今は何を探しているとか、
こんなものがあったとか、最近入手したものを見せ合ったりなど、
自然と情報交換にもなっています。
暖炉
アンティークのショップ什器として使われていたキャビネットには
アンティークリネンなどを見せながら収納。
フランスではLinge de maison (ランジュドメゾン)と言い
お家のリネン類は財産に等しいと考えられ大事にされていました。
キャビネット
嫁入り時にもたくさんのリネン類を揃えて
家族のイニシャルなどを刺繍していました。
マムールのアンティークリネン
食器棚ではない食品ストック棚にドンと置かれた年代物のスーピエール。
スーピエールが登場したのは19世紀初め。フランスの食卓を彩ってきた大事なアイテム。
スーピエールのある棚
スーピエールだけでなくポットなども蓋はとても欠けやすいもの。蓋を除いてフラワーアレンジメントに使ったり、フルーツなどを入れてコンポートのように使ってもステキです。
こちらはマムールお客様からお写真お借りしました
こちらは親友のお母様宅のアンティークコレクション
フランスの方々は東洋と西洋のミックスも上手です。
西洋と東洋のミックスコーディネート
見せ方も勉強になるので、いつもお邪魔するのが楽しみです。
素晴らしいガラスコレクション
何度も<マムール>のインスタグラムでご紹介した私が師匠と慕っている、サフィアのパリのアパルトマン(今はお引っ越しされました)。
日本の雑誌などでも多く紹介されている彼女のお宅は、アンティークのコレクションが見事な折衷スタイルでコーディネートされています。
サロンのマリコール焼きコレクション
銀製品が高価で入手困難な時代、変わりになるようガラスの内側に水銀を流し込み銀器に見えるように作られました。経年劣化により銀箔が取れてシャビーな雰囲気が人気となり、さらに銀器は割れることが無いため残っていますがガラス製であるマーキュリーグラスは多くが割れて無くなり今やその希少性も含め、高価なアンティークのひとつとなっています。
アンティークのマーキュリーグラス
シェルカメオ、ストーンカメオ、ジェットなどメモリアルジュエリーからコスチュームジュエリーまで独自の価値観で選ばれたコレクション。カメオのデザインはラデュレのブランドアイコンにもなっていました。
これらはサフィアのコレクションのほんの一部。
マムール店内のマーキュリーのコレクション
サフィアが南フランスのお家を引っ越す際に、パリのお家には合わないしマムールにぴったりの物が沢山あると連絡をもらい、なかなか私達が頑張っても入手できないような素晴らしいアンティークの数々を譲っていただきました。
中でも貴重だったのは圧巻のシルエットのコレクション。
シルエットは紀元前600年には存在していたそうですが、イギリスで人や動物など17世紀の生活を切り絵で表現する技法があり、19世紀になるとヨーロッパやアメリカでも流行し多く見られるようになったそうです。
シルエット
ナポレオン3世スタイルのコーヒーセット
リモージュ焼きのセット
ファーマシーポット
などなど
今もマムールの大事なアンティークコレクションの一部です。
私のアンティーク好きは20代後半ぐらいからで当時はアパレルメーカーに勤務しており
アンティークのコサージュやリボン、レースやペチコートなども好きでした。
30代になるとオールドパインのアンティーク家具や籠、木の物やホーロー製品といったカントリースタイルのものを集め
40代になるとそこに陶器やガラス&クリスタル、香水瓶
50代になるとシルバー製品やリネン、コスチュームジュエリー
60代になった今はアールデコデザインの物をコレクションしています。
マムールのコレクションたち
マイコレクションの中でも
これは何?!
とよく聞かれるのがこちらの
Verre de curisteというもの。
滋養のための水の産地名が書かれたガラスコップが専用バスケットに入っている
持ち運び用カップとでも言いましょうか、究極のエコな物です。
大きさや形状、産地も色々あり
最初は蚤の市などで可愛いなと思い見つけた時に入手していましたが、徐々に見かけなくなり、そのうち見つけたら必ず入手するようになり
いつの間にか20個近くになりました。
最近は全くと言っていいほど見かけなくなり
あっても高額になり躊躇してしまいますが
持っていない大きさやデザインがあったら逃さないようにしたいと思っています。
お気に入りのVerre de curiste
子供の頃からコレクション癖のある私ですが
アンティーク&ビンテージの入手はタイミングが命。ステキな物との出合いは逃さぬよう、自分のセンスを信じるしかありません。
皆さまもステキなコレクションを!
Profile
<マムール>オーナー 名津井麻真
アパレル会社勤務時代、海外事業部にてフランスを担当。「メゾン・ドゥ・ファミーユ」の日本立ち上げにも携わる。
2013年に目黒通りにフランス雑貨とアンティークの店<マムール>をオープン。自らが買い付けたアイテムは、毎日の生活が愛しく、豊かな気持ちになるようなものばかり。
今回初開催となる「三越アンティーク&ビンテージ -時を巡るマーケット-」のコラムは、いかがでしたか?
さまざまなアイテムの中から自分だけの宝物を見つける、心躍る瞬間。品物に愛情たっぷりの個性豊かな店主たちとの会話を楽しみながら、物の背景にある異なる国の文化や歴史、人の手を巡ってきたストーリーに出会う。そんなひと時をお届けできたらと思います。
※写真はすべてイメージです。
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